リレー種目で女子4×400mのみ五輪出場ならず
6月24日から27日にかけて、東京オリンピックの選考会を兼ねて行われた陸上の日本選手権で、女子4×400mリレー(以下、女子マイル)に日本選抜が出場した。結果は日本歴代7位の3分32秒17をマークしたものの、東京オリンピックの出場権獲得には至らなかった。
東京オリンピックに出場できるチーム数は16チームで、日本のランキングは19位だったため、16位以内にランクインする必要があった。最低でも3分29秒42を出さなければ、順位を上げることができなかったのだ。
メンバーは日本選手権の女子400mの上位4人により編成された。1走から順番に、久保山晴菜(今村病院)、青山聖佳(大阪成蹊AC)、松本奈菜子(東邦銀行)、小林茉由(J.VIC)だった。出場した各メンバーの記録は以下の通りだ。
唯一の52秒台を出し、自己記録を更新して優勝した小林のタイムは、日本歴代4位に相当する。4位に入賞した久保山も自己記録を更新したことで、女子マイルは期待を集めていた。
他のリレー種目である男子4×100m、男子マイル、女子4×100mに関しては出場権を獲得している。女子マイルのみ出場権を獲得できなかったことで、競技力の低さを露呈する結果となった。
バトン技術でカバーできないマイルリレー
マイルのレベルは、個人競技の400mにおける競技力と深く関係している。4×100mはバトン技術の向上により、他のチームと差をつけることができるが、マイルはバトンパスの影響が少なく、個人の実力がそのままタイムに反映されるためだ。
現在の女子400mの日本記録は、丹野麻美(ナチュリル)が2008年に出した51秒75。陸上競技の国際競技連盟であるワールドアスレティックスの公式ページによると、丹野の記録は世界ランキングで「680位」に位置する。89位までの選手が40秒台を出しているのが実状だ。
それだけを見ても、女子マイルが世界に通用するレベルに到達できていないことが分かる。やはり、400mをレベルアップさせない限り、女子マイルのレベルを上げることは難しい。
世界ランキング3位までにランクインする選手と記録は以下の通りだ。
関東インカレから考える女子マイルの現状
学生陸上から女子マイルの競技力について考えてみよう。
大学生を対象にした関東学生陸上競技対校選手権大会(以下、関東インカレ)は、全国大会を目指すための重要なステップとして、多くの学生が目指す陸上界の大舞台だ。関東インカレに参加するためには、参加標準記録を突破しなければならない。
数年前までは女子マイルの参加標準記録は「4分20秒」だった。単純計算で選手1人あたり、65秒以内のタイムを出せば参加できるレベルだ。現在の400mの参加標準記録は57秒50であることを考えると、圧倒的にレベルが低いことが分かる。
参加標準記録は、競技者のレベルと出場者数のバランスを見て決定される。出場できるハードルを下げないと、競技者を集められなかったということなのだろう。
しかし、現在は参加標準記録が「4分5秒」に引き上げられた。以前よりは競技力のレベルが上がっていると見られる。
他種目に劣らないマイルの魅力
競技力をさらに向上させるには、世間からの注目度や競技の人気を高めることが大切だ。競技人口が増えないと、全体的な実力を伸ばすことができない。実際に、リレーといえば4×100mをイメージする人が多いのではないだろうか。マイルがどのような競技かさえ理解されていないように感じる。
マイルは4×100mに劣らない魅力を持つ競技だ。陸上大会の最後の種目として定着しており、マイルが行われる時間は各チームの応援も相まって、会場のボルテージが一気に高まる。
また、走順や戦略が重要になる競技であるため、総距離1600mというレースが展開される中で、順位が大きく動くこともあり、最も盛り上がる種目の一つといっても過言ではない。
そんな魅力溢れるマイルリレーだが、陸上に関わっている人と世間との間に、注目度に関して隔たりがある。競技が注目を集めるためには、マイルリレーの魅力をもっと発信する必要があるだろう。
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