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WBC侍ジャパン「4番・村上宗隆」は是か非か、栗山監督の決断は?

村上宗隆,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

14打数2安打7三振と大不振の村上

第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)に出場している日本代表「侍ジャパン」は16日に東京ドームで準々決勝イタリア戦に臨む。過去4大会は全て準決勝以上に進出しており、3大会ぶりの世界一に向けて決して負けるわけにはいかない。

クローザー候補だった栗林良吏(広島)が腰の張りで離脱し、源田壮亮(西武)が右手小指骨折で欠場するなどアクシデントもあるが、最大の懸念は4番・村上宗隆(ヤクルト)の不振だろう。

1次ラウンド4試合で20打席に立ち、14打数2安打7三振5四球1犠飛で、本塁打はなし、打点も2しか挙げていない。4試合とも4番で起用されているが、打順の組み換えはないのだろうか。

「#そろそろ打てや村上って言ってください」

今大会は1番ラーズ・ヌートバー(カージナルス)から切れ目のない打線で得点するシーンが多い。2番・近藤健介(ソフトバンク)、3番・大谷翔平(エンゼルス)も好調で、5番・吉田正尚(レッドソックス)は大谷とともに8打点を荒稼ぎしている。上位打線の成績は以下の通り。

1.ヌートバー 打率.429 0本 3打点
2.近藤健介 打率.467 1本 5打点
3.大谷翔平 打率.500 1本 8打点
4.村上宗隆 打率.143 0本 2打点
5.吉田正尚 打率.417 0本 8打点

1番から5番まで打率4割以上をマークしている中で、村上だけが明らかにへこんでいる。昨季、56本塁打を放ってヤクルト打線を引っ張っていたのが嘘のような不振だ。

村上は自身のインスタグラムで、今大会のメンバー入りしながらケガのため辞退した鈴木誠也(カブス)が村上のモノマネをしながら「顔を上げて頑張れ」と激励する動画を公開し、「すごく元気出ました。また16日から頑張ります!#そろそろ打てや村上って言ってください」と投稿。東京五輪で侍ジャパンの4番を打った先輩からの愛情あふれるメッセージに、心機一転を図りたい気持ちを明かした。

「そろそろ打てや村上って言ってください」というハッシュタグからは、自らにプレッシャーをかけたい胸の内も読み取れる。5打席連続本塁打を放った2022年8月2日の中日戦、日本人最多の56号を放った10月3日のシーズン最終戦、村上はいつもここ一番で打ってきた。

逆境での強さには自信があるのだろう。むしろ、打てなくても温かい目で見てくれる現状は物足りないのかも知れない。

福留が、イチローが、不振を振り払う劇打

栗山英樹監督は我慢するだろうか。現在の調子だけで判断するなら打順は変えるべきだろう。吉田を4番に上げれば流れを止めることなく大量得点の可能性も高まる。村上も打順を下げた方が発奮して、あるいは気楽に打てて結果につながる期待も持てる。

仮に所属チームなら主砲として育てるために我慢することも必要だ。しかし、WBCの準々決勝以降は負けたら終わりのトーナメント。世界一を目指す侍ジャパンとして何よりも「勝利」を優先する以上、手遅れになる前に早急な対策が求められる。

3月7日に行われたオリックスとの強化試合では6番に降格し、左中間スタンドに3ランを放り込んだ。試合後は「悔しい気持ちはもちろんある」と正直に吐露。普段から4番として強い責任を感じていることをうかがわせた。

だからこそ、仮に打順降格しても村上にとっては決して無駄にならない。深く刻まれた悔しさは史上最年少三冠王をさらに一回り成長させる、最高の「糧」となるはずだ。

2006年の第1回WBC準決勝では、不振でベンチスタートとなった福留孝介が代打決勝2ランを放ち、2009年の第2回WBC決勝では、それまで38打数8安打の打率.211と不振だったイチローが優勝を決めるタイムリーを放った。

「試練は乗り越えられる者にしか訪れない」と孟子は言った。村上にしか分からない苦しみを乗り越えた時、悩める主砲はきっと侍ジャパン不動の4番になっているだろう。

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