2大大会の1つ、都市対抗野球とは
社会人野球の世界では、大きな大会が2つあります。夏に行われる都市対抗野球大会と、秋に行われる日本選手権です。
そのうち、まずは都市対抗野球について説明していきましょう。その歴史は非常に古く、プロ野球が発足するより前の1927年に第1回大会が開催されました。当時は学生野球の大会しかなく、大学野球を卒業すると、もう出場できる大会がないという状況でした。
そこで、日本の各都市同士の代表が競う大会を作ればどうだということになり、都市対抗野球が開催されることになったのです。
比較的歴史は浅い?日本選手権について
一方で、日本選手権の方は第1回大会が1974年と比較的最近です。
元々は「日本産業別野球大会」といって、業種別に代表を決めて競い合う大会を行っていました。たとえば、国鉄会社、機械・自動車会社、石油会社、電力・ガス会社、金融会社(保険・銀行)の各業種で代表を決め、優勝を争うといった感じです。
それ以前から、炭鉱業だけの大会や自動車会社のみの大会などがあったのですが、それを1つにまとめる目的で、1951年に第1回大会が行われました。当時は経済情勢によって勢いのある企業も変わっていくという非常に興味深い大会だったのですが、高度経済成長が終わるとそういった傾向も見られなくなり、1973年の大会を最後に終了。そして、日本選手権として生まれ変わったのです。
2大会の開催時期やその意義について
都市対抗野球は毎年7月~8月に行われています。つまり、高校野球とほぼ同時期ということですね。開催地は主に東京ドームが使われます。この時期はプロ野球のペナントレースも佳境ですが、社会人野球の選手たちにとってもドラフト前の大事なアピールの場。この大会の活躍次第では、スカウトの当落線上だった選手たちにも、ドラフト指名のチャンスが与えられる可能性が出てくるため、選手たちは何が何でも結果を出したいところです。
一方で日本選手権は11月の頭から開幕します。この大会が終わり次第、社会人の選手たちもオフシーズンに入り、業務中心の日々が始まっていきます。球場は主に京セラドーム大阪を使用。ただ、ドラフト前の都市対抗と違い、この大会はドラフト後に行われるため、あまりアピールの場としては使われず、どちらかといえばシーズンの総仕上げ的な役割を持っています。
2大会の違いとは
では、この都市対抗と日本選手権の2つの違いは何でしょうか。
まず、最も大きいのは「補強選手制度」でしょう。補強選手制度とは、都市対抗の本戦に出場したチームが、同地区で予選敗退したチームの選手を、大会限定でレンタルすることができる制度です。チームのウィークポイントを補強することもできますし、万が一ケガ人が出たときの穴埋めにもなります。補強できるのは3人まで。ただし、必ず選手を補強しなければならないわけではなく、そのチームの選手だけで本戦にも出場することもできます。
もう1つの大きな違いとしては、日本選手権では応援団の表彰がありません。選手の表彰はどちらの大会でも行われるのですが、都市対抗ではさらに応援団コンクールなるものも存在します。観客席に特設ステージが設けられ、チアリーダーによるダンスはもちろん、男子応援団や、郷土芸能などのパフォーマンスが行われます。そのパフォーマンスや郷土性などが対象となり、大会終了後に表彰されます。
大会で結果を残すチームたち
都市対抗野球では、2016年は愛知県豊田市のトヨタ自動車が初優勝を果たしました。強豪チームとして知られるトヨタ自動車ですが、意外にも都市対抗での優勝は初めてでした。
ちなみに、この大会で最も優勝回数が多いのが、神奈川県横浜市のJX-ENEOSの11回です。日本石油時代からの強豪で、2012年・2013年にも連覇を達成しており、常に日本トップレベルの野球を展開しています。
一方の日本選手権では、2016年は静岡県浜松市のヤマハが優勝を果たしました。1976年の初出場から数えて23回目で悲願の初優勝となりました。こちらの最多優勝は、住友金属野球団という和歌山県のチームが歴代最多の7回の優勝を誇っています。激戦区の近畿でも圧倒的な存在感を放ち、18度の出場で7度の優勝。しかし、残念ながら1999年に解散しています。
まとめ
このように、都市対抗と日本選手権では、さまざまな面で違いがあります。
しかし、日本一を目指すという点では同じですし、選手たちはどちらの大会でも精一杯のプレーを見せてくれます。
どちらの大会も東京ドーム・京セラドームという大きな会場で開催されるので、一度足を運んでみるとよいかもしれませんね。