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変革期のバルセロナはクーマン解任で不振脱出できるのか

2021 11/6 11:00中島雅淑
解任されたバルセロナのロナルド・クーマン監督,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

メッシ放出の「穴」埋まらず

バルサが苦しんでいる。2期目を迎えたクーマン体制の下、チームのアイコンであったメッシ放出という大きな決断とともに臨んだ今シーズン。しかしながら、10節のクラシコ、11節のラージョ・バジェカーノ戦と連敗し、ついにこのOB指揮官の解任が発表された。順位もいまだ9位と低迷しており、浮上の兆しは見えない。

負の連鎖はCLにも悪影響を及ぼしており、グループステージ2試合を史上初の連敗スタート。決勝トーナメント進出すら危うい状況だ。

様々な要因が考えられるだろうが、やはり、花の都へと旅立ってしまった「唯一神」の不在の影響は大きすぎるだろう。 メッシはこれまで得点源として数々貴重なゴールを奪ってきただけではなく、中盤に下がって組み立てに参加したり、スペースを作る動きでも、チームのために貢献してきた。

攻撃の全権を担ってきた男がいなくなるということは、まるっきり違うチームに作り変えないといけないということ。開幕前にアグエロやデパイらを補強し、チーム再構築を模索していたものの、そのアグエロがリーガ4試合1ゴールとアトレティコ時代ほどの輝きは見せられず、さらに先日には不整脈発覚のため離脱するアクシデント。レンタルでクラブを離れたグリーズマンのことも考えると移籍市場の立ち回りとしてはマイナス収支だろう。

進んでいない「王位継承」

チームの状態についてクーマンの管理力が悪いと言ってしまえばそれまでだが、バルサやレアル・マドリーのような、優勝を義務付けられたクラブには必ず「暗黒期」のような、タイトルから見放される時期が存在する。現在のバルサは過渡期だと言えよう。

思い出されるのは90年代後半から00年代初頭にかけて、実に5シーズン無冠が続いた時代だ。

「ドリームバルサ」と呼ばれた時代が終焉を迎え、CLの出場枠拡大に伴い、スペインのこの両巨頭以外も、欧州戦線で台頭するようになってきた時代だ。そこで得た資金力を武器にリーグでもデポルティボやバレンシアが存在感を見せ始めていた。

一方、チーム内では、度重なる監督交代や、クラブのシンボル、ルイス・フィーゴの移籍などで戦力がなかなか整わなかったなど今のバルサに共通する部分もある。

常に勝利するチームを作り続けるというのは非常に難しいことだが、一般的には下部組織の選手が半数で、あと半分を外から獲得してくる、というチームの構成がバランスがいいとされる。

しかし、カンテラからトップチームに引き上げられたばかりの選手はまだ若く、経験値が浅い。そしてフィジカル的にもシーズンを通してフル稼働できる状態ではない。

こうした課題を実戦経験を積むことにより、昇華していき自らの存在感を高めていくのだ。その時欠かせないのが、道標となる先輩だろう。

今のチームに照らし合わせてみるとアンスファティやペドリとカンテラ出身の才能ある選手は数年前から台頭してきている。

しかし、今のチームはまだ発展途上。それは「王位継承」がうまくいっていないからだ。彼らが1年を通してチームを引っ張り続けることができるかと問われるとそれは疑問が残る。

「狭間の時期」はしばらく続く?

かつてはメッシもトップデビューした頃は「将来を期待される若手の一人」に過ぎなかった。当時、チームはロナウジーニョが王様として君臨し、エトー、イブラヒモビッチら多くのお手本があった。

チーム力を落とさず、絶対的な力を持った後継者に世代交代していく。これを同時に行えるかどうかが、勝利のサイクルを途切れさせないポイントだ。

しかし、この「王位継承」は常にスムーズにいくわけではない。いわゆる「狭間の時期」だ。それが今なのであろう。メッシを開幕前に放出してしまったのは、次なるクラブのシンボルを育てる、という意味でも痛かった。

既に後任候補として名前が挙がっているクラブOBのシャビだが、監督としてのキャリアは欧州ではなく、どこまでやれるのか、過度な期待は禁物だ。

それでもまだ現役引退からそこまで時間は経っておらず、選手目線から「何か」を与えられるということは十分に期待できる。しばらくはバルセロニスタにとって我慢の時期が続くかもしれない。

かつては冬のメルカートの補強によってチーム状態ががらりと変わり、優勝まであと一歩、というところまで迫ったシーズンもあった。流れを変えるには選手や監督交代でテコ入れを図るしかないだろう。

しかし、真にやらねばならないのは、カンテラーノたちをさなぎのままプレーさせるのではなく、チームとしても各個人としても成熟して羽ばたかせ、完成度を高めることではないだろうか。

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