かつての日本では非公表の存在
3月3日に行われた東京マラソンで注目されたのがペースメーカーだ。今回は設定タイム通りに走らず、悪い意味での注目を浴びたが、ペースメーカーとはいかなる存在なのか。
マラソンのような記録競技は、「記録」と「勝負」の二つの面がある。ペースメーカーは記録面でのレベル向上やレースを盛り上げるため、は1980年代には登場したと言われる。当時は「ラビット」とも呼ばれた。現在ではトラック種目の中距離や長距離でも見られる。
海外では早くからその存在がオープンになっていたが、日本では公表することが長くタブー視されていた。国内でオープンになったのは、2003年の福岡国際マラソンからだ。
世界歴代2位でゴールしたペースメーカー
ペースメーカーがゴールした場合、どうなるのかという疑問がある。基本的には、その記録は認められる。
その有名な例が2003年のベルリンマラソンだ。
ペースメーカーのサミー・コリル(ケニア)がコーチを無視して最後まで走り切り、2位でゴール。当時の世界歴代2位となる2時間4分56秒をマークした。1位で世界記録を更新したポール・テルガト(ケニア)とは1秒差だった。
もちろん、記録は認められても、レースとはペースメーカーとして契約しているため、場合によっては違約金を払わされたり、ペースメーカーとしての契約金が払われなかったりする可能性はある。なので、なかなか最後まで走り切るペースメーカーは少ない。
なお、2004年の別府大分毎日マラソンでは、ペースメーカーのサムソン・ラマダーニ(タンザニア)が独走して40キロ付近まで走ったが、コーチに止められてしまった、という「珍事」が起きた。
ペースメーカーを生業にしているランナーも
契約金は千差万別だ。国内レースで言えば、100万円を超える選手もいれば、数十万円の選手もいる。
どれだけ速いペースを刻める選手なのかといった要素や、その選手自体の知名度にも影響される。アフリカではペースメーカーを生業にしているランナーもいる。
女子の選手を男子が引っ張ってもOK
なお、女子のレースに男性のペースメーカーが走ることはOKである。国内には女子だけのマラソンが多く、ペースメーカーも女子が務めることも多いが、例えば大阪国際女子マラソンでは川内優輝がレースを引っ張ったこともある。
海外は男女混合レースが基本のため、男子が引っ張ることが普通だ。例えば、野口みずきは2005年のベルリンマラソンで当時の日本記録をマークしたが、ペースメーカーは男性だった。
好記録を生むためには必要なペースメーカーだが、勝負感を養うことには不向きだ。そのため、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)ではペースメーカーはいないし、記録よりも勝負が重要な五輪、世界選手権でもいない。純粋に駆け引きを楽しむなら、ペースメーカーがいないレースの方が面白いとも言える。
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