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コロナ禍のJリーグ、声出し応援適用試合でのホームチームの勝率は?

2022 8/19 11:00小林智明
イメージ画像,Ⓒdaykung/Shutterstock.com
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2年4カ月ぶりにチャントが復活

Jリーグは、新型コロナウイルス感染症対策を講じながら、声を出して応援できる「声出し応援エリア/声出し応援席」の段階的導入にあたり、6月中旬より運営検証試合を実施している。

その対象試合の観戦席の一角を、座席間隔を広く保った「声出し応援可能エリア」として指定。指定エリア内の座席(声出し応援席)チケットを購入した来場者に限り、不織布マスク着用の上で声を出して応援できるという、国内プロスポーツで初の試みを導入した。

検証項目は多岐にわたり、声出し応援エリアの運用状況やリアルタイムマスク着用率の把握などをリサーチ。実際にガイドラインに従い運営できているかを確認するとともに、より良い運営を実現するためのデータの取得を行っている。

なお、対象試合の選定はデータ取得を優先し、過去にコロナ関連の調査実績のあるスタジアムを中心に調査設計可能なスタジアムを候補会場とした上で、主管クラブの意向などを鑑み決定。6月11日~8月14日の間に各カテゴリーの計31試合の「声出し応援適用試合」が選ばれ、実際には台風接近、新型コロナ感染拡大の影響を受けた3試合を除く28試合が開催された。

こうしてコロナ禍に見舞われ、禁止されていた声を出す応援が条件付きながら解禁。2020年2月以来、実に約2年4カ月ぶりにスタジアムに歓声が戻ってきたのである。

そこで着目したのが、ファン・サポーターの“声の力”。彼らのチャントの合唱が実際にチームの成績に反映されたのか。特により大きな声援を受けるホームチームが、声出し応援の恩恵を受けたのか否かを検証したい。

J1ではホームの6割が白星ゲット

結論からいえば、思いのほかホームチームの勝率は伸びなかった。J1~J3の計28試合のうち、ホームチームの成績は11勝8分け9敗、勝率は39.3%と5割にも及ばなかったのだ。得失点においてもホームチームは39得点35失点と、わずかに得点が上回ったにすぎない。

しかしながら、カテゴリー別に見るとJ1では表のとおり、ホームチームが6勝2分け2敗、19得点9失点と数字においては、ホームアドバンテージ現象が起きたといえるだろう。

J1公式戦における声出し応援の段階的導入運営検証試合


このなかでアビスパ福岡は声出し当該試合最多の4試合を戦っており、ホーム1勝アウェイ1勝2敗。白星はいずれも対ヴィッセル神戸で収め、2つの黒星は敵地での対鹿島アントラーズで喫した。その鹿島は福岡に次ぐ対象3試合をすべて本拠で戦い、2勝1分けの無敗で終えている。

J2は17試合が対象となり、結果はホームチームが4勝6分け7敗と負け越してしまった。得失点も16得点24失点と声出し応援が有利に働くことはなかったと言わざるを得ない。ホームで2試合の声出し当該試合を行ったのは6チームあったのだが、2勝のチームはなく、1勝1分けが東京ヴェルディのみ。ほかは1勝1敗が2チーム、1分け1敗が3チームというデータを残した。

そしてJ3で唯一の対象試合は、8月14日に鹿児島・白波スタジアムで開催された鹿児島ユナイテッドFCと松本山雅FCの上位対決。3位の鹿児島が4位の松本を4-2で下している。無論、これだけでは声出し応援の優位性については語れない。

制限撤廃後にボルテージがMAXに

試合のサンプル数が少ないこともあり、結論づけるのは時期尚早だと思う。それでも誤解を恐れずに言えば、Jリーグ全体としては声援が成績に影響しているとは言い難かった。

とはいえ、味の素スタジアムでのFC東京vs北海道コンサドーレ札幌の声出しエリア内の入場者数が3,062人(全体11,516人)、日産スタジアムでの横浜F・マリノスvsサンフレッチェ広島が声出しエリア内3,361人(全体13,311人)といった各会場で、収容制限がある。しかも、この猛暑のなかマスク越しに声援を送らなければいけないなどのガイドラインの縛りがあれば、サポーターもフルパワーを出し切ることが難しかったに違いない。

今後は声出し応援運営検証試合を増やし、声出し応援席の標準化と利便性の向上を目指すJリーグ。そしてアフターコロナ後、すべての制限なしでの開催実現がゴールとなる。そこでホームスタジアムにこだまする鳥肌ものの大声援が、チームにどんな結果をもらすのだろうか。真の“声の力”を早く知りたい。

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