異例の活躍でブンデス1年契約延長
ドイツのフランクフルトに所属するMF長谷部誠。ロシアW杯で日本代表の主将をつとめ、時に「真面目すぎる」とからかわれることもある37歳は、今やブンデスリーガ最年長の選手になった。今季終了後に引退すると目されていたが(本人も会見でそう語っていた)、ドイツの地でサプライズを起こしている。
サッカー統計サイト「WhoScored.com」および「FBref.com」によれば、長谷部は今季、ブンデス21試合(約1780分)に出場。得点・アシストこそないが、平均パス成功率87.6%を記録している。
チームメイト・鎌田大地のゴールで引き分けた第25節RBライプツィヒ戦(3月14日)にはボランチとして先発フル出場。チーム次点の走行距離11.3キロを記録する奔走ぶりで、チャンピオンズ・リーグ出場権圏内の4位キープに貢献した。
2月に行われた第22節バイエルン戦でも先発フル出場。王者とがっぷり四つで戦い、大金星に貢献した。
長谷部は30代後半とは思えぬ活躍を見せており、チームに欠かせないピースとなっている。アディ・ヒュッター監督やフロントからも絶大な支持を受け、ついには2022年夏までの契約延長を勝ち取った。
「日本のベッケンバウアー」と高評価
長谷部がドイツに渡ってブンデスで戦い始めてから、早14年が経とうとしている。
2007-2008年シーズンの1チーム目は、浦和レッズから移籍したヴォルフスブルク。鬼軍曹フェリックス・マガトにしごかれ、主にボランチ・右サイドバック・右サイドハーフとしてプレイ。便利屋的な扱いながらも、2年目にはチームのリーグ優勝に貢献した。
ニュルンベルクでは、右膝の半月板損傷などで不振の時期を過ごしたが、3チーム目のフランクフルトで調子が上向き始めた。
転機は2016-2017シーズンの第8節ハンブルガーSV戦。180センチとブンデスでは並の体格ながら、試合途中にリベロとしてプレイした。センターバックやボランチの位置に顔を出して守備を安定させ、その後もリベロとしての出場が急増。「日本のベッケンバウアー」と呼ばれるほど高い評価を得た。
さらに驚きは、近年になってボランチとしての出場が再増加。全盛期に比べてフィジカルが落ちているはずの37歳が、ブンデスの激しい中盤に舞い戻ったのである。
ショートレンジのパス成功本数は過去3年より増加
長谷部は今季、21試合累計でショートレンジのパスは現在349本(成功率88.4%)を供給。シーズン途中ながら、成功本数が過去3年に比べて多い。
ロングレンジのパスは現在155本(75.2%)。過去3年で平均260本成功させているが、残り試合でこの数字に到達するのは難しいかもしれない。
もちろん長谷部はリベロに専念していた時期があり、過去と単純比較はできない。ただし共通して言えるのは、ここ4年間、ショートレンジとミドルレンジのパス成功率を年間平均84〜93%の高い数字でキープしている。ロングレンジのパスも70%台を継続しており、タックル数など他のデータも大きな遜色はない。
いろいろなポジションを経験したおかげで試合を多角的に読む力に優れ、ポジショニングや配球、時間の使い方が上手い。24歳の相棒ジブリル・ソウなど若手を引っ張る統率力、ブンデスの激しい中盤でやり合えるだけのフィジカルも備わっている。試合中の緊急時にはポジションチェンジができる。これほど使い勝手のいい選手はいないだろう。
また、昨年2019-2020年シーズンの第30節マインツ戦には、309試合目の出場を達成。韓国の元サッカー選手であるチャ・ボムグン(現在67歳)が保持していたブンデスにおけるアジア人トップの試合出場数(308試合)を31年ぶりに塗り替えた。
それもこれも、長年の経験と、パフォーマンスを崩さないための徹底した体調管理の賜物だろう。真面目な選手の最上位互換、質実剛健の「鉄人」と呼ぶにふさわしい地位を確立している。
引退後も当分ドイツ…日本還元はしばし先?
長谷部は2020年5月に契約延長した際、現役引退後にフランクフルトのブランドアンバサダーに就任すると発表した。長谷部の心境に大きな変化がなければ、引退後のアンバサダー就任は既定路線だろう。
独メディアの取材では、現地で指導者ライセンスを取得することへの意欲も示しており、拠点は当分ドイツになると思われる。
一方、長谷部は故郷・静岡や東京で、自身の名を冠したサッカースクールも運営している。
また、昨冬にJリーグからオファーがあったと明かしており、現役選手として日本に帰還するという選択肢も残っている。
いずれにせよ、長谷部がサッカー界に居続けることは間違いなさそうで、彼がドイツでたっぷり吸収した経験や知識が日本サッカー界へ還元される日は、遅かれ早かれやって来るだろう。
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