投手のパフォーマンス向上に股関節の柔軟性は不可欠
今回はピッチャーにぜひ実践してほしい股関節ストレッチを紹介していく。140km/hオーバーのストレートを投げ込むなどピッチャーがハイパフォーマンスを発揮するためには股関節の柔軟性は必要不可欠である。
ピッチング動作の中で股関節の可動域がいかに大切なのかということについては以前の記事で解説しているので、こちら(https://spaia.jp/column/baseball/10601)をご参照いただきたい。では、各部位ごとに具体的なストレッチ方法を紹介していく。
太もも前側のストレッチ
まず、一つ目は腸骨筋など太ももの前側にある筋肉を伸ばすストレッチを紹介する。
【腸骨筋ストレッチ】
ストレッチのやり方
・伸ばす側の足を大きく後ろに引く
・反対足の膝を立てる
・体幹をまっすぐにしたまま、へそを前方に出すようにして股関節の付け根を伸ばす
・伸びているところで40秒×3セットずつキープする
【大腰筋(小腰筋)ストレッチ】
ストレッチのやり方
・腸骨筋ストレッチの姿勢を作る
・伸ばす側の腕をバンザイする
・体を反対方向に倒し、下腹部から股関節の付け根にかけて伸ばす
・伸びているところで40秒×3セットずつキープする
腸骨筋ストレッチでは股関節の付け根が局所的に伸びるが、大腰筋は腰の背骨から股関節のつけ根にかけて広がってついているため、下腹部から股関節までストレッチできているのを感じるようにしよう。
お尻周りのストレッチ
次に、大殿筋などのお尻周りにある筋肉を伸ばすストレッチを紹介していく。お尻周りの筋肉が固いと、踏み出し足が地面に着地したあとのキャッチャー方向への回転運動をスムーズに行えなくなってしまうため、柔軟性の確保が必須である。
【お尻周りのストレッチその1】
ストレッチのやり方
・伸ばす側の足はあぐらをかくようにして膝を曲げる
・反対側の足は後ろに引く
・へそを下向きにしたまま重心を下げる
・伸びているところで40秒×3セットずつキープする
注意点として上の写真のように膝が曲がりすぎてしまうと、筋肉が伸びにくくなるので注意して行うようにしよう。
【お尻周りのストレッチその2】
お尻周りのストレッチをもう1種目紹介する。さきほどのストレッチと同じでお尻周りの筋肉を伸ばすことができるが、若干伸びる部位が変わるのでこちらのストレッチも合わせて行うようにしよう。
ストレッチのやり方
・前足の膝を直角にして片膝立ちになる
・体をひねって手を伸ばして前側のお尻に触れる
・体をひねったときに膝が動かにように注意する
・前足のお尻が伸びているところで30秒×3セットずつキープする
太もも裏のストレッチ
最後はハムストリングスといわれる太もも裏側にある筋肉のストレッチ方法を紹介する。
ストレッチのやり方
・太ももとお腹をつけて深くしゃがむ
・太ももとお腹をつけたまま、できるだけお尻を高く上げる
・深くしゃがみこんだ位置まで戻ったら1回として15回×3セット行う
このストレッチはハムストリングスを効率よく伸ばすことができるのでとてもオススメのストレッチである。お尻を持ち上げたときに太ももとお腹が離れないように注意して行うようにしよう。
また、足の裏をつけたままだと深くしゃがめない選手はカカトを浮かして行っても問題ないが、お尻を持ち上げたときには足の裏全体を地面につけるようにしよう。
ストレッチはトレーニングの一環
今回はピッチャーにオススメしたい股関節ストレッチを紹介した。股関節の柔軟性を高めることでケガ予防だけでなく、パフォーマンスアップの効果が期待される。
ストレッチの効果はすぐに現れることはないが、継続的に行うことで必ず成果は出てくる。ストレッチをトレーニングの一環としてとらえて積極的に取り組んでいただければと思う。
《ライタープロフィール》
芹田祐(せりた・たすく)。理学療法士。小学生から野球を始める。中学時代に肩を痛め、思い切りプレーできなくなったたことをきっかけに、スポーツでけがをした選手を支える側に立つことを志す。大学卒業後、アマチュア選手だけでなく、プロ野球選手のリハビリやトレーニング指導に従事。現在はWebサイトやSNS、書籍を通じて知識と技術を発信している。
著者サイト:野球のコツと理論