打力高い栗原陵矢と近藤健介は緊急時の捕手起用も
東京五輪で金メダル獲得が至上命題となる野球日本代表「侍ジャパン」。目前に迫った本大会を前に、日本の投打の戦力、さらには他国との戦い方を踏まえ、金メダルへの可能性を探ってみたい。
野手は捕手2人、内外野合わせて11人の計13人となっている。2年前のプレミア12優勝メンバーが名を連ねているほか、柳田悠岐（ソフトバンク）や村上宗隆（ヤクルト）ら抜群の長打力を誇るスラッガーが加わり、申し分のない顔ぶれと言えるのではないだろうか。
今回の野手陣の中でも特に期待したいのが栗原陵矢（ソフトバンク）、近藤健介（日本ハム）の2人だ。ともに内外野を守ることができ、梅野隆太郎（阪神）と甲斐拓也（ソフトバンク）に続く、緊急時の「第三の捕手」を務める可能性もある。選手数が限られる五輪の舞台では貴重な存在だ。
加えて、高い打撃力を備えていることが両選手の持ち味でもある。栗原は今季もソフトバンクの中軸を担い、昨年の日本シリーズではMVPに選出されるなど、短期決戦での勝負強さも証明済み。近藤も球界屈指のバットマンとして選球眼の良さを持っており、高い出塁率も特長の一つだ。
仮にスタメン出場でなくとも、試合終盤での「切り札」ともなり得る両者。攻守でのユーティリティプレーヤー2人の働きが、大一番での勝敗を左右することもあり得るだろう。
中継ぎ投手の手薄さに不安、総力戦を挑めるか
一方、投手陣はどうか。2019年のプレミア12では今回より2人多い投手編成だったとはいえ、日本のリリーフ陣の層の厚さが優勝の大きな原動力となった。東京五輪でも、勝利を呼び込むためには綻びのない正確な投手リレーが必要となることは間違いないが、一抹の不安が残る。
全11人を見渡すと、普段リリーフを務めているのが山﨑康晃（DeNA）、栗林良吏（広島）、平良海馬(西武)、岩崎優（阪神）の4人で、純粋なセットアッパーは岩崎、平良の2人。栗林はカープでは守護神であり、山﨑も今大会はクローザーとしての起用が有力だ。稲葉監督が構想の一つと語る山本由伸（オリックス）のリリーフや、他の先発陣が後ろに回るケースも間違いなく必要となってくるだろうが、セットアッパーの手薄さは否めない。
さらに今季、決して好調とは言えない田中将大（楽天）、故障明けの千賀滉大（ソフトバンク）ら先発陣の内容如何では試合序盤からの継投も十分考えられる。総力戦が予想される中、リリーフ専門4投手へ重圧は想像に難くない。
過去の五輪でも継投のミスが致命傷となったケースは少なくない。また今大会は敗者復活もあり、展開次第では決勝までの試合数も変わってくる。先発、救援問わず、投手陣の踏ん張りが今まで以上に求められる大会となりそうだ。
ライバルとなる各国NPB所属選手に注意
自国開催とはいえ、侍ジャパンだけにアドバンテージがある訳ではない。日頃より日本でプレーする他国の代表選手にとっても、東京五輪は「ホーム」での戦いと言えるだろう。
大会初戦の相手となるドミニカ共和国には巨人のメルセデスとサンチェスが選ばれている。今季の巨人先発陣を支える両投手は、日本代表の前に立ちはだかる存在だ。
さらに2戦目のメキシコにはロッテの主砲レアードが、また金メダル候補アメリカ代表にもオースティン（DeNA）、マルティネス（ソフトバンク）、マクガフ（ヤクルト）らNPBで好成績を残しているプレーヤーがいる。
これまでの五輪でも、特に脅威となったのが日本球団所属のプレーヤーたちだった。2004年アテネでは豪州代表のウイリアムス（当時阪神）に予選リーグ、さらに準決勝でも無得点に抑えられて敗れ、決勝への道が閉ざされた。
4年後の北京でも準決勝の韓国戦、李承燁（当時巨人）に痛恨の勝ち越しホームランを許している。李は韓国の主砲として期待されながら予選リーグの日本戦で3三振を記録するなど、大会序盤から全く当たっていなかった。それでも準決勝、同点の場面で真価を発揮し、韓国を金メダルへと導いた。
日本人選手の特徴を知る各国主力選手との対戦は、今大会でも重要な場面で訪れることが予想される。そこでいかに攻略できるか、金メダル獲得のために避けては通れないテーマであることは間違いない。
五輪ではグラウンド上だけでなく、ベンチも一丸とならなければ勝ち抜いていくことは不可能だ。投打の選手起用、相手国ライバル選手への対応なども含め、ベンチワークも勝敗を大きく左右する。稲葉監督をはじめ、国際舞台での経験が豊富な侍ジャパン首脳陣の采配にも初戦から注目したい。
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