近代スポーツ発祥の地、英国ではベッティングも盛ん
サッカー、ラグビー、クリケットといった、世界に広まった多くの近代スポーツの発祥の地である英国。産業革命を経て経済的な繁栄を謳歌し、長時間の労働から解放された多くの人々が余暇を楽しむようになった。その過程では余暇を過ごすため様々な娯楽が発展、生み出されていった。
その中の一つとして興業としてのスポーツも発展し、同時に試合結果にお金を賭けるベッティングも世界に先駆けて普及した。
IT技術の進化にともないオッズを定めるための分析技術も高度になり、今では日本でも英国のブックメーカーのオッズが、サッカーワールドカップの際にニュース等で取り上げられる。オッズの差が戦力の差と言うわけだ。
過去には違法だった時代もあったが、現在の英国では賭博は基準を満たしている限り合法だ。
英国に広く普及するギャンブル、「1000人に1店舗」「オンラインは39%」
英国のギャンブルを規制・監督するギャンブリング・コミッションによると、英国のギャンブルの年間(2017年10月~2018年9月)の総収益は、145億ポンド(約1885億円)で、その内訳は次の通りだ。
【英国のギャンブルの年間収益の内訳】
■総収益:145億ポンド(約1885億円)
├カジノ、ベッティング、ビンゴ(リモート):38.8%
├ベッティング(店舗):22.1%
├ナショナル・ロータリー(宝くじ):20.6%
├カジノ(店舗):7.4%
├アーケード(店舗):2.9%
├ビンゴ(店舗):4.7%
└ソサエティ・ロータリー(宝くじ):3.6%
英国内の民間の賭博施設は2018年9月時点で10,714カ所あり、その他に公営の賭博施設は52,292カ所ある。これは、日本のコンビニ店舗数5.5万店舗よりも多く、約1,000人に対して1カ所ある計算だ。この他にも、上述の通り、オンラインのシェアが38.8%あり、手軽に賭博が出来るようになっている。
自殺とギャンブルの関連を指摘する調査結果も
ギャンブリング・コミッションは調査で、ギャンブルと自殺(願望や未遂含む)に関連性がある事を突き止めた。借金やストレスなどで問題を抱えたギャンブラーの19%が過去1年以内に自殺について考えたことがあるという。
問題を抱えたギャンブラ―の5%が過去1年以内に自殺を図ったことが分かった。また、過去1年以内に自殺を図った人の5%が、問題を抱えたギャンブラ―だということも分かった。
これらのデータは、ギャンブルが必ず人を自殺に導くということではないが、問題を抱えたギャンブラ―への心理的ケアが必要であるということを示唆している。
英国には、43万人以上の人がギャンブルの問題を抱えており、市民は危機感を募らせているという。
ギャンブル広告は自粛モード、未成年への影響懸念
このような危機意識の高まりを受けて、英国の複数主要ブックメーカーは、競馬といった例外を除き試合中継で広告を流さないことに合意。法律で禁止はされていないが、未成年者への影響を懸念する声に配慮し、自主規制をかけた。
ギャンブル関連のTV広告は、年間2億ポンド(約260億円)といわれ、TV局にとっては痛手だが、一般市民には支持する声も多い。
オンライン広告に関しても、18歳未満の目に触れないようにすることが求められている。また、子供に人気があったり子供が利用することを想定したウェブサイトにも広告を掲載してはならず、子供に影響力のある有名人や25歳未満の人物を広告に起用することも許されない。これにより、多くのサッカー選手は、ギャンブル関係の広告に出演できなくなった。
ただ、クラブのスポンサーとして、ユニフォームに広告を掲載することは規制されておらず、完全に排除できたわけではない。ちなみにJリーグでは規定にないものの、パチンコや消費者金融の広告掲載は原則としてクラブ側で自粛するように求められている。
イングランド・プレミアリーグという世界屈指のリーグをつくった英国。そこでは、多くの大手ブックメーカーも生まれた。民間セクターながら、政府の財源にも大きく貢献している。世界的にみてギャンブル先進国の英国では、常に最新の状況に注意を払いながら規制や自粛を行い、バランスをとる努力がなされているようだ。