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J1で初めてGKがフィールドプレーヤーとして出場、過去の事例とコロナ禍の懸念

2022 8/6 06:00椎葉洋平
イメージ画像,ⒸPeopleImages.com - Yuri A/Shutterstock.com
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ルヴァン杯準々決勝で福岡GK山ノ井が1トップでプレー

8月3日に行われたルヴァン杯準々決勝第1戦、ヴィッセル神戸-アビスパ福岡(ノエビアスタジアム神戸)で、福岡のGK山ノ井拓己がJ1のチームとしては史上初めてFP(フィールドプレーヤー)として後半アディショナルタイムに出場した。

試合は福岡がジョン・マリとルキアンの得点で2-1の勝利。準決勝進出に向け、一歩前進したが、山ノ井がFP用のユニフォームを着用して1トップを務める姿は大きな話題となった。

福岡は7月下旬から新型コロナウイルスの陽性者が次々と出て、チームから離脱。ベンチに7人が入れるレギュレーションながら神戸戦でベンチ入りしたのは4人のみ、うち2人はGKとまさに満身創痍だった。

Jリーグ全体でも3例目の事態

J1・J2のチームでは今回が初の出来事だが、J3では過去に2度、同様のケースが起こっている。

2015年5月17日、J3リーグ第12節、福島ユナイテッドFCとJリーグ・アンダー22選抜(2014~15年にJ3に参加していた、J1およびJ2に所属する22歳以下の選手で構成されるチーム)の一戦で、福島のMF安東輝の負傷を受けてGK内藤友康がFPとして、88分から出場した。

また同年7月29日にも、カターレ富山とFC琉球の一戦で富山のGK永井堅梧が、MF椎名伸志の負傷を受けて後半アディショナルタイム4分からFPとして出場した。

J1・J2は7人がベンチ入り可能だが、J3のベンチ入りは当時も現在も5人。J3は2つの事例が起こった前年、2014年に誕生したばかりだったためチームマネジメントの不慣れさと、4人を交代後に選手が負傷してしまったことが相まって、GKがFPとして出場することとなった。

過去には89分間にわたってFPがGKを務めたことも

今季で30年目を迎えたJリーグの歴史上では、今回とは逆にFPがGKを務めた例もいくつかある。その多くは、交代枠を使い切ったあとにGKが退場となったり負傷するなどして、試合終了までの少ない時間でFPがゴールを守ったものだ。

だが2003年には、なんと89分間もゴールを守ったFPがいる。7月26日、J2・第24節で横浜FCと大宮アルディージャの試合が行われ、開始直後の1分にそれは起こった。

横浜FCのGK菅野がペナルティーエリア外で手を使って相手のシュートを止め、退場処分に。通常はベンチに控えがいるものだが、この試合の横浜FCは菅野以外のGKが全員負傷中。5人が座るベンチには、FPしかいなかった。

そこでGKを務めることとなったのは、DFが本職の河野淳吾。数的不利となったことで0-3での敗戦となったが、河野は相手のシュートを止めるなど懸命にゴールを守った。

なお河野は引退後、元Jリーガーとしては初の競輪選手へと転身。40歳となった現在も、A級2班で奮闘している。

現在のJリーグのルールでは、13人以上をエントリーできれば試合が行われることになっている。コロナ禍という社会情勢に合わせて作られた特別なルールではあるが、川崎フロンターレもJ1・第23節の浦和レッズ戦でベンチ入りが5人(うちGK3人)で試合に臨むなど、非常に厳しい編成で戦わざるを得ないチームが複数出ている。

今回はアビスパ福岡の奮闘と、山ノ井拓己のFPでの出場によって多くのメディアに報じられたが、福岡は試合後、陽性者がさらに増加。エントリー可能な選手を13人以上揃えられず、8月6日に予定されていたJ1・第24節のガンバ大阪戦は中止となった。

連戦は避けられた形だが、慣れないポジションかつ控えがいないという状況では、選手の怪我も懸念される。それを予防するためにも、Jリーグはより柔軟な対応が必要ではないだろうか。

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