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近畿大学バレーボール部「Vの使者」はコンゴ人留学生、バスケとの二刀流捨てて優勝狙う

2022 9/1 11:00大塚淳史
近畿大学のフランシス・ムヤカバング,筆者提供
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筆者提供

関西大学バレー秋季リーグ1部9月10日開幕

バレーボール男子・関西大学秋季リーグ1部が、9月10日から始まる。4月、5月にあった春季リーグでは、優勝候補筆頭だった近畿大学が新型コロナ感染の影響で1試合不戦敗になるなどの影響もあり、まさかの3位に終わった。

秋季リーグの優勝に向け、巻き返しを図るチームの鍵を握る1人が、コンゴ人留学生のフランシス・ムヤカバング(3年)だ。フランシスは近畿大学入学と同時に、バスケットボール部とバレーボール部の“二刀流”で活躍し注目されてきた。

しかし、今春からフランシスはバレーの“一刀流”へと変え、バレーボーラーとして急成長している。秋季リーグで優勝を奪還できるか、さらにはインカレでの優勝も目指すためには、フランシスがチームの大黒柱となっていくことが必須だろう。

「将来はVリーグに行きたい」と話すフランシスが刺激を受けたのが、今年4月末から5月頭にあった黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会(黒鷲旗)だった。

最高打点365センチ、V1相手に臆せずプレー

過去2大会はコロナの影響で中止となっていた黒鷲旗が2019年以来開催された。高校や大学の強豪校、Vリーグのチームが一同に介して開かれる黒鷲旗は、学生チームにとっては、トップカテゴリーであるVリーグにどのくらい通用するのかという腕試しの場ともなっている。

公式の場で上のレベルのチームを相手にすることで、大学や高校のチームが刺激を受けて選手たちが成長するきっかけになる。近畿大学は本来であれば、中止になった黒鷲旗に出場する予定だった。

ようやく出場となった近畿大学は、予選リーグの相手がウルフドッグス名古屋、FC東京(当時、現・東京グレートベアーズ)、VC長野トライデンツのV1(1部)の3チームだった。結果は3戦3敗だったが、一方で、フランシスは明らかにV1相手でも通用していた。

ミドルブロッカーのフランシスは、身長206センチ、最高打点は365センチ(本人談)。V1でもこの高さを持つ選手はなかなかいない。持ち前のパワーの乗ったスパイクは、V1チームのブロック相手であろうが何度も決まり、そのたびにフランシスは感情を爆発させていた。

打点の高い近畿大学のフランシス・ムヤカバング

筆者提供


また、腕のリーチの長さに加えて肩幅のあるブロックでは、フランシスと対峙した相手アタッカーがかなり嫌がっていた。

3試合だけとはいえ、国内トップリーグの3チームと本気の試合ができたことは、フランシスにバレーボーラーとして成長するための刺激になったという。

「黒鷲旗で初めてVリーグのチームと試合をし、光山(秀行)監督から、めちゃアドバイスをもらった。『Vリーグは一番レベルが高い。自分でやれることをやってみて、サーブ、ブロック、アタックを普通にやってほしい』と言われた。もし怖がりすぎると何もできない。Vリーグのチームはサーブとか強いし、パスやトスとかも速い。試合で学んでいった。どうやって打つと決まるかとか学ぶことができた。十分にできると思った。自信を持つことができた」

高いレベルの相手との試合経験は、自分に足りないものが何か、強みは何かというのを、自ら知ることができる。フランシスも改めて、それを確認できた。

「スパイクは十分通用する。今の課題はブロックです。横のステップとか、手の出し方とかを取り組んでいる」

ブロックする近畿大学のフランシス・ムヤカバング

筆者提供


黒鷲旗以降にも刺激を受ける機会があった。7月に大阪であった国際大会のネーションズリーグで、近畿大学は模擬チームとして試合会場で紅白戦を行い、さらにはアメリカ対フランスを観戦した。

「一番高いレベルの試合で、見ていてめちゃおもしろかった。ほんま良いレベル。特に目を引いたのが、フランスのミドルブロッカー、バルテレミ・シヌニエズ。動き方やブロックの手の出し方がめちゃすごくて、良いブロッカーと思った」

大阪弁を少し交えながら感想を話してくれた。この体験や黒鷲旗での経験は、バレーボーラーとして高い意識を保たせてくれる。

「ずっと普通のレベルを見ていると、高いレベルの相手だとうまくできない。高いレベルで考えてれば、ずっと上を見ていることで、(大学での試合で)余裕を持ってプレーができます」

延岡学園高時代はバスケのみ、今年からバレーボール1本に

フランシスは2年前に、バスケとの“二刀流”で話題を呼んでいたが、今年からはバスケ部の練習や試合には参加せず、バレーに打ち込んでいる。春季リーグ3位から再びリーグ優勝を奪還するべく練習に励む。

「バレーはずっとおもしろい。(コンゴで)中学の時にバレーとバスケの両方をやっていた。宮崎の延岡学園高校に来て、バスケだけをやりました。その後、大学に入って最初は両方をやっていたけど、今はバスケをやらずにバレーをめちゃ頑張っている。春季リーグや西日本インカレでは、ミスが多くて思うような結果にはならなかった。でも、練習してミスをなくしていけば、秋季リーグ戦で絶対に優勝できる」

コロナ禍の2年半は母国に戻れず、5人兄弟の末っ子であるフランシスを心配した親や兄達から頻繁に「元気?」と電話がかかってきたそうだ。この8月には、コロナになって以降初めて、キンシャサに里帰りをしている。

前回、高校時代に里帰りした時は「宮崎➝羽田➝成田➝中国➝エチオピア➝コンゴ」と2日かけたくらい一時帰国するにも大変だが、気持ちの面でリフレッシュしてリーグ戦に臨むことができる。

将来的にはVリーグでのプレーを夢見、さらには日本国籍の取得も考えているというフランシス。二刀流から一刀流になったことで、どんなプレーを見せてくれるのか。秋季リーグでの活躍が楽しみだ。

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