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横浜F・マリノス2戦連続4得点 第12節の完敗を経てさらなる進化

2019 5/29 07:00中山亮
サッカーのイメージ画像ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

完全に封じられたC大阪戦

第12節4-1、第13節4-0。およそサッカーのスコアには見えないが、横浜FMの直近2試合の結果である。1試合に両チーム合わせて3得点入るかどうかと言われているサッカーで2試合連続4得点と攻撃陣が爆発。横浜FMのアタッキングフットボールが開花した。

このきっかけとなったのは第12節から取り入れた大胆な変更。第12節からそれまでチームを引っ張ってきた10番天野と41番三好はベンチスタートとなっている。

横浜FMの特徴は最終ラインを高く上げ前線に人数をかけてサッカーをする。そのため攻撃力も高いのだが失点も多い。そういったチームの仕組みから結果的に大量失点で敗れることもある。

そんな横浜FMは第11節、敵地に乗り込んでのC大阪戦で0-3の完敗を喫したのだが、この試合はそれまでの大量失点で敗れた試合とは少し様相が違っていた。

ボール保持率では65%を記録。パスも回せている。しかし、ペナルティエリア付近の合計プレー数ではC大阪の70回に対して横浜FMはわずか40回。ウイングポジションで選手を起用しているにもかかわらずクロス数もC大阪の17本を下回る12本しか記録していない。

ポステコグルー監督が「残念で仕方ない。自分たちのサッカーができずにこういう結果になってしまった」と語ったほどやりたいことをさせてもらえなかったのである。

横浜FMサッカーの要を封殺

その要因となったのは三好と天野のインサイドハーフを封じられたこと。4-3-3からSBが中央に入り2-3-5へと変化する横浜FMのボール保持攻撃の中で、前線5人の両サイドから1つ内側にあたるインサイドハーフのポジションは重要な役割を担っている。

彼らが相手DFの間に立つからこそ、両WGがサイドに開き攻撃の幅を出せるからだ。C大阪はこの2人のインサイドハーフに対して包囲網を作り上げた。まずビルドアップでブロックの外側へと押し出した。

これだけではそれほど珍しい方法でもない。ビルドアップでボールを落ち着かせるためにインサイドハーフを下げることは横浜FM自身でもよく行う形である。

しかし、ここからC大阪はインサイドハーフに対してプレッシングをかけてボール奪取。さらに奪ったボールでインサイドハーフの背後のスペースをカウンターで狙った。

ということは、インサイドハーフを狙い撃ちにしたのである。そうなると横浜FMのインサイドハーフはボール保持の中で前に出ていくことができなくなる。このポジションに入る天野や三好のプレーが良かったかどうかではなく、横浜FMのサッカーそのものが機能させられなくなってしまったのだ。

これは横浜FMにとって致命的だった。C大阪と同じことが他のチームにできるかどうかという問題はあるが、確実に横浜FMを封じる方法を提示されてしまったのだ。

フォーメーションと役割を変えた横浜FM

C大阪に完敗を喫した翌節となる神戸戦。マリノスは大きな変更を加えた。それまでチームを支えてきた天野と三好はベンチスタート。代わりに扇原とエジガル・ジュニオが先発する。

扇原はまだしもエジガル・ジュニオはCF。天野や三好とはポジションが異なる。そう、布陣を一新したのである。この試合から横浜FMは4-3-3から扇原と喜田が守備的MFで並び、トップ下にマルコス・ジュニオールが入る4-2-3-1に変更。インサイドハーフそのものを無くしてしまったのである。

一般的に考えると布陣が変わるとボール保持攻撃での並び2-3-5も変わる。しかし、横浜FMにとってこのボール保持攻撃での並びはストロングポイント、変えたくない部分である。そこで並びは変えず各位置に入る選手を変えてしまったのだ。

これまで4-3-3から両SBが内側に入り2-3-5になっていたところを、CB2人による最初の2は変えないものの2人の守備的MFと右SBで中盤の3を作り、トップ下の選手と大きく上がってくる左SBが前線で間に入り5を形成するようになったのである。

この形であれば、少なくとも常にトップ下の選手1人は間のポジションを取ることができる。磐田戦でも右SBを広瀬から和田へと選手の入れ替えはあったものの役割自体の変更はなし。新たな形で2-3-5をつくることで爆発的な得点力を発揮しているのである。C大阪戦での完敗を経て新たな進化を果たした横浜FM。アタッキングフットボールはまだまだ続きそうだ。