中2日のメキシコに0―2
サッカー日本代表は11月17日(現地時間)にメキシコ代表と親善試合を行い、0-2で敗れた。
先月に続き、オール欧州組で挑んだ2連戦の2試合目。パナマ戦から中4日の日本は、DF吉田麻也(サンプドリア)とMF柴崎岳(レガネス)以外を総入れ替えして戦った。
対するメキシコは、韓国代表と11月15日に対戦。中2日で日本との試合に臨んだ。日本戦の先発で、韓国戦にも先発したのは4人。エースであるFWラウル・ヒメネス(ウルヴァーハンプトン)は韓国戦でフル出場し、実力者のFWイルビング・ロサーノ(ナポリ)も83分までプレイした。
つまり、メキシコの飛車角は日本戦で疲労が抜けきらない状態だった。ヒメネスの動きが良くなかったのも、韓国戦の疲労があったからだろう。
それでもヒメネスは63分、ロサーノは68分に得点を決めている。日本の選手との実力差を感じさせる試合巧者ぶりだった。しかし、それは試合前からある程度予想されていたこと。今回の戦犯は森保一監督ではないだろうか。
先制されてもシステム修正なし キーマン鎌田を途中交代
前半は4-2-3-1の布陣で、パナマ戦の3バックから4バックに変更。FW鈴木武蔵(ベールスホット)を1トップに置いた。この布陣が功を奏し、メキシコも対応が間に合わず複数回の決定機を生み出したが、残念ながら決めきれなかった。後半に入ると、日本の戦い方に応じて修正してきたメキシコに主導権を奪われ、2失点を喫した。
森保監督の采配に疑問符がついたのは、試合のキーマンになっていた鎌田大地(フランクフルト)を後半77分に交代させた点に加え、もう1つは失点後の対応だ。
システム修正や効果的なポジションチェンジがほぼ何もなかった。同じポジションの選手を文字通り交代させるだけだった。むしろ、鎌田がいなくなってスペースを使える人間がいなくなり、攻め手を欠いた。
例えば失点した時点で、4バックから3バックへ切り替えられなかっただろうか。過去の試合で何度もまがいなりにもテストし、中盤の人数を増やして前がかりになれるはずの3バックだ。1失点した瞬間に、チーム全体に反撃の意を示すべく3バックを使う。そういう絶好のシチュエーションだったのでないのか。
おまけに、ピッチ上に霧が発生するハプニングまで起きた。選手たちがボールを見失い、ミスが起きやすい状況だ。
中盤に厚みを出して、敵陣へボールを運ぶ時間を増やし、ゴール前で相手のミスを誘う。それは同時に、自分たちのミスで失点を避けることにつながる。そうした狙いを持って、3バックへ切り替える余地もあったのではないだろうか。
森保監督に透ける“野球采配”個人の能力に頼りすぎ?
森保監督の冴えない采配は、メキシコ戦に始まったことではない。過去の試合でも、相手の出方に合わせて戦術を修正するための選手交代ではなく、ワンチャンスを作りそうな上手い選手、特徴のある選手を投入するだけで、良い結果を待っている節がある。
「ここで上手いことよろしく頼む」。そんな心の声が聞こえそうな、まるでホームランバッターや守護神の個人能力に頼る野球采配だ。
これまで勝った試合の一部では、選手間の判断で動いたと証言するコメントがちらほら聞かれる。パナマ戦でも、後半大活躍した遠藤航(シュトゥットガルト)が、前半にベンチから戦況を見た上でポジショニングを修正した、という趣旨の発言をしていた。
野球なら攻撃も守備も瞬間瞬間はほぼ個人の技術にゆだねられるため、選手個人の判断が試合を左右しやすい。しかしサッカーはコンタクトスポーツであり、2つの集団が複雑にからみ合う。だからこそチーム戦術が重要視される。
同じコンタクトスポーツであるラグビーでは、W杯で活躍した日本代表が、長期にわたって合宿を張って徹底的に戦術を練り、成功を収めた。サッカーの日本代表も同じようにW杯ベスト8以上を狙うなら、選手間の判断のみで勝利を収めるのは厳しい。ピッチ上の選手のみならず、森保監督も欧州や南米の名将たちを相手に戦術勝負を挑む必要がある。
互角・格上の相手に逆転勝ち0%
現状、森保ジャパンは奇妙なデータが浮かび上がっている。
森保体制になってからの逆転勝ちは、アジアカップ・グループステージ第1節のトルクメニスタン戦(19年1月9日/3-2)と第3節のウズベキスタン戦(19年1月17日/2-1)の2試合のみ。FIFAランキングでトルクメニスタンは129位、ウズベキスタンは85位といずれも格下だ。
負け試合はアジアカップ決勝のカタール戦(19年2月1日/1-3)、親善試合のコロンビア戦(19年3月22日/0-1)、コパ・アメリカのチリ戦(19年6月18日/0-4)、EAFF E-1サッカー選手権の韓国戦(19年12月18日/0-1)、そして先日のメキシコ戦だ。
森保監督就任当初のウルグアイ戦(18年10月16日/4-3)のシーソーゲームは、日本が南野拓実(リヴァプール)のゴールで先制した試合であり、同点にはなっても点差をつけられる時間帯はなかった。
森保ジャパンは、たとえどのようなメンバー編成でも、互角あるいは格上の相手に先制されて、そこから巻き返して逆転勝ちしたことがない。
4バックと3バックの適切な使い分け(併用するなら)、パワープレイで強引に点が取れる選手の発掘など先手を取られた際の対応策が明確にならないと、カタールW杯はよもやの予選敗退もあるかもしれない。
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