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【スーパーボウル回顧】イーライ・マニングによる史上最大の番狂わせ

2020 2/2 11:00末吉琢磨
ニューヨーク・ジャイアンツのイーライ・マニングⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

多くの名勝負が生み出されたスーパーボウル

過去に多くの名勝負が演じられ、見る者を興奮の渦に巻き込んできた大舞台「スーパーボウル」がやって来る。きっと今回も、過去の名勝負に負けない熱い試合が私たちを待っている。

そのスーパーボウルが始まる前に、過去の名勝負に今一度思いを馳せたい。それはスーパーボウルの歴史を彩った1人である偉大なクオーターバック(QB)が今年、引退を決めたからだ。

エースQBとして16年間ニューヨーク・ジャイアンツ一筋で活躍し、2度のスーパーボウル優勝と、2度のスーパーボウルMVPを獲得したイーライ・マニング。彼が見せたスーパーボウル史上最大の番狂わせを振り返る。

偉大な兄と比較されたイーライ

ジャイアンツ史上で唯一、2度スーパーボウルMVPを獲得した選手であるにも関わらず、イーライ・マニングは最後まで超一流という評価を受けることがないまま現役を退くことになった。それは偉大な兄、ペイトン・マニングと常に比較され続けたからである。

兄はNFL史上屈指と言われたQBで、オーディブルの常時導入によりリーグに衝撃を与えた偉大な変革者でもあった。守備の穴を正確に見抜く機械のようなプレスナップリード、計算され尽くしたパスのタイミング。それはまるで、絵に描いたような理想のQBだった。

スーパーボウルという大舞台で輝く才能

しかし、イーライには兄ペイトンを上回る才能があった。それが大舞台での強さだ。ペイトンはレギュラーシーズン通算QBレーティング96.5の高い数字を誇ったが、プレーオフ通算では87.4に留まり、スーパーボウル通算では僅か77.4だ。

対してイーライは、レギュラーシーズンは通算84.1にしか過ぎないが、プレーオフでは通算87.4に上昇し、スーパーボウル通算では96.2と高い数字を記録する。そんな彼が残した最高傑作が第42回スーパーボウルだ。

奇跡のキャッチと史上最大の番狂わせ

このスーパーボウルでイーライ率いるジャイアンツと対戦したのは、王者ニューイングランド・ペイトリオッツ。レギュラーシーズンを16戦全勝、ただの一度も負けることなくスーパーボウルまで勝ち上がってきた。もし勝てば、史上2度目となる全勝優勝達成。そして、その可能性は限りなく高いと見られていた。

しかし、ジャイアンツは無敗ペイトリオッツ相手に健闘。圧倒的な攻撃力を誇っていたペイトリオッツ攻撃陣を僅か7点に抑え、最終クオーター残り11分の時点でリードを奪うことに成功した。

だが、ペイトリオッツはここから底力を見せる。試合の終了時間が差し迫った残り2分42秒、逆転のTDパスをペイトリオッツのエースQB、トム・ブレイディがワイドレシーバー(WR)、ランディ・モスに通したのだ。「試合はこのまま順当に終わる」誰もがそう思っていた。

勝利への僅かな可能性を追い最後の攻撃を仕掛けるイーライと、ジャイアンツの攻撃陣に襲い掛かかるペイトリオッツの守備陣。残り時間1分15秒、パスを投げるためにドロップバックしたイーライだが、ペイトリオッツ守備陣に取り囲まれる。逃げる場所がなく一度掴まったイーライだったが、振りほどき投げた。運を天に任せたかのように投げられたそのボールは、ジャイアンツのレシーバー、デイビッド・タイリーの手の中にあった。いや、ボールは手からはみ出し、ヘルメットとの間でかろうじて抑えられていた。奇跡が起きた瞬間だった。

信じられないプレーを目の当たりにしたペイトリオッツ守備陣は、ただ眺めるしかなかった。残り時間35秒にイーライの手から放たれたボールによって、試合は事実上の終わりを告げた。WRブラキシコ・バレスによるTDパスキャッチだった。

新しい時代のスーパーボウルが始まる

スーパーボウルの歴史にその名を刻み、イーライは現役を去った。そして次のスター候補たちがスーパーボウルの舞台に登場する。彼らは新たな歴史を刻むため、かつてのイーライのように人々を驚愕させるプレーを見せてくれるだろう。