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中小クラブがビッグクラブの子会社・下請け業者化 世界のサッカー潮流

2020 1/3 11:00Takuya Nagata
サッカープレミアリーグ_マンチェスター・ユナイテッド_スタジアム_オールド・トラフォード
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Ⓒゲッティイメージズ

大規模な海外資本の流入で沸き立つ欧州サッカー

欧州サッカー連盟(UEFA)によると、2008年から2017年に欧州55カ国のうち、20カ国の1部リーグで少なくとも1クラブが外国資本のオーナーだという。海外からの投資が盛んになっており、その中でも、特に多いのがイングランドだ。

元々、世界有数の金融センターで、経済・経営のノウハウが集積している。サッカー文化については伝統を重んじる姿勢を崩さない一方で、その経営面に関しては非常にオープンで、資金力をもたらすなら外資や外国人オーナーを積極的に受け入れてきた。

欧州クラブが世界中の有力選手を獲得、クラブ格差は拡大

2008年から2017年、欧州1部クラブは移籍金の39%を国内、61%を国際移籍に支払った。そのうちの8%が欧州外の国だった。獲得選手の国籍は、ブラジルを筆頭に世界中に分散しており、欧州主要リーグは、巨額の移籍金で世界中からタレントをかき集めている。

また、2008年から2017年までに支払われた世界中の移籍金の71%が欧州5大リーグのクラブによるもので、とりわけイングランド・プレミアリーグが26%で突出している。5大リーグの移籍金の割合は、増加傾向にあり近年は約75%。この5大リーグの2部も約5%を占めており、世界の移籍金の払い手の8割が5カ国に集中している。

移籍金は、2014-15シーズンに32億ユーロ(約3900億円)だったのが、2017-18シーズンには64億ユーロ(約7800億円)と、3年で2倍に高騰している。

これは、放映権料による収入の増加といった好調な収益の伸びを背景にしている。一方で放映権収入は、イングランド・プレミアリーグ等の主要リーグに集中しており、リーグ間で格差が拡大している。

世界的に最も人気のある12クラブのスポンサー・商業収入は、2008年からの10年間で3倍になった。この間、UEFAからの分配金も3倍になっているが、この傾斜がビッグクラブに偏り過ぎており、格差を拡大させているという指摘もある。

中小クラブは優勝よりも、高騰する移籍金目当てに選手売却

今のサッカーに関するヒト・カネ・データは、欧州に集約されていく。世界のサッカーの首都が欧州にあることに異論を唱える者は、ほとんどいないだろう。とりわけ、経済的にはイングランド・プレミアリーグは欧州5大リーグでも抜きん出ている。

サッカー界におけるシティ・フットボール・クラブ(CFG)の動きは、目を見張るものがあるが、それ以前にも欧州主要クラブは、国をまたいだネットワークづくりを進めていた。

高騰する放映権やスポンサー契約料で潤ったビッグクラブが、高額の年俸を有力選手に支払うのは勿論だが、獲得のための移籍金にも多くの予算を割くようになった。また、有望な選手をまだ芽が出る前に買い取り、保有権を掌握しつつ小規模なクラブに貸し出して選手を育てるというモデルも確立された。さらにはビッグクラブが中小クラブの株式を保有し影響力を増大させて、そこに育成目的で自由に選手を貸し出しているケースもある。

小さなクラブは、欧州チャンピオンズリーグなどでの上位進出といったチームの強さや人気ではなく、有望な選手を育てて、ビッグクラブに売却することで活路を見出そうとしている。まるでメーカーに部品を納入する下請製造業者や子会社のようにも感じてしまう。

現在のサッカー界には、ビッグクラブを頂点にした、階層化されたエコシステムが形成されている。このトレンドは、今後もしばらく続いていくだろう。