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ガンバが大阪ダービー勝利 宮本監督の賭けが的中

2019 5/21 15:00中山亮
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賭けに出た宮本監督

J1第12節、大阪ダービーはホームのガンバ大阪が1-0で勝利した。

試合前の下馬評としては、アウェイにもかかわらずセレッソ大阪有利との声が大きかったのだが、それもそのはず。G大阪はリーグ戦で7試合勝利がなく、前節は11試合を終え1得点で最下位の鳥栖になんと3失点を喫し完敗。

一方のC大阪は横浜FMに3-0の完勝で今季初の連勝。未だに噛み合わないG大阪とようやく噛み合ってきたC大阪というチーム状態だったからだ。

宮本監督はこの試合で大きな賭けに出た。前節からなんと先発メンバー5人の入れ替え。カップ戦ならいざしらず、リーグ戦ではなかなか見ない人数である。

そしてその5人のうち今季リーグ戦初先発となるメンバーが3人。さらに布陣もそれまでの4バックから大分戦以来となる3バックに変更と大博打に打って出た。

チームを救ったのは頼れるGK東口

ダービーということもあり立ち上がりから両チームが激しくぶつかりあう展開となったが、序盤優勢だったのはC大阪だった。

C大阪の今季の特徴である組織的な守備でG大阪の勢いを殺すように攻撃を吸収してしまうと、そこからG大阪がボールを奪い返そうと出てきたタイミングで、一気にDFラインの背後を狙う。

10分に高木が抜け出しGK東口と1対1となったシーンはまさにその典型である。

G大阪はもしここで失点していればゲームプランは一気に崩壊。若い選手を並べていたこともあり、精神的に立て直せず大敗していた可能性もあった。

しかし、このC大阪の決定機をGK東口がセーブ。結果論ではあるがここで失点をしなかったことがこの試合を大きく分けた最初のポイントだった。

前半終盤からG大阪が盛り返す

序盤はC大阪が優勢だった試合は、時間の経過とともに徐々にG大阪に主導権が移っていく。

G大阪が奪いに行く守備から待ち構える守備に変えたこと、急いでボールを奪いにいかず5バックで待ち構える策に出たことで、C大阪にスペースを狙われることが少なくなったのだ。

G大阪が行った待ち構える守備も、C大阪が万全の状態であれば問題が無かったかもしれない。実際に2節前には同じ様に3バックで待ち構える守備を行った松本に2-0で勝利している。

しかし、この試合では都倉を欠いていた。松本戦では待ち構える守備に対して前線でフィジカルで対抗する選手がブルーノ・メンデスと都倉の2人いたが、横浜FM戦の大怪我によりこの試合ではブルーノ・メンデス1人だけ。1人であれば対応することはそれほど難しくない。

決断が裏目に出たC大阪

後半開始からC大阪は布陣を3-4-2-1に変更、さらに高木に代えてソウザを投入する。

都倉はいないのでターゲット役を増やす事はできない。それであれば別のやり方になるが、ボールを持てるソウザを前線に入れることで前線に起点を作りたかったのだろう。

しかしこの決断が裏目に出る。C大阪の守備の形が4-4-2から5-4-1に変わったことでバイタルエリアにスペースができやすくなったのだ。

この試合唯一のゴールとなった倉田の得点はまさにそのバイタルエリアのスペースを攻略した形。G大阪はC大阪の隙を見逃さなかった。

ロティーナ監督の決断は是か非か

失点の原因となったのはロティーナ監督が行った布陣変更だと言えるだろう。

前半終盤にはG大阪がボール支配率を高めていたとはいえ、C大阪の4-4-2の布陣を崩すまでには至っておらずチャンス自体は作れていない。布陣を変えなければ失点をする可能性は低かったはずだ。

しかし、前半終盤はC大阪もチャンスを作ることはできなくなっていたことも事実である。 もしかすると、この試合がダービーではなく普通のアウェイの1試合であれば引き分けでも満足でき、我慢してチャンスを待つという決断につながったかもしれない。

しかしこの試合はプライドがぶつかりあうダービーだ。

リスクを負ってでも得点を奪いに行く、勝ちに行く決断を下すことも十分理解できる。

賭けに勝った宮本監督

一方で宮本監督は賭けに勝った。もしこの試合に敗れていれば、G大阪監督としての立場も危うかった可能性もあった。

そんな中で大胆に若手を抜擢し、布陣も変え勝ちきった。その采配も見事だし、若い選手を中心に90分間走らせ続けたリーダーシップも見事だった。

ただし、G大阪はまだまだ安心できる状態になったとは言えない。このダービーで勝利した要因はいわば奇策。2度は使えないものだ。

しかしダービーの勝利はチームの一体感を高めるという点では普通の1勝以上の価値がある。若い選手が一気に成長するきっかけとなるかもしれない。

これを契機にチームを刷新できるか。宮本監督の手腕が試されるのはここからだろう。