2022年初戦で同志社大に3点差勝利
何百、何千の言葉を並べるより、その1プレーは説得力があった。京大アメフト部にとって、2022年初戦となった同志社大との交流戦「今出川ボウル」(4月23日)。試合の中盤に、エースQB泉岳斗(3年)がボールをキャリーし、密集を抜け出す場面が訪れた。
行く手に立ちはだかる相手ディフェンス。調整段階の春、そして代わりのきかないポジション特性を考えれば、タックルをかわすか、倒れ込んでもいいはずなのに、背番号17は自分から突進して、守備陣をはじき飛ばした。チーム全員に送った強烈なメッセージ。今季の京大が進むべき道を示した一瞬だった。
「あそこまで進んで、自分が弱いプレーをしてはいけない。一番力強いプレーをしなくては、と思って、ああいう形になった」
昨秋敗れた借りを3点差勝利で返した試合後、泉は「確信犯」で鼓舞したことを認めた。小5から中2の4月まで米ペンシルベニア州で暮らした帰国子女。現地でアメフトを始め、運動能力とセンスを買われ、司令塔まで任された。競技未経験者が大部分を占める京大では、経験値も、知識も随一。1年生からQBを託され、名門再建を担う中心的存在になるはずだったのに、思うようにならない現状がもどかしい。
「(入部してから)ここまで、あっという間だった。1年生の時は何もできず、2年生はいろんなことがありすぎた」
コロナ禍のため、完全なリーグ戦開催を見送られた過去2シーズン。昨年は2014年以来、創部2度目となる入れ替え戦に回るなど、最後まで苦しんだ。いや、低迷期はここ数年の話ではない。1980年代は関学大と「2強」、立命大が台頭した90年代は「3強」の一翼を担った京大も、関西1部リーグを制したのは1996年が最後。学生日本一のタイトルも、その年から遠ざかっている。
東大に次ぐ偏差値を誇る全国屈指の難関国立大。IQ軍団がスポーツでも日本の頂点を極めた現象は「奇跡」とまで称された。「奇跡」のフレーズを受け入れ、昔を懐かしんで終わってしまうのか、それとも再び立ち上がり、黄金時代が一過性の「奇跡」でなかったことを証明するのか。どちらの道を選ぶにしても、今季が分水嶺となるのは間違いない。