「高校BIG4」の中では目立たなかった村上
ヤクルトの村上宗隆内野手(22)が史上初の5打席連続本塁打を放ち、ウラディミール・バレンティンが2013年にマークしたNPB記録の60本塁打を期待する声も挙がっている。タイトル争いでは昨季、本塁打王を分け合ったライバル・岡本和真(巨人)を大きく引き離しており、今季は三冠王さえ狙える成績だ。
そのバットから放たれる放物線のインパクトが強烈なため、記憶の彼方に置き去りにされているが、九州学院高時代は早稲田実・清宮幸太郎(現日本ハム)、履正社・安田尚憲(現ロッテ)、広陵・中村奨成(現広島)とともに「高校BIG4」と呼ばれていた。中でも高校通算111本塁打を放った清宮は甲子園を満員にするスター候補で、ドラフトでは7球団競合。通算52本塁打の村上は1年夏しか甲子園に出ておらず、4人の中では最も目立たない存在だった。
開催中の全国高校野球では、三兄弟の三男・慶太(3年)が次男・宗隆と同じ九州学院の4番として出場。宗隆が1年だった2015年以来7年ぶりの甲子園だ。プロでのインパクトと反比例するように忘れられつつある村上宗隆の高校時代を改めて振り返ってみたい。
1年夏の遊学館戦は4打数無安打
熊本市出身の村上宗隆は九州学院に入学した1年時からレギュラーを獲得。当時の3年生エースが伊勢大夢(現DeNA)だった。2015年夏、熊本大会決勝で文徳を破った九州学院は5年ぶり8回目の出場を決める。
8月12日の初戦(2回戦)は石川代表の遊学館と対戦。村上は1年生ながら4番・一塁で出場したが、サードゴロ、サードゴロ、センターフライ、セカンドゴロと4打席凡退し、守備でもエラーを記録するなどいいところなく、3-5で逆転負けを喫した。
あっさりと姿を消した注目のスラッガー。まさかこれが最初で最後の甲子園になるとは、本人も周囲も思わなかったのではないだろうか。村上が2年の2016年、熊本大会決勝まで進出した九州学院は2-13で秀岳館に敗退。秀岳館は春夏連続で甲子園ベスト4入りし、主将の九鬼隆平が同年秋のドラフト3位でソフトバンク入りした。
2017年春のセンバツでも秀岳館は準決勝進出し、3季連続4強入り。熊本からは熊本工とのアベック出場だった。最後の夏、九州学院は決勝まで進むが、またも秀岳館に1-3で敗退。村上が再び甲子園の土を踏むことはなかった。
4季連続出場の秀岳館もこの夏は2回戦で広陵に敗れた。広陵・中村奨成が9回に田浦文丸(現ソフトバンク)からダメ押しの3ランを放ち、その後も準決勝までに清原和博(PL学園)の記録を塗り替える6本塁打を放って、プロのスカウト陣の評価を高めた。
弟・慶太は秀岳館を破って甲子園
2022年夏、村上が1年時に出場した甲子園のアルプスで声を枯らした弟・慶太は、熊本大会決勝で秀岳館を破った。兄が何度もはね返されたライバルに、弟が5年越しのリベンジ。そのライバルや兄の思いも背負って、村上慶太は聖地のバッターボックスに立つ。
新型コロナウイルスに集団感染したため初戦までの間隔を空け、第8日第2試合で帝京五(愛媛)と対戦する。身長190センチ、体重94キロと兄に負けない堂々の体格。高校通算6本塁打と兄の域には達していないが、兄とそっくりな構えや鋭いスイングは高いポテンシャルを感じさせる。
7月31日の阪神戦で、兄・宗隆は甲子園のライトへ、レフトへ3打席連続本塁打を放ち、8月2日の5打席連発につなげた。まるで弟への前祝いのようだった。兄から弟へ、筋書きのない物語は続いている。
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