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学童野球の在り方に一石?全日本軟式野球連盟が「保護者についての考え方」通知

2023 6/16 06:00SPAIA編集部
イメージ画像,Ⓒa katz/Shutterstock.com
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競技人口の減少に危機感

公益財団法人全日本軟式野球連盟が6月6日付で「学童チームへの保護者参加についての考え方」と題した文書を各都道府県支部に通知した。

競技人口の減少の理由のひとつとして保護者の金銭的、時間的負担があるため、「子供たちが野球を始められ、また、野球をやっている子供たちが途中で辞めることがないよう」と趣旨を説明している。

通知文では「父母会運営の基本的な考え方」として、父母会の設置や保護者のサポートを求めることは各チームの任意とするとした上で、「各家庭の事情を考慮し、強制や同調圧力のようなことが起こらないように配慮してください」と明記。体験会や入団前に父母会の必要性、役割、業務などの周知を推奨するとしている。

さらに「父母会や保護者のサポート体制を理由に、選手がチームを辞めることになった場合には、チーム代表者・チームスタッフは直ちに、保護者の負担にならないチーム運営や父母会運営の見直しや改善を図るように努めてください」と記述している。

今までの「当たり前」を見直す

また詳細を記した別紙では、以下の4つのポイントを掲げている。

1.それぞれの家庭には、子供のスポーツ活動への関わり方にその家庭ごとの考えがある事をよく理解し、チームの運営方法を決める時によく話し合う事が大切です。

2.自分達の今までの「当たり前」を見直す事も大切です。

3.役を担わないと、子供が使ってもらえないなどの誤解を生まない事は大切です。

4.伝統的な決まり事(保護者の役割、分担など)があっても、時代の変化や新しい意見を取り入れて見直していく必要があります。

全日本軟式野球連盟が文書を出すのは、子供たちの野球離れがそれだけ深刻だからだろう。娯楽の少ない時代はテレビで観るプロ野球選手に憧れ、野球チームに入る少年も多かったが、今はそうではない。野球以外にも選択肢は多くあり、趣味や娯楽は多様化している。

一方でプロ野球選手の年俸が上がり、メジャーリーグも遠い存在ではなくなった今、プロ野球選手は大金を稼げる職業になった。子供の健全な成長と教育のためという目的だけでなく、将来的に野球エリートへの道へ進ませることを夢見て学童野球を始める場合もあるだろう。子供が野球を始める目的や背景も多様化しているのだ。

そんな状況でも学童野球で旧態依然の体質が残り、保護者の負担増大などによって結果的に野球人口が減っているとすれば、野球界にとって大きな損失だ。大谷翔平らの活躍が夢を与えている一方で、若年層の競技人口の減少は看過できない事実。全日本軟式野球連盟が鳴らした警鐘を対岸の火事ではなく、各チームが自分事として捉える必要があるだろう。

関メディ井戸総監督「先を見据えた組織運営が大切」

兵庫県西宮市の野球専門校・関メディベースボール学院は小学部、中等部ともに父母会が存在しない。井戸伸年総監督は意図をこう説明する。

「今は共働きのご家庭が多く、土日も仕事をしている方も少なくありません。チーム運営はスタッフや選手同士が協力して行えばいいので、保護者の協力を強制する必要は全くないです。野球界への入り口は小中学校なので、その競技人口が減ると野球界全体の発展もないでしょう。人気スポーツでもあぐらをかくことなく、先を見据えた組織運営が大切です」

また、通知文にもある通り、我が子の可愛さから来る妬みや保護者同士のトラブルなども耳にするという。「例えば、親がお茶くみをしたからと言って子供の選手起用が左右されてはいけません。選手の実力を数値化、見える化して客観的に判断した方がいいですね」と力説した。

トレーニング方法も進化し、どのカテゴリーでも野球自体のレベルは確実にアップしている。それでも軟式野球連盟が通知文を出さなければならなかった現状は真摯に受け止めるべきだろう。本当に進化すべきは周りの大人たちなのかも知れない。

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