車椅子テニス発祥の国、アメリカが作った功績と現在地
車椅子テニスが競技スポーツとして産声を上げたのは1976年、アメリカでのことだ。競技を世界中に普及させた功労者のブラッド・パークス氏は、1992年バルセロナパラリンピックの車椅子テニス男子ダブルスで金メダルを獲得した元選手で、国際車いすテニス連盟の初代会長でもある。
車椅子テニス発祥国アメリカだが、1990年代以降は他国が急速に力をつけたこともあり、男女ともに現在トップ選手といえるプレーヤーが現れていない。4大大会の1つ全米オープンでも、男女では1993年にランディ・スノー選手が優勝してからアメリカ人選手による戴冠は途切れている。
しかし、クァードクラスでは デビッド・ワグナー選手が現在でも際立った成績を残し続けている。
現在の車椅子テニスをけん引している強豪国オランダ
1980年代後半頃から優秀な選手を輩出しているのがオランダだ。全米オープンで初めてアメリカ人以外の優勝者となった女子シングルスのシャンタル・ファンディレンドンク選手や、シドニー・アテネの両パラリンピックで金メダルに輝いたロビン・アマラーン選手、長らく世界女王の座に君臨しているエステル・フェルヘール選手など、世界的な名選手を数多く生み出している。
1994年に始まった車椅子テニスの世界選手権(マスターズ)は自国開催ということもあり、優勝者にはオランダ人選手の名が連なっている。特に女子はフェルヘール選手の14連覇など圧倒的で、2013年に上地結衣選手が優勝するまで19年の間タイトルを独占してきた。
女子では2016年のリオパラリンピックにおいてもシングルス、ダブルス共にオランダ勢が金・銀を獲得、その強さを見せつけている。
ここ数年で躍進を遂げたイギリスに黄金時代到来の予感
リオパラリンピックの男子ではイギリス人選手が大活躍した。その筆頭となるのがゴードン・リード選手。シングルスで金、ダブルスで銀メダルに輝いている。このダブルスではゴードン選手が当時24歳、ペアを組んだアルフィー・ヒューイット選手が18歳と若いコンビだった。この両名に加え若い選手が目立つイギリスは黄金時代の到来を予感させる。
自国開催の全英オープン、優勝者は長らく外国選手が占めていた。しかし2015年大会では男子ダブルスのゴードン・ヒューイット組、女子シングルスのジョーダン・ホワイリー選手が初優勝して注目を集めている。
一方、クァードではピーター・ノーフォーク選手の功績をアンディ・ラプソーン選手、ジェミー・バーデキン選手などが受け継いでいる。
強豪国として知られるオーストラリアは、次世代の台頭が鍵
世界的な選手の輩出と4大大会の開催地には密接な関係があるといえよう。全豪オープンが開催されるオーストラリアにも数々の名選手が生まれた。
デビッド・ホール選手は1990年代後半?2000年代を代表するプレーヤーで、全豪では過去9度の優勝を誇る。男子シングルスにおいて全英の初代王者であり、アメリカ人以外で初めて全米を制覇した選手でもある。シドニーパラリンピックのシングルスでは金メダルに輝いた。
同時期にはダニエラ・ディトーロ選手も世界で活躍した。全豪では通算10回、全英と全米で各2回の優勝があり、ジャパンオープンも5回制覇している。
この両名を筆頭に強豪国として知られるオーストラリアだが、2010年代はクァードのディラン・オルコット選手が孤軍奮闘している状態。次世代を担う選手の台頭が待たれる。
世界の強豪に挑み続けるアジアの盟主、日本
世界の強豪と渡り合ってきた歴史を持つ日本だが、その実績が際立ったのは国枝慎吾選手が登場した2000年代以降だ。2004年のアテネパラリンピックは斎田悟司選手とダブルスを組み優勝、2008年北京と2012年ロンドン大会ではシングルスで優勝と、3大会連続の金メダリストに輝いた偉業の持ち主だ。4大大会のグランドスラムや世界選手権3連覇などの金字塔を打ち立てた。
女子では現在22歳にしてエース格となった上地結衣選手がいる。国枝選手と同じく4大大会のグランドスラムを達成した世界屈指の存在だ。
これら偉大な選手たちの背中を追う若手プレーヤーにも期待が高まる。男子では1989年生まれの三木拓也選手や1992年生まれの鈴木康平選手、女子では先述の上地選手に加え、1995年生まれの大谷桃子選手にも注目が集まっている。
まとめ
この他にも、男子の世界1位ステファン・ウデ選手を擁するフランスや、リオパラリンピック銅メダリストのヨアキム・ジェラール選手が有名なベルギー、若手のグスタボ・フェルナンデス選手が率いるアルゼンチンなど、車椅子テニス界には魅力溢れる強豪国が散らばっている。