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元「敗軍の将」モイーズ監督率いるウェストハムが起こすプレミア下克上

2021 12/8 06:00中島雅淑
ウェストハムのデイビッド・モイーズ監督とマイケル・アントニオ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

FA杯制覇から40年以上のウェストハムが進撃4位

今シーズンのプレミアリーグで異変が起きている。15節を終えた順位表で、マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシーに次ぐCL出場圏内の4位につけているのがウェストハムだ。

リーグ過去最高成績は98-99シーズンに記録した5位で、最後にFA杯を制したのはもう40年以上前という東ロンドンのクラブに何が起きているのか。

チームを率いるのは3年目を迎えるデイビッド・モイーズ監督だ。以前にも同クラブを率いていた経験のあるモイーズは、かつてマンチェスターの赤いチームで事実上の解任という苦い思いをした後、スペインなどで地道にキャリアを積んできた。

昨シーズンにはリーグ6位でフィニッシュし、EL出場権を獲得すると、今季も11節でリバプール、15節でチェルシーを破り、ELでもグループステージを突破。プレミアリーグ最大の驚きを提供している。

ビッグクラブでは失態を演じたが、自身の名を挙げたエバートンでは並みいる強豪を抑えてCL出場権を獲得するなど、優れた手腕を発揮した。自分のやりたいサッカーを表現できるスモールクラブの方が合っているのだろう。

クラブとしても適任者を抜擢できたことがここまで好調を維持できている一つの要因になっている。

マーク・ノーブル退団でチーム一丸

もちろん、戦力も多士済々だ。かつては元イングランド代表DFリオ・ファーディナンド、同フランク・ランパードを輩出した、同国屈指の育成クラブである。

さらに、今シーズンを最後にユースからクラブ一筋のキャプテン、MFマーク・ノーブルがクラブを去ることを発表。クラブとファンに愛された男の花道を飾ろうとチームは一枚岩になっている。

チームの得点パターンの多くが、カウンターやセットプレーからによるものだ。ビッグクラブとの戦力差を認識した上で、理にかなった戦い方に徹している指揮官のチーム作りがここまで成功を収めていると言えるだろう。

カウンターを成功させるにはディフェンスの安定は不可欠だが、ゴールマウスにはプレミアでの実績十分な元ポーランド代表GKファビアンスキが立ちはだかる。彼らの奮闘もあり、ここまでリーグ7位の失点19に抑えている。

マイケル・アントニオも健在

特筆すべきは攻撃陣だ。前述した上位直接対決はいずれも派手な撃ち合いとなったが、その2試合ともで得点に絡んだのがジャロッド・ボーウェンだ。右ウイングとしてチャンスメイクと得点両方でチームに貢献している。

そして、昨季チームの攻撃を牽引したエースのジャマイカ代表FWマイケル・アントニオは今季も健在だ。一度はイングランド代表に召集されたこともある実力の持ち主で、負傷などの理由により自身のルーツであるジャマイカ代表を選択したことでも話題になった。今季も8月に月間最優秀選手賞を獲得するなど、ここまで6ゴールでチームの攻撃の核となっている。

「新顔」が上位争いに参戦することは、ボクシングデーから年末年始にかけてスケジュールが立て込むイングランドサッカーに大きな楽しみを持たせる。地元東ロンドンの人々は6年前にレスターが起こした奇跡の再現を期待しているだろう。

過密日程を乗り切れるか

しかし、この世界最高峰のリーグで栄光をつかむのはたやすいことではない。一番の問題はその「過密日程」だ。他国リーグはウインターブレイクに入っている時期でも、この国だけは一切休みなく、試合を消化していく。

怪我人を全く出すことなく新年を迎えることは至難の業だろう。選手層に不安のあるウエストハムにとって、この時期が今シーズンの行方を占う勝負所だ。

加えて、序盤は好調だったエース、アントニオに10月以降得点がないのも気がかりだ。各クラブのスカウティングが行きわたれば、苦戦する試合も多くなってくるかも知れない。

有効な対策としては、冬の移籍市場で新戦力を獲得して戦術バリエーションを増やすこと。これは負傷者が増えてくるであろう今後の過密日程の対策という点でも有効だ。

複数の選手をリストアップとの報道もあるが、果たして今冬ロンドンスタジアムに新たにやってくる選手はいるのか。いずれにしてもシーズンは長い。このまま上位陣に食い下がれるか。ウェストハムとモイーズの挑戦に注目したい。 

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