「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

第30回出雲駅伝① 青学が2年ぶり4度目の優勝、1区で見せた完璧なレース運び

2018 10/13 15:00鰐淵恭市
マラソンランナー
このエントリーをはてなブックマークに追加

学生三大駅伝の中で距離の短い出雲

今年も駅伝シーズンがやってきた。学生三大駅伝の幕開けとなる出雲全日本大学選抜駅伝競走(通称・出雲駅伝)が10月8日、島根県出雲市で行われ、大学駅伝界を牽引する青山学院大が、2年ぶり4度目の優勝。史上初の2度目の三冠へ向けて好発進した。

この出雲駅伝は距離が箱根駅伝の2区間分しかない。それ故に、学生三大駅伝を語る上では、大会ごとの走行距離を頭に入れておかなければならない。駅伝ファンならご存じのように、圧倒的に長いのが箱根の10区間・217.1 kmで、中間が全日本の8区間・106.8 km。そして出雲が6区間で45.1kmとなっている。

この距離から出雲は箱根のような耐久力ではなく、スピードが問われる大会だ。同じ駅伝といっても、箱根と出雲は全くの別物であり、学生駅伝三冠を達成するのは難しいと言われる所以でもある。出雲は1区(8.0km)、2区(5.8km)、3区(8.5km)、4区(6.2km)、5区(6.4km)、6区(10.2km)となっており、当たり前だが長い距離ほど差が付きやすく、ポイントは1、3、6区の3つの区間。特に駅伝は先にリードした方が有利になる(追いかける方はオーバーペースになる)ため、1、3区がより重要になってくると言える。

優勝候補の三強 青山学院大、東海大、東洋大

青山学院大の原晋監督と言えば、レース前日の記者会見で毎回キャッチーな作戦名を掲げる。今年の出雲は、”4649(よろしく)大作戦”で会見を盛り上げた。

その心は、
「4」度目の優勝を
「6」区のアンカー竹石尚人(3年、大分・鶴崎工高)で決めるぞ
「4」区の吉田圭太(2年、広島・世羅高)がキーマンだ
「9」度目となる出場で成し遂げる
ということだ。

青山学院大の区間配置を見ると、重要な1、3区に力のある選手を配置した。1区に今5千メートルで今季の学生トップの記録を持つ橋詰大慧(4年、和歌山北高)、3区に主将の森田歩希(4年、茨城・竜ケ崎一高)と、先行逃げ切りを狙う布陣だ。

昨年優勝した東海大は3年生に高校時代から名を馳せた選手がそろい、「黄金世代」を形成する。黄金世代の特長は、箱根のような長い距離よりも、トラックレースや出雲のような短い距離が得意なスピード豊かな選手が多いことにある。昨年は2年生5人、3年生1人で優勝したため、今年も優勝候補の筆頭と思いきや、区間配置を見ると、厳しそうに思えた。

昨年の優勝メンバーのうち、今年も出場しているのは館澤亨次(3年、埼玉栄高)、關颯人(3年、長野・佐久長聖高)の2人だけ。その館澤を2区、關を4区に起用した。つまりは重要区間に力のある選手が配置できていない。特に昨年の4区区間賞の鬼塚翔太(3年、福岡・大牟田高)がケガのために出場できないのは痛い、と思われた。

今年1月の箱根で2位に入り、青山学院大の原監督がライバルにあげた東洋大は、前半に力のある選手を配置した。1区は昨年の全日本1区区間賞の相澤晃(3年、福島・学法石川高)、2区は今年の箱根1区区間賞、日本選手権1万メートルで4位の西山和弥(2年、群馬・東農大二高)、3区は今年の箱根3区区間賞の山本修二(4年、石川・遊学館高)。3区を終えてトップに立っていれば、面白い布陣だ。

今大会の優勝候補は、この三強というのが専らの見方だった。

今季の学生ナンバーワン橋詰が地力を見せた1区

1区というのは難しい。出遅れると、その後の選手への負担が大きいからである。その分、選手へのプレッシャーも大きく、失敗は許されないから、序盤から他校との腹の探り合いになり、実力通りの走りができるとは限らない。

そんな1区の注目は、青山学院大の橋詰と東洋大の相澤のどちらがトップで2区にたすきを渡せるのか、というところにあった。

序盤から大きな集団で、相手の出方をうかがう展開。ここで目を引いたのが、最も力がある青山学院大の橋詰が最後尾につけていたことだ。余裕すら感じさせる走りだった。

レースが動いたのは6km過ぎ。東洋大・相澤がスパートし、ついたのは城西大だったが、青山学院大・橋詰がすぐに追いつく。そして残り1kmを切ってトップに立った橋詰が、そのままたすきを渡した。東洋大は6秒差の2位、東海大は20秒差の6位と明らかに出遅れてしまった。

青山学院大の橋詰がその力通りの走りをし、結果を出したと言える。橋詰は「最初はずっと後ろにつけようと思っていた。最後は勝てるスピードがあると思っていた。100点だと思う。優勝、三冠に向けて良いスタートが切れた」と語った。

青山学院大が狙い通りのスタートを切り、今年の出雲は幕を開けた。(続く)


第30回出雲駅伝②