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【NFL】第54回スーパーボウル展望、紅に染まるマイアミの勝者は?

2020 2/1 11:00末吉琢磨
ヴィンス・ロンバルディ・トロフィー

Ⓒゲッティイメージズ

実力のあるチーム同士の対戦となったスーパーボウル

サンフランシスコ・49ers対カンザスシティ・チーフス。どちらも赤をチームカラーとするこの両チームがぶつかる第54回スーパーボウルは、現地時間2月2日(日本時間3日午前)フロリダ州マイアミのハードロック・スタジアムでおこなわれる。

圧倒的なラン攻撃と鉄壁の守備でNFCトップシードから勝ち上がった49ersと、高速バックス陣による破壊的なパス攻撃で勝ち上がったAFC第2シードのチーフスという、スーパーボウルに相応しい、実力のあるチーム同士の対戦となった。

2つの強みを持つ49ers

49ersは、ラン攻撃と守備という2つの強みを持つチームと言われている。ラン攻撃はレギュラーシーズン1試合平均144.1ヤードを獲得し全体2位。プレーオフに入ってからは更にパワーアップし、2試合連続で180ヤード以上を記録している。

3人のランニングバック(RB)をローテーションする49ersだが、そのうちの1人、テビン・コールマンがNFCチャンピオンシップで肩を脱臼し、万全の状態で臨むことは難しそうだ。しかし同じ試合でラヒーム・モスタートが大爆発。キャリアハイの220ヤードを走り、コールマンが不在でも問題ないことを証明している。

ディフェンスも同様にNFL2位と盤石。特にディフェンスライン(DL)は、質、量ともに最高のラインナップで、控えに回るであろう元チーフスのディー・フォードは、昨シーズンのプロボウラーに選ばれる程の選手である。

この2つの強みがあるためか、49ersのパス攻撃は弱いとみなされがちだ。実際、彼らのパス攻撃は、レギュラーシーズン13位と平均的である。加えて、プレーオフ2試合でたった27回しかパス攻撃をおこなっておらず、そのことでエースクオーターバック(QB)、ジミー・ガロポロに対する批判まで起きる始末だ。

しかし、ガロポロが250ヤード以上パスを投げた試合で、49ersは今シーズン7勝0敗と無敗。49ersはパス攻撃ができないのではなく、ラン攻撃が好調なためパス攻撃を使う必要がなかっただけなのだ。彼らは手の内の全てを見せることなく、プレーオフを勝ち上がってきている。

破壊的なパス攻撃のチーフス

オールマイティーな49ersとは違い、チーフスはパス攻撃特化型のチームだ。レギュラーシーズンは怪我人が多発したこともあり全体5位に留まったが、プレーオフに入り1試合平均304ヤードをパス攻撃で獲得していて、これはレギュラーシーズンに当てはめるとトップの数字になる。

また第7週に膝に怪我を負ったエースQBパトリック・マホームズが、そのコンディションを上げてきたのも心強い。プレーオフで今シーズン初めてとなる2試合連続50ヤード以上のランを獲得し、もはや膝に何も不安がないことを証明した。彼のランは、パスに偏りがちなチーフスの攻撃にアクセントを加えるものとして、ゲームの鍵を握ることになるだろう。

チーフスのラン守備は、レギュラーシーズン1試合平均128.2ヤードを失い、全体26位とNFL最低クラスだった。しかしプレーオフの2試合では、平均89.5ヤードと大幅に改善されている。しかもその2試合の対戦相手は、ラン攻撃9位のヒューストン・テキサンズと、今シーズンのリーディングラッシャー、デリック・ヘンリー擁するラン攻撃3位のテネシー・タイタンズだ。

チャンピオンシップから2週間空く日程が、よりプラスに作用するのもチーフスだ。それはDLのクリス・ジョーンズに、怪我からリカバリーする時間を与えることができるからだ。怪我の影響で限定的な出場しかできなかったAFCチャンピオンシップですら、彼は何度も決定的なプレーを見せた。ジョーンズのコンディションは、試合の趨勢に大きな影響を及ぼすだろう。

数少ない49ersの弱点をチーフスは突けるか?

完璧なチームに見える49ersだが、弱点はある。NFLトップのパス守備を誇る彼らだが、今シーズンパスで300ヤード以上失った試合が2試合ある。それは第14週対ニューオリンズ・セインツ戦と、第16週対ロサンゼルス・ラムズ戦だ。

セインツ戦はNFL最高のワイドレシーバー(WR)の1人、マイケル・トーマスに走られるのは仕方がないにしても、第2WRで、決して一流とは言えないテッド・ギンにも50ヤードを走られている。ギンは高校時代、200mを21.16のタイムで走ったことがあるスピードスターだ。また、ラムズ戦ではWRロバート・ウッズに100ヤード以上を許している。ウッズは高校時代200mで21.04を記録し、快速で鳴らした選手である。

彼らとマッチアップした49ersのコーナーバック(CB)リチャード・シャーマンとアケロ・ウィザースプーンは、NFL屈指のフィジカルなCBタンデムだが、決してスピードに秀でているわけではない。むしろ苦手としている。チーフスには高校時代100mを10.19、200mを20.14で走った現在NFLで最速と言われるWR、タイリーク・ヒルがいる。もし49ersがこの弱点を解消していないようだと、痛い目にあうだろう。

また49ersは今シーズン、QBのランに対してはリーグで3番目にラッシングヤードを許しているというデータもあり、マホームズがいるチーフスは、彼らにとって簡単な相手ではないことがそこからもわかる。多くのNFLの強豪チームが手も足も出なかった49ers守備だが、ことチーフスに限ってその様なことにはならないだろう。

どちらのチームにとっても簡単な試合にはなりそうもない今回のスーパーボウル。もしかしたらヘッドコーチの経験、という要素が最終的な結果に影響することも考えられる。49ersは僅かヘッドコーチ歴3年で、スーパーボウル初登場のカイル・シャナハン。チーフスは齢60を超え、20年のヘッドコーチキャリアを誇るアンディ・リード。彼は負けたとはいえ、スーパーボウルの舞台も一度経験している。この新旧ヘッドコーチの駆け引きも、スーパーボウルのハイライトとなるだろう。

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