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父親は元横浜ベイスターズ投手、パトリック・マホームズは新時代QBの旗手

2020 1/31 11:00末吉琢磨
Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

一つの時代の終焉

NFLは今一つの時代が終わろうとしている。つい先日、長きに亘りニューヨーク・ジャイアンツの先発クオーターバック(QB)を務めたイーライ・マニングが引退を表明した。39歳だった。

ニューイングランド・ペイトリオッツのスーパースター、トム・ブレイディはシーズン後半にキャリア最悪とも言える不調に陥った。今、メディアは「彼に引退の時が来た」と騒ぎ立てている。それは、キャリアで初めてフリーエージェントになったことに加え、伝説的なQBは本格的に衰えを見せる前に引退する方が相応だと考えているからだ。

しかし、ブレイディには続ける意思があり、彼の代わりがいないペイトリオッツも契約更新する可能性が高い。だが42歳という年齢で長期契約を結ぶことは難しく、現役を続けたとしてもそれほど長い期間ではないはずだ。

また、昨年末に「引退はしない」と公言していたロサンゼルス・チャージャーズのエースQBフィリップ・リバースも、16年間在籍し慣れ親しんだチームを離れることが間違いない状況。モバイルQB全盛の今、走れない38歳のQBを獲得しようとするチームがいったいどれ程あるだろうか?

この「アラフォー」世代のQBたちは、長い間NFLのトップQBとして君臨し、若手にその座を明け渡すことは終ぞなかった。しかし今シーズン、トップクラスの成績を残せたのはニューオリンズ・セインツのドリュー・ブリーズ1人だけ。彼らの時代は終わりを告げようとしている。

新時代QBたちの先頭を走る男

古い時代が終わるということは、新しい時代が始まるということでもある。

今年のプレーオフ進出チームの先発QBは、12人中4人がプロ入り3年以内の若い選手だった。彼らは全員投げて走れる「モバイルQB」であり、まさしく新時代のQBたちだ。そして、その旗手を務めるのが昨シーズンのMVPで、ついにスーパーボウルにその姿を現すことになった、カンザスシティー・チーフス3年目のパトリック・マホームズだ。

QBとしての才能全てを兼ね揃えているマホームズ。投げて走り、試合を決める。爆発的な破壊力を誇るチーフスのパス攻撃は、彼の右腕から生み出される。大学とNFLの両方で年間5,000ヤードのパスを投げた唯一の選手で、年間50TDパスを投げたNFL史上最年少QBでもある。プロ入り僅か3年目にして、このスーパーボウルに登場することになった。

父親は元横浜ベイスターズの投手

パトリック・マホームズの父親、パット・マホームズは元プロ野球選手で、メジャーリーグで通算42勝をあげた投手である(パットは愛称で、フルネームは息子と同じパトリックだが、息子自身が父親と区別しやすくするために意図的にフルネームを使用している)。

日本の横浜ベイスターズでも2シーズン、プレーしたことがあるので覚えているファンもいるかもしれない。父親も投手ながら俊足で、当時の権藤博監督が代走として起用したこともある。マホームズは父親譲りの「投げて走れる能力」を存分に発揮し、父親とは別の世界でスターへの階段を今、早足で駆け上がっているのだ。

新しい時代の始まりの舞台として

仮にマホームズが今週末活躍し、スーパーボウルを勝つようなことがあれば、同世代のQBたちは黙ってはいないだろう。デショーン・ワトソン、ラマー・ジャクソン、ジョシュ・アレン。彼らはきっとすぐに、この大舞台へと辿り着くはずだ。

新しい時代の幕開けを告げるスーパーボウル。それがこの第54回大会になるのかもしれない。