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鹿島のルーキー濃野公人が成し遂げた史上5人目の快挙 “天才”小野伸二から三笘薫まで、先輩は全員W杯を経験

2024 12/12 11:00SPAIA編集部
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プロ1年目でベストイレブン受賞

Jリーグの年間表彰式『2024Jリーグアウォーズ』が10日に開催され、今年のJリーグを彩った選手・監督、クラブ、審判が表彰を受けた。

ヴィッセル神戸の連覇で幕を閉じた2024年のJ1。最優秀選手賞は神戸の武藤嘉紀が初受賞、ベストイレブンにも神戸から武藤を含む3名が名を連ねた。

▼ 2024Jリーグベストイレブン
GK 大迫敬介(サンフレッチェ広島)
DF 濃野公人(鹿島アントラーズ)
DF 中谷進之介(ガンバ大阪)
DF マテウス・トゥーレル(ヴィッセル神戸)
DF 佐々木翔(サンフレッチェ広島)
MF マテウス サヴィオ(柏レイソル)
FW 知念慶(鹿島アントラーズ)※MFとして
FW アンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)
FW 宇佐美貴史(ガンバ大阪)
FW 大迫勇也(ヴィッセル神戸)
FW 武藤嘉紀(ヴィッセル神戸)

初受賞が7名というフレッシュな顔ぶれとなったなか、特に注目したいのが右サイドバックとして選出された鹿島の濃野公人だ。

2002年3月26日生まれ、福岡県出身の22歳。大津高から関西学院大を経て今季から鹿島に加入したルーキーが、プロ1年目でいきなりベストイレブンに輝いた。

高校時代は背番号10をつけるアタッカーで、大学でもオフェンシブなポジションを務めていたが、3年になって右サイドバックへ転向すると一気に才能が開花。昨年6月に鹿島への入団が内定すると、迎えた2024年2月、開幕戦のスタメンにはもう濃野公人の名前があった。

ランコ・ポポヴィッチ監督の信頼をがっちりと掴み、終わってみればリーグ戦31試合に出場してチーム2位の9得点をマーク。1年で不動の地位を築いてみせた。

ルーキーのベストイレブン受賞は、2020年の三笘薫(川崎フロンターレ/現・ブライトン)以来で史上5人目の快挙。過去の先人たちを改めて振り返ってみると、その価値の高さがよく分かる。


全員が日本代表、W杯を経験

ベストイレブンを受賞したルーキー


「ルーキーでベストイレブン受賞」の偉業を初めて成し遂げた選手が、1998年の小野伸二(浦和レッズ)だ。

幼少期から“天才”と呼ばれたファンタジスタで、清水商高から鳴り物入りで浦和に加入。日本代表としても1998年のアジアユース選手権でMVPを獲得する活躍でチームを準優勝に導き、なんとその年のフランスW杯メンバーにも抜擢される。大会では第3戦のジャマイカ戦で途中出場を果たしており、「18歳272日でW杯出場」という史上最年少記録は今なお破られていない。

浦和でもデビュー2戦目でプロ初ゴールを記録するなど、1年目からリーグ戦で27試合に出場して9得点と活躍。新人王とベストイレブンをW受賞した。その後の活躍はご存じの通りで、W杯は2002年の日韓大会、2006年のドイツ大会と3大会連続で出場。昨年、44歳で現役生活にピリオドを打った。

小野の快挙の翌年、2年連続となるベストイレブン受賞ルーキーが誕生する。ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)の中澤佑二である。

ただし、その歩みは小野とは対照的。三郷工業技術高時代は晴れ舞台と縁がなく、高校卒業後にブラジルへサッカー留学を決意。所属チームがなくなる時期もありながら、1998年にヴェルディ川崎と契約にこぎつけたものの、当時は「練習生」という扱いだった。

それでも1999年にプロ契約を勝ち取ると、開幕2戦目でプロ初出場・初先発。一気に定位置を掴み取った21歳は最終的に28試合に出場。小野と同じように新人王とベストイレブンをW受賞した。

日本代表としても1999年から2010年までの長きに渡り活躍を見せ、積み重ねた代表キャップ数は110にのぼる。W杯も2006年(ドイツ大会)と2010年(南アフリカ大会)の2度出場した。


世界に羽ばたいた大卒アタッカー

中澤以降はしばらく間隔が空いたなか、史上3人目の快挙を達成したのが2014年の武藤嘉紀(FC東京)だ。

東京都世田谷区生まれで幼少期からFC東京のスクールに通い、ユースでプレーしていたという“生え抜き”のプレーヤー。慶應義塾大への進学を挟み、在学中にFC東京の特別指定選手として登録を受けると、2013年7月に大学3年の段階でJリーグデビューを果たす。

翌2014年からFC東京に正式加入。開幕戦から先発メンバーに名を連ねるなど大きな期待を背負いながら、リーグ戦33試合の出場で13得点をマーク。中澤以来で15年ぶりとなるルーキーイヤーのベストイレブン受賞を成し遂げた。

その後は2015年の途中から戦いの場を海外に移し、日本代表としては2018年のロシアW杯に出場。2021年からヴィッセル神戸で日本に復帰し、2023年にルーキーイヤー以来となるベストイレブンを受賞。さらに今季は2年連続のベストイレブンに加え、自身初となるMVPにも輝いた。

そして武藤の次、今回の濃野の前にベストイレブンを受賞したルーキーが2020年の三笘薫(川崎フロンターレ)である。

神奈川県川崎市の出身で、高校卒業までフロンターレの下部組織でプレーしていたという“地元の星”。トップチーム昇格の話もあったなかで大学進学を希望したのは武藤と同じで、こちらは筑波大へ。同様に特別指定選手として在学中のJリーグデビューも果たしている。

正式に川崎に入団したのは2020年のこと。開幕戦から途中出場でプロデビューを果たし、プロ初ゴールから公式戦5試合連続ゴールを決めるなどセンセーショナルな活躍を見せ、30試合の出場で13得点をマーク。アシストも12記録して新人初となる2ケタ得点&2ケタアシストの快挙も達成した。

その後はベルギーを経て、現在はイングランド・プレミアリーグのブライトンで主力として活躍中。日本代表としても2021年の東京五輪に出場したほか、2022年のカタールW杯でも中心選手としてベスト16進出に貢献している。

直近の2人は濃野と同じ大学を経てのプロ入りで、2人ともほどなくして海を渡った。実際、濃野に関してはすでに欧州のクラブが獲得に動いていたことも伝えられている。今オフに関しては鹿島残留が決定的と報じられているが、先輩たちと同じルートを歩んでいく可能性は大いにある。

思えば1年半前、鹿島への加入が内定した際には「鹿島を、日本を代表するような選手になれるよう努力していきます」と宣言していた若き逸材。その言葉に違わぬ才能とポテンシャルの持ち主であることは、プロ1年目のシーズンだけでも証明できた。あとはこの先どれだけ大きく羽ばたくことができるか、来年以降のさらなる飛躍に期待したい。

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