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第30回出雲駅伝② 2区~4区も快調、選手層の厚さを見せつけた青学

2018 10/14 15:00鰐淵恭市
ランナー
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さらに勢いを加速させた2区鈴木

5.8kmの2区に、青山学院大は鈴木塁人(3年、千葉・流通経大柏高)を配置した。2年前の出雲では1区を走ったランナーだ。今年の箱根でも1区を走り、区間5位。過去の実績が物語るように、1区で起用されることが多かった選手である。

6秒差で追いかける東洋大は、今年の箱根で青山学院大の鈴木に勝ち、1区区間賞をとった西山和弥(2年、群馬・東農大二高)が2区にまわった。5千メートルの自己ベストで言えば、鈴木より7秒近く速い13分46秒95。その力の差で言えば、東洋大がこの区間で青山学院大をかわす可能性は高い。

そして、この区間は連覇を狙う東海大もエース級の選手を配置した。1500メートルで日本選手権を連覇し、今夏のアジア大会の代表にも選ばれた館澤亨次(3年、埼玉栄高)だ。館澤にとって、5.8kmという距離は決して短くはないが、スピードに乗れば順位をひっくり返す力はある。

青山学院大の鈴木にとってみれば、ライバル校の選手の力が上で、絶体絶命のピンチ。しかし、蓋を開ければ、区間賞を獲得したのは、その鈴木だった。6秒差といえども、トップに立つということは有利だ。自分のペースを守ればいい。鈴木は1区から続く流れにうまく乗った。

鈴木は「(1区の)橋詰さんが最高の流れでたすきを渡してくれた。ライバルと言われる東洋大を引き離せた。いい仕事ができた。区間賞をとれて、うれしい」と満足げに語った。

かたや、東洋大の西山は波に乗れなかった。前を行く鈴木との差はつまるどころか、開いていく。気がつけば、残り1km付近で、後ろからきた東海大・館澤に追いつかれ、前に出られた。

2区を終えて1位は青山学院大、2位東海大は23秒差、3位東洋大は34秒差。大会前に青山学院大が思い描いていた通りのレース展開となった。

主将の森田がライバルを引き離した3区

3区は前半最長区間の8.5km。当然のごとく、前半の重要区間である。

先頭を行く青山学院大は主将の森田歩希(4年、茨城・竜ケ崎一高)に託した。今年の箱根で花の2区区間賞。実力は申し分ない。2位東海大は中島怜利(3年、岡山・倉敷高)が23秒差を追う。中島は東海大の黄金世代の1人である。2区で順位を一つ下げ、これ以上離される訳にはいかない東洋大は、今年の箱根3区区間賞でエース格の山本修二(4年、石川・遊学館高)が任された。

この3人、1万メートルのタイムで比較すると、森田の28分44秒62が最も速い。もちろん、2区のように持ちタイムがそのままレースで反映されるかどうかは別問題だが、この3区では力の差がそのまま結果に出た。

2区までに広げた差をいかし、青山学院大・森田が軽快に飛ばし、序盤から差を広げた。原監督から「駅伝を外したことがない」と評される森田。区間賞こそ、拓殖大の留学生ワークナー・デレセに譲ったものの、区間2位の走りは、指揮官の期待に十分に応えるものだった。

この区間でも、青山学院大のライバルである東洋大、東海大は伸び悩んだ。力が上の選手が先行しているのだから、追いかける方としては難しいレース展開ではあった。とはいえ、3区を終えた時点で、東洋大は2位拓殖大と並びトップと36秒差の3位となった。東海大は4位に順位を下げ、1分14秒差。この時点で東海大の連覇は厳しくなった。

将来のエース候補?田を使った4区

4区は2番目に短い6.2km。つなぎの区間である。

青山学院大は学生三大駅伝初出場となる?田圭太(2年、広島・世羅高)が任された。高校駅伝で名を馳せた期待の2年生である。1万メートルの自己ベストは29分台だが、5千メートルのタイムは13分50秒67とチーム3番目のタイムを持つ。このレベルの選手をつなぎの区間でつかうことに、青山学院大の余裕と選手層の厚さがうかがえる。

東洋大は今年の箱根の10区区間賞で主将の小笹椋(4年、埼玉栄高)。どちらかというと、箱根のような長い距離が得意なタイプで、この区間のような短い距離は分が悪い。

東海大は5千メートルでチームトップの13分35秒81の記録を持つエースの關颯人(3年、長野・佐久長聖高)。タイムを見れば、關が前との差をつめるのかと思いきや、そうはいかない。この区間も、追いかけることの難しさを見せられる区間となる。

「1~3区の先輩がいい位置で渡してくれた」という青山学院大の?田が快調に飛ばすのとは対照的に、ライバル校はもがいても差が開いていく。区間賞を獲得したのは初の大舞台だった?田だった。

4区を終えて青山学院大がトップで、2位東洋大は45秒差、3位拓殖大が1分9秒差、4位東海大が1分20秒差。このまま青山学院大の楽勝かと思いきや、そう簡単にいかないのも駅伝の面白さである。(続く)


第30回出雲駅伝③