少年野球で投球フォームが安定しない選手の特徴
少年野球で指導をしていると
・トップで肘が下がってしまう
・踏み出し足がインステップになる
・コントロールが安定しない
このようなことに悩んでいる監督・コーチもしくは保護者の方は多いのではないだろうか。
中学生以降では急激な身長の伸びに伴う柔軟性低下が原因で投球フォームのバランスが崩れてしまう選手が多い。投球フォームで柔軟性がなぜ必要なのかについては以前の記事(ピッチャーにはなぜ股関節の「柔軟性」が大切なのか)をご参照いただきたい。
その一方、少年野球では投球動作に必要不可欠な根本的な体の使い方を習得できていない選手が非常に多い。
正しい投げ方をするためには
・股関節を効率よく使う
・骨盤のコントロール
・重心位置のコントロール
などが必要である。このような基本的な動作を習得できていないと、投球フォームの連動性が失われ、結果的にトップでの肘下がりやインステップなどにつながってしまう。
そのため、少年野球の選手に対して「もっと肘を上げて投げよう」「ステップする足を真っ直ぐ出そう」などのフォームの型に対する杓子定規の指導ではなく、投球動作に必要な根本的な体の使い方を会得できるように導いていくことが重要である。
少年野球に多い間違った投球フォームとその改善法
これから少年野球の選手にとても多い間違った投球フォームの一例とその修正方法について紹介していく。
【少年野球で注意したい重心の沈み込み動作】
上の図をご覧いただきたい。今回、着目するポイントは左足(右投手の場合)を上げたあとの重心が沈むこむ瞬間である。
少年野球の選手では、この瞬間に体幹が反ってしまい、重心がつまさき寄りになり、膝が前に引き出されるパターンが多い。
この動作パターンでボールを投げようとすると、体全体の重心が前のめりになり、体重移動して踏み出した左足が地面に着地するときにインステップになりやすくなる。
また、下半身と上半身の連動性が損なわれやすく、テイクバックで腕がスムーズに上がりにくく、トップで肘が下がりやすくなってしまう。
プロ野球のピッチャーを見ると、インステップで活躍している選手もいるが、ボールをコントロールするのは難しく、基本的に少年野球では修正するべきポイントとなる。
【投球動作の修正ポイント】
この動作パターンに対する修正方法について紹介する。
上の図のように、重心の沈み込みを開始するときに体幹を少しだけ前かがみにするということである。
こうすることで体全体の重心バランスが整いやすい。膝が前に引き出されにくくなり、股関節を効率よく使いやすくなる。重心のバランスが整うことでステップ足の位置を修正しなくても勝手に踏み出し足が真っ直ぐになることも非常に多い。
少年野球では、インステップになっていなくても股関節をきちんと使ってボールを投げることができている選手は少ない。重心の沈み込みでの体幹角度の調整は簡単にできる指導ポイントなので、ぜひ参考にしていただきたい。
フォームの型ではなく、体の使い方を変える
今回は少年野球に多い間違った投球フォームとその修正法について紹介した。少年野球で投球フォームの形を修正するように指導すると、選手がそればかりを意識してしまい、動作がぎこちなくなってしまうことが多い。
そのため、直接的にフォームの型を修正するのでなく、根本的な体の使い方を変えることが重要である。
《ライタープロフィール》
芹田祐(せりた・たすく)。理学療法士。小学生から野球を始める。中学時代に肩を痛め、思い切りプレーできなくなったたことをきっかけに、スポーツでけがをした選手を支える側に立つことを志す。大学卒業後、アマチュア選手だけでなく、プロ野球選手のリハビリやトレーニング指導に従事。現在はWebサイトやSNS、書籍を通じて知識と技術を発信している。著者サイト:野球のコツと理論
【関連記事】
・投手にオススメの股関節ストレッチ5選、スピードアップとケガ予防に効果的