ペースメーカー脱落の不運もあり、優勝した安藤友香も日本記録に届かず
パリ五輪女子マラソンの代表選考最終レースとなる名古屋ウィメンズマラソン(3月10日)が終了し、代表の3枠目は大阪国際女子マラソンで日本記録を更新した前田穂南(天満屋)に決まった。前田に加え、MGC1位の鈴木優花(第一生命グループ)、同2位の一山麻緒(資生堂)の3人がパリ五輪に挑むことになる。
名古屋ウィメンズマラソンで代表入りを決めるには、前田が大阪国際女子マラソンでマークした2時間18分59秒の日本記録を更新することが最低条件だった。
安藤友香(ワコール)、鈴木亜由子(日本郵政グループ)、加世田梨花(ダイハツ)らが果敢に挑んだが、ペースメーカーが引っ張るタイムは、日本記録より遅れるものだった。さらに、4人のペースメーカーのうち、2人が15キロまでに脱落する不運も重なった。
結果、安藤が自己ベストで優勝したものの、タイムは2時間21分18秒。前田の日本記録を上回ることができなかった。
2人が2大会連続出場となるのは2008年北京五輪以来
今回のパリ五輪代表には一つの特徴がある。3人のうち、2人が2大会連続出場ということだ。
女子マラソンが五輪に採用された1984年のロサンゼルス大会以降、日本代表3人のうち、2人が2大会連続出場となったのは、2008年北京五輪以来、2回目だ。選手としてトップレベルを長く維持するのが難しい上に、選考会を勝ち抜くのも容易ではない中で、2人が2大会連続出場というのは珍しい。そもそも女子マラソンで2大会連続日本代表になったのも前田で5人目だ。
北京五輪の時は、2004年アテネ五輪金メダルの野口みずき、5位の土佐礼子が2大会連続の代表だった。この時は、野口の2大会連続金メダル、土佐のメダル争いが期待されたが、野口はケガで欠場。ケガをおしながら出場した土佐も途中棄権した。
アテネ五輪では3人全員入賞し、女子マラソンは日本の「お家芸」と評されたが、北京五輪では一変し、入賞者ゼロとなった。
そこから、2021年東京五輪で一山が8位入賞するまで入賞者ゼロが続くなど、日本女子マラソンの低迷期のスタートとなったのが北京五輪だった。
前田穂南が世界ランキング8位で入賞圏内
今回のパリ五輪でも、同様の「悪夢」が繰り返されるのだろうか。筆者は「否」であると思う。
2大会連続出場ということを考える際、「加齢」によるマイナスと「経験」によるプラスのバランスをどう見るかだと思う。今回は東京五輪から3年しか経ってなく、レース時に一山が27歳、前田28歳と脂が乗りきった年齢を考えると、2大会連続はプラスの部分が大きいと思う(ちなみに鈴木は24歳)。
北京五輪の時は、野口が30歳、土佐が32歳になる年でベテランの域にさしかかっていた。さらに、当時の野口や土佐はメダルの期待が大きすぎたゆえに、練習で追い込みすぎてケガをした。今は当時のような過度な期待はないだけに、そういったことはないだろう。
世界ランキングで日本代表の力を見ると、2023年は鈴木が100位、一山が116位と、ランキングは高くない。ただ、これはMGCが秋のレースであり、勝負重視のレースであったことを考えれば致し方ない。
一方、2024年のランキングでは前田のタイムが日本勢トップの8位に位置している(3月14日時点)。もちろん、楽観視できる順位ではないが、十分入賞が狙える状況にはある。そして、夏のレースは暑さゆえに何が起こるか分からない。日本の「お家芸」復活を期待したい。
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