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駒大が3冠へ駆け上がるか、青山学院大の復権なるか、10日に出雲駅伝

2021 10/9 06:00鰐淵恭市
イメージ画像,ⒸPavel1964/Shutterstock.com
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学生3大駅伝の幕開け、各校の実力は?

学生3大駅伝の幕開けとなる第33回出雲駅伝が10月10日に開催される。

昨年度は全日本、箱根の2冠を達成した駒大が悲願の3冠に向けて、最初のタイトルを手に入れるのか。学生駅伝界を牽引する青山学院大が復権を果たすのか。早大、東洋大、東海大といった実力校が巻き返してくるのか。10人のエントリーメンバーから、各校の実力を探る。

2枚看板に加え「+α」も育ってきた駒大

出雲は通称「スピード駅伝」。6区間45.1キロで争われるが、これは箱根駅伝の2区間分の距離しかない。耐久力が問われる箱根に対し、出雲は文字通りスピードが重視される大会であり、箱根とは別物と考えた方がいい。だからこそ、学生駅伝3冠は難しいのである。

過去、3冠に輝いたのは、1990年度の大東大、2000年度の順大、2010年度の早大、2016年度の青山学院大の4校しかない。今年度、5校目に最も近い存在と言われているのが駒大だ。

駒大の強みは何と言っても「2枚看板」の存在。1人は田澤廉だ。言わずと知れた現在の学生最強ランナー。昨年は全日本大学駅伝のアンカーで三つ巴の戦いを制し、6年ぶりの優勝に導いた。

今季は3年生ながら主将の重責を担い、1万メートルでは日本選手の学生歴代2位となる27分39秒21をマーク。出雲では2番目に長い3区(8.5キロ)で序盤に流れを作るのか、最長の6区(10.2キロ)で勝負を決めにかかるのか、その起用法に注目が集まる。

もう1人は2年生の鈴木芽吹だ。昨年度は全日本、箱根を走り、経験十分。今季は1万メートルで田澤に次いで日本選手の学生歴代3位となる27分41秒68をマーク。田澤との「2枚看板」に成長した。

今年の3大駅伝に向けては「最低でも区間賞」と言うほど、強気である。鈴木と田澤で3区と6区のどちらかを走るのではないかと思われる。

今季の駒大はこの2枚看板に加え「+α」の存在がチームに厚みを加えている。昨年の3大駅伝に出場経験のない2年生の唐澤拓海が関東インカレ2部の5000メートル、1万メートルで日本選手トップの力をつけた。出雲のエントリーメンバーにも名を連ねており、3大駅伝デビューが濃厚だ。

そのほか、箱根の優勝メンバーである佃康平(4年)、山野力(3年)、花尾恭輔(2年)もエントリーしている。先々も見据えて1年生の篠原倖太朗もメンバーに入っているが、大八木弘明監督は「3冠を目指す上で、出雲でつまずくわけにはいかない」と話しており、ベストメンバーで望んでくるだろう。

選手層の厚い青山学院大

過去5年で、出雲2度、全日本2度、箱根3度の優勝を誇る青山学院大。昨年度は全日本、箱根とも4位に終わり、7季ぶりに無冠に終わった。

今季の青山学院大の強みは選手層にある。5000メートルで「スピードがある」選手の一つの目安とされる13分台をマークしている選手が20人以上いる。誰が出ても勝負ができるチームになっている。

今回のエントリー10人も全て13分台の記録を持つ選手。エントリー全員が13分台なのは、青山学院大と駒大だけだ。

核となる選手は3年生の近藤幸太郎だ。5000メートルで13分34秒88、1万メートルで28分10秒50と、2種目で青山学院大記録を持つ。

過去、強い青山学院大には、神野大地や田村和希ら、絶対的なエースがいた。近藤が先輩たちのような存在に成長すれば、青山学院大の復権も見えてくる。

「27分台トリオ」の早大、新しい力の東洋大、東海大

駒大、青山学院大を追うのはどこだろう。

「27分台トリオ」をそろえる早大はその一つだ。太田直希、中谷雄飛(ともに4年)、井川龍人(3年)の3人が、1万メートルでトップ選手の証しとも言える27分台をマーク。この3人が長い区間を走ることになるだろう。つなぎの区間をまとめれば、11年ぶりの出雲優勝も見えてくる。

毎年、3大駅伝の上位候補に挙がる東洋大、東海大は、新しい力にかけるメンバー構成となった。2015年の全日本が3大駅伝最後の優勝となっている東洋大は3年生5人、2年生3人、1年生2人がエントリー。来年度を見据えたメンバーとも言える。

特に注目なのは、群馬・東京農大二高時代に5000メートルで13分34秒74の高校記録(当時)をマークした1年生の石田洸介だ。将来の日本を背負う逸材の学生駅伝デビューとなるかもしれない。

主力が卒業した東海大も4年生は2人だけで、2年生が5人エントリーしている。若いメンバーだが、5000メートルのタイムでは13分台が7人いる。核となる選手はいないものの、スピードのある選手は育っている。波に乗れば、面白い存在である。

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