勝負を決めたのは主将
50回目の節目を迎えた全日本大学駅伝(11月4日)は青山学院大の2年ぶり2度目の優勝で幕を閉じた。これまで7度の出場で優勝1度と、青山学院大にとって「鬼門」だった全日本で圧勝し、史上初、2度目の学生駅伝三冠に王手をかけた。
8区間106.8キロを5時間13分11秒で走り抜き、2位東海大に2分20秒という大差をつけての勝利は、記録以上に他校をねじ伏せ、力の差を見せつけるものだった。今大会は区間の距離変更があり、17.6キロと長距離区間になった7区における展開が、青山学院大にとっては願ってもない形となった。
この区間を任されたのは、2年前のMVPである主将の森田歩希(4年)。外さない走りができる上に長い距離にはめっぽう強く、過去の3大駅伝では区間賞と区間2位をそれぞれ2度獲得している。青山学院大の原晋監督は、レース当日に3人のメンバー変更を行った。その1人がこの7区の森田だ。満を持してエースを配置した区間で、勝負を決める瞬間がやってきた。
森田がたすきを受けた時、トップの東海大とは11秒差の2位だった。1万メートルの自己記録だけを見れば、東海大7区の湊谷春紀(4年)の方が3秒ほど速い。だが、17.6キロの長丁場で力の差は歴然だった。
森田は冷静に3キロ付近で湊谷に追いつくと、その後は勝機をうかがうように並走を続けた。動いたのは、「(湊谷が)呼吸も動きもきつそうだった」と感じた9キロ付近。森田は一気にギアを上げ、約1キロで湊谷と20秒ほどの差を広げた。
森田の快走は最終8区へたすきをつなぐ第7中継点まで続き、2位東海大と1分58秒の差をつけた。アンカーの梶谷瑠哉は1万メートルで28分43秒76のスピードを持ちながら、ハーフマラソンの日本学生選手権で優勝したスタミナもある。一方の東海大のアンカー湯沢舜は1万メートルの自己ベストが29分13秒44。森田がアンカーにたすきを渡した時点で、雌雄はほぼ決した。
事実、梶谷はさらに東海大と差を広げ、笑顔でゴールテープを切り、今大会のMVPには、逆転優勝の立役者となった森田が選ばれた。