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Jリーグ開幕を告げるゼロックススーパーカップ J1王者と天皇杯王者対決は神戸に軍配

2020 2/11 11:00中山亮
イメージ画像ⒸSPAIA

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プレッシング対決で優勢に立った神戸

昨季のリーグ戦チャンピオン横浜FMと天皇杯優勝チーム神戸との間で行われたゼロックススーパーカップ。ボール保持をベースとし、ボールを失えば即時奪回が信条という比較的似た特徴を持つチームの対戦である。

前半優勢に立ったのは、即時奪回、プレッシングが先に機能した神戸。プレッシングのキーマンは古橋亨悟と山口蛍だった。

神戸は3−1−4−2とも3−4−2−1とも取れる両方の中間の様な布陣をとっていたが、この中間の様な布陣を機能させていたのが、FWと左シャドーを行き来していた古橋と右インサイドハーフと右シャドーを行き来していた山口だったのだ。

神戸のプレッシングのスイッチを入れるのは古橋。横浜FMの右CBのチアゴ・マルチンスに対して左サイドから(チアゴ・マルチンスにとっては右側から)アプローチをかける。これによりチアゴ・マルチンスは右サイドへのパスが出しにくくなりボールは左サイドへ。前半横浜FMの攻撃が左サイドからばかりになっていたのはそのためだ。

しかしここで横浜FMの左サイド、神戸にとっての右サイドに待ち受けているのはJ1のインターセプト王であり、リーグ最強のボールハンター山口。古橋のスイッチに連動しドウグラスも畠中慎之輔にアプローチをかけるためボールの方向が限定され、山口のボール奪取能力を発揮しやすい形に持ち込んでいたのである。

27分、40分と神戸が奪った2得点が共に敵陣でのボール奪取が起点となっていたのは偶然ではない。

横浜FMも即時奪回、プレッシングが信条のチーム。もちろん前半から新加入のオナイウ阿道を中心に積極的なプレッシングを見せていた。しかし神戸はそのプレッシングをロングボールの多用で回避。清水から加入したドウグラスは先制点を奪っただけでなく、昨季の敵陣空中戦数で1位を記録した強みを生かしロングボールの受け先として機能していた。

プレッシングを回避しはじめる横浜FM

横浜FMは36分になんとか1点を返すことに成功したものの、前半は神戸にペースを握られていた。しかし後半に入ると、神戸のシュート3本に対し横浜FMは11本という数字からも分かる通り、一気に流れを掌握する。後半になると横浜FMのビルドアップ時に神戸のプレッシングが有効に働かなくなっていたのだ。

今季初の公式戦ということもあり前半はミスが多かったが後半にはきっちり修正。前半45分間を経て神戸のプレッシングにも慣れたということもあるだろう。それに加えて神戸にも前半からロングボールを多用したことによる影響があったのではないだろうか。

神戸は前半にロングボールを多用したことにより立ち上がりからアップダウンが激しい展開となり、チーム全体のプレス強度が低下することに繋がったのだ。古橋と山口の2人は後半も元気だったが、チーム全体のコンパクトさは徐々に無くなっていた。

横浜FMも同じように前線からプレッシングを仕掛けていたが、神戸の方が先に間延びし始めたのは神戸にベテラン選手が多いこともあるが、横浜FMはプレッシングを受けても徹底してボールを繋ごうとしていたからだろう。

後半はほぼ横浜FMのペース。54分、73分と持ち味を発揮した崩しで2点を奪うが、神戸も意地を見せ3−3で90分を終了。勝敗はPK戦で決することに。

このPK戦では両チーム合わせて9人連続で失敗するという史上稀に見る珍事が起こったが、最後に山口が決めて神戸が勝利。両チーム共に課題は感じさせたが、シーズン初戦としてはどちらにとっても決して悪くない、観客にとってもエキサイティングで面白い試合だったのではないだろうか。

大きな混乱はなかったVAR

この試合でもう1つの注目ポイントは今季からJ1全試合で導入されることが決まっているVAR。ルヴァンカップ決勝やJ1参入プレーオフでも導入されていたが、本格的な導入はこの試合からと言ってもいいだろう。

実際に22分に神戸のドウグラスがヘディングで押し込みゴールネットを揺らしたがVARによりオフサイドが確認されゴールが取り消しとなった。

その際にスタジアムのモニターで表示されたのが「VARチェック中」との案内。これまでは主審のジェスチャーのみだったが、本格導入にあたりVARチェック中であることをハッキリとわかりやすく表示されることとなった。

こういった事もあり今回の試合ではVARによる大きな混乱はなし。36分の横浜FMの1点目のように得点後に少し長めのVARチェックが入ることもあり観客も慣れる必要はあるだろうが、本格導入初戦としてはまずまずの内容だったのではないだろうか。

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