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「ミラクル新田」は1990年センバツの奇跡的快進撃を再現できるか

2021 8/20 06:00SPAIA編集部
イメージ画像,ⒸmTaira/Shutterstock.com
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静岡の好投手・高須大雅を攻略して初戦突破

開催中の夏の甲子園1回戦で新田(愛媛)が静岡を破ると「ミラクル新田」と報じるメディアが少なくなかった。静岡の身長192センチ右腕・高須大雅を攻略し、センター・長谷川のダイビングキャッチでピンチを脱出して4-2でもぎ取った勝利には価値があるとはいえ、奇跡的な展開ではなかった。

にもかかわらず、新田に「ミラクル」という枕詞がつくのは、1990年センバツで信じられないような快進撃を見せたからだ。

同じ愛媛の名門・松山商が太田幸司擁する三沢(青森)との延長18回引き分け再試合を制して優勝した1969年当時の監督・一色俊作が新田に赴任し、ついに初めて出場した甲子園。1回戦で前橋商を破ると、日大藤沢(神奈川)との2回戦では4番・宮下典明が9回裏に逆転サヨナラ3ランを放って5-4で劇的勝利を飾った。

31年前は北陽・寺前正雄から延長17回サヨナラアーチ

準々決勝では高松商(香川)に完封勝ちし、迎えた準決勝。対戦相手の北陽(大阪)にはプロ注目の大型右腕・寺前正雄がいた。

1-3で迎えた8回にまたも宮下の同点アーチで追いつき延長戦に突入。以降は、同年ドラフト1位で近鉄入りする寺前を打ちあぐね、膠着状態となった。

第1試合の近大付(大阪)-東海大甲府(山梨)が延長13回と長引いたこともあって照明塔が点灯され、延長18回引き分けもちらつき出した17回。1番・池田幸徳が寺前の238球目をジャストミートすると、白球はラッキーゾーンによじ登るレフトの遥か頭上を越え、薄暮のレフトスタンドで弾んだ。

球史に残る死闘の末のサヨナラ本塁打。万歳してホームインする池田とガックリうなだれる寺前のコントラストがカクテル光線に照らされ、劇的なドラマが幕を閉じた。

決勝では2-5で近大付に敗戦。初出場優勝はならなかったが、「ミラクル」と呼ぶにふさわしい快進撃だった。

「8度目の正直」で夏の甲子園初出場、次は日本航空

新田はその後、2005年センバツにも出場したが、初戦で福井商に0-9と大敗。夏はこれまで7度も愛媛県大会の決勝に進出していたが、いずれも敗れており、今夏は聖カタリナを破って「8度目の正直」で念願の初出場を決めた。

愛媛県勢は松山商が5度の全国制覇を誇るなど、夏の甲子園で全国6位の通算122勝を挙げている。しかし、夏の優勝は1996年の松山商が最後、センバツでも2004年の済美を最後に頂点に立っていない。

2019年春は松山聖陵、夏は宇和島東、今春センバツも聖カタリナが初戦敗退だった。新田は2回戦で左腕ヴァデルナ・フェルガスを擁する日本航空(山梨)と対戦。勝てば3回戦は、智弁学園(奈良)-横浜(神奈川)の勝者と当たる。

相手が強ければ強いほど力を発揮するのが「ミラクル新田」の真骨頂。偉大な先輩から受け継いだ枕詞を再現できるか注目だ。

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