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武者修行中のマジョルカ・久保建英、広がる複数の可能性

2020 1/2 06:00桜井恒ニ
バルサ戦で活躍を見せた久保建英
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Ⓒゲッティイメージズ

ラ・リーガで通用する実力を証明

レアル・マドリード(以下、レアル)からマジョルカへレンタル移籍した久保建英(日本/マジョルカ)。試合で存在感が増しつつあり、ラ・リーガでは11月3日のバリャドリード戦から7試合連続で先発。11月10日のビリャレアル戦では3得点に絡む活躍を見せ(1ゴール)、12月7日のバルセロナ戦ではリオネル・メッシ(アルゼンチン/バルセロナ)を相手に股抜きのドリブルを披露。ラ・リーガで通用することをピッチで証明し、先発フル出場の機会も目立つ。

自身の存在価値を高め、すっかりラ・リーガに適応しつつある久保は今冬、あるいは来夏に再び移籍する可能性が浮上している。

出場時間延ばすも歯がゆい現状、マジョルカ降格危機

久保の移籍話が再燃する理由の一つは、マジョルカのチーム力にある。全体的にパスの精度が悪く、攻撃でフィニッシュまでいけない場面が多々ある。当然、ボール支配率は低い。内弁慶の一面も持ち合わせ、敵地では未だ0勝(1引き分け)だ。

選手間のつなぐ意識も乏しい。結果、攻撃の起点である久保は2、3人に囲まれる場面が多く、得意のドリブルを生かし切れない。 味方のサポートがないのも苦しい。12月21日のセビージャ戦では、対峙したレアルからレンタル移籍中のDFセルヒオ・レギロン(スペイン/セビージャ)を抜いて決定的なパスを送るも、味方のラゴ・ジュニオール(コートジボワール/マジョルカ)がシュートミスを犯した。

中心人物であるボランチのサルバ・セビージャ(スペイン/マジョルカ)は視野が狭くてロングパスによるサイドチェンジが少なく、展開力に欠ける。35歳とフィジカル面の衰えも隠せず、最近は一番早く交代させられる。

マジョルカが今季最もいい試合をしたのは、セビージャが累積警告で出場停止になって久保を中心に攻撃が噛み合い、3-1で勝利した11月10日のビジャレアル戦だった。 2017年6月から指揮するビセンテ・モレノ監督は、決断ができない。1部昇格の功労者であるこのベテランをスタメンから外せば、今まで築き上げたチームの否定につながりかねない。レンタルで在籍する久保中心のチーム作りにシフトすることを意味する。

仮にセビージャを外して久保中心のチーム作りを進めても、久保はいつ別のクラブへ移籍するか分からない。久保がいなくなってセビージャをスタメン復帰させた場合、プライドを傷つけられたセビージャのモチベーションが気になる。モレノ監督は、現時点で久保とセビージャを両方起用するのが、チーム内政治の最適解だと見ている節がある。

しかし今のように負け続ければ、更迭もあり得る。1部昇格の功労者たちは2部降格の戦犯になりかねない状況だが、上層部も動く気配はまだない。久保は、マジョルカ全体の悪循環に絡め取られている。

マジョルカが一部残留を果たせば、久保も残る可能性がある。ただしレアルの立場から見れば、残留させるだけの好材料がないかぎり、久保を長くマジョルカにとどめる理由はないだろう。

ウーデゴールと玉突き移籍の可能性も

そこで考えられるのが、他クラブへのレンタル移籍だ。その際は、久保の成長をより促すべく(真価を見極めるべく)、マジョルカ以上に戦力が整った4大リーグのクラブへ移籍するだろう。

有力視される説の一つが、同じくレアルからレンタル移籍しているMFマルティン・ウーデゴール(ノルウェー/レアル・ソシエダ)が絡んだ玉突き移籍。来夏にウーデゴールがレアルに復帰し、ウーデゴールの空いた穴を埋めるべく、久保がレアル・ソシエダ(以下、ソシエダ)に加入するプランだ。

21歳のウーデゴールは今季、16試合に出場して4得点をマーク。バルセロナ戦でも優れたパフォーマンスを披露するなどして、久保以上に評価を高めている。独サッカーサイト「transfer markt」では市場価値が高騰し、5000万ユーロ(約60億5000万円)に達している。来夏のレアル復帰は十分考えられる。

またソシエダはマジョルカより順位が高く、スペイン代表にしてエースの10番、ミケル・オヤルサバル(スペイン/レアル・ソシエダ)らとの共演は、久保のパフォーマンスを向上させるだろう。

スペインメディア「diario Mardista」によれば、レアルは久保を移籍させる条件として、ソシエダにヨーロッパリーグ(EL)出場を望んでいる模様。12月22日の2019年最終節終了時点でリーガ5位につけており、順調にいけば条件を満たすと思われる。