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イングランド・プレミアの移籍期限は不利、クラブ指揮官が猛反発

2019 9/1 11:00Takuya Nagata
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開幕前にチーム編成完了期すも、他リーグからの引き抜き対策なく

欧州サッカー2019-2020シーズンの夏の移籍ウィンドーが閉まる期限は、リーグによって違いがある。主要リーグでは、スペイン・プリメーラ、ドイツ・ブンデスリーガ、イタリア・セリエA、フランス・リーグ1は、9月2日が移籍期限だった一方で、イングランド・プレミアリーグの移籍期限は、開幕の前日である8月8日だった。

これは、開幕前にチーム編成に決着をつけてシーズンに臨もうという意図で、全クラブの多数決で決定したものだ。反対票を投じたのは、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、ワトフォード、クリスタル・パレス、スウォンジー・シティの4クラブのみで、バーンリーが棄権し賛成したのは14クラブだった。

しかし、いざ実行すると、トッテナム・ホットスパーのマウリシオ・ポチェッティーノ監督が声高に反対を訴えた。「大きな間違いだ。その決定には同意しなかったが、それがその時、全クラブにとってベストだと考えられた。しかしレヴィ(トッテナム会長)や多くの人々は、それが間違いだということに気が付いたはずだ。欧州のリーグと同じ日に戻すべきだ。ヨーロッパ・リーグや欧州チャンピオンズリーグで戦う際には、非常に大きい問題になる。ウィンドー最後の3週間、欧州のリーグは、イングランドのクラブを不安定化させることが出来て、欧州大陸側クラブにアドバンテージを与える。私は納得がいかない。常識から逸脱しており、プレミアリーグと話して、早急に戻すべきだ」

猛反発の理由は、デンマーク代表MFクリスティアン・エリクセンが、引き抜かれる可能性がありながら、その代わりの選手を獲得することが1月に再び移籍ウィンドーが解禁になるまで不可能な状況に置かれたからだ。

リヴァプールのユルゲン・クロップ監督は「移籍期限はいつでもいいが、同時に閉じなければならない。開幕前に閉じるのはいい案だが、他のリーグが閉じなければ、筋が通らない」と同調している。

エヴァートンFCのマルコ・シウバ監督「マウリシオ(ポチェッティーノ)に全く同感。プレミアリーグ開幕前に市場を閉じるという決断は理解するが、他国の市場がオープンになっていては意味がない。ほぼ全ての国でウィンドーが同じ日に閉じて、それがリーグ開幕の前ならばベストだ。しかし、開幕前に閉じても、他国に選手を引き抜かれたら意味がない」

これを受けて、プレミアリーグは、9月にも話し合いを行うことになった。FIFAは、移籍ウィンドーの期限を統一にすることを理想と考えているとされるが、今のところ実現していない。

日本への影響は最小限だが、この議論には注目すべき理由あり

これら欧州各国リーグの移籍期限は、もちろん日本人選手にも適用されるが、これはどちらかというと選手の問題ではなく、クラブに影響のある事だろう。Jリーグの夏のウィンドーは、プレミアリーグに移籍する選手の絶対数が少ないため、影響はほとんどない。

しかし、1カ月もずれていない移籍期限に対して、欧州大陸で実績を積んでプレミアリーグで指揮する外国籍監督(マウリシオ・ポチェッティーノ=アルゼンチン、ユルゲン・クロップ=ドイツ、マルコ・シウバ=ポルトガル)がそろって異論を唱えていることは、注目に値する。

JリーグでもFIFAの指針に従い、1年に2回移籍ウィンドーを設けている。今夏は、2019年7月19日(金)~8月16日(金)で欧州のウィンドーと重なる時期はあるが、全く同じではない。これが問題を生じているという議論は今まで見られない。極東という地理的に離れた場所にあり、予算規模もかなり異なるため、欧州内の熾烈な選手獲得競争に比較的、巻き込まれていないことがその理由だろう。

世界情勢や日本人選手の進化踏まえ、Jリーグ春秋・秋春シーズンの建設的な議論を

日本で移籍に関する議論といえば、「春秋・秋春シーズン論争」がある。FIFAは、世界中のリーグを欧州シーズンにあわせたい意向だが実現していない。欧州主要リーグにシーズンをあわせることで、日本人選手の海外移籍が促進され、国際試合スケジュールも組みやすいことから、日本サッカー協会は、前向きだと言われている。

一方で、Jリーグ側は、非常に消極的だ。冬季の雪国の運営の難しさ、人気選手流出の懸念、学校卒業時期とも一致しているといった理由があるだろう。

現状、南米のシーズンと一致しており、選手を獲得しやすいというのはあるが、最近はアンドレス・イニエスタ、フェルナンド・トーレスといった欧州のビッグネームがJリーグ入りしており、欧州諸国のリーグからの外国籍選手獲得には、秋春シーズン移行の方が有利だ。

Jリーグでは、大型放映権契約もあり、より魅力的な試合にすべく、大物外国籍選手を含む大型補強が増える様な取り組みが行われている。

また、日本人選手も、海外に出た時に活躍する選手が増えており、本当に外国籍選手のようになってきている。中島翔哉は、ポルトガルの中堅クラブに移籍後、中東カタールリーグを経て、ポルトというビッグクラブに入団した。まるでブラジル人の様な奇想天外な移籍経路であり、日本人選手が移籍市場で存在感をもつようになったことを示している例だろう。

こういった欧州情勢や日本人選手の進歩を踏まえた上で今後、建設的な「春秋・秋春シーズン」の議論を期待したい。

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