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走るサッカーはもう古い?Jリーグの順位に直結するスタッツとは

2022 8/4 06:00椎葉洋平
横浜F・マリノスの仲川輝人,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

順位と連動しない走行距離

第23節を終えた2022シーズンのJ1リーグ。現在の首位は勝ち点48の横浜F・マリノス、2位は勝ち点40の鹿島アントラーズ、3位は勝ち点39の柏レイソル、4位は勝ち点38のセレッソ大阪、5位は勝ち点37の川崎フロンターレ。川崎フロンターレは消化試合数が2つ少ないため、2位まで上がる可能性を有している。

首位の横浜F・マリノス、2位の鹿島アントラーズ、2位浮上の可能性を持つ川崎フロンターレ。この3チームの活躍は、長きにわたって言われてきた「走るサッカー」が順位にほぼ関係しないことを教えてくれる。

ここまでの1試合平均の走行距離ランキングをみると、横浜F・マリノスが2位、鹿島アントラーズが9位、川崎フロンターレが17位。このデータの首位であるサガン鳥栖が順位表においては9位、最下位のアビスパ福岡が10位であることからもよくわかるだろう。

また川崎フロンターレは昨シーズンのチャンピオンだが、このときも走行距離は20チーム中18位。走っても走らなくても、勝つことができると教えてくれるデータだ。

J1の走行距離とスプリント回数

重要なスプリント回数

では、数多く勝利をおさめるためには何が重要なのか。走行距離より順位表に連動しているのが、1試合平均のスプリント回数だ。順位表の上位5チームのうち、横浜F・マリノスが3位、鹿島アントラーズが4位、柏レイソルが6位と、上位陣の多くがスプリント回数の上位に入っている。

また順位表の下位3チームをみると、スプリント回数でもヴィッセル神戸が17位、ジュビロ磐田が18位と下位に位置する。

近年のJ1では、どのチームも組織的な守備ブロックを形成している。その守備ブロックを崩して得点を奪うためには、相手の想像を上回るか、動きで上回らなければならない。

前者では1タッチでの崩しや、予想外のタイミングでのクロス。後者では相手の帰陣を上回る素早いカウンターや、ドリブルでの突破といったものがイメージしやすいだろう。

想像を上回るには周囲との正確な連動が不可欠で、難易度は高い。動きで上回るのは個の力や少数で可能なため、比較的難易度は低い。ただしカウンターにせよドリブルにせよ、スピードは欠かせない。つまりスプリントが大切になる。上位チームの多くは、スプリントをいかして「相手の動きを上回る」ことができていると考えられる。

唯一の例外、川崎フロンターレ

ただし、現在5位ながら消化試合数が2つ少ない川崎フロンターレだけは例外だ。1試合のスプリント回数はリーグ16位。相手の動きを上回ることはあまりできていないはずだが、それでいてリーグ4位タイの32得点を奪えている。

フロンターレといえば、細かいタッチ数でのパスワークが特徴の1つで、その特徴通りに「相手の想像を上回る」ことができているということだろう。これは一朝一夕で真似できるものではない。監督が変わろうとも、クラブとしてブレない継続性と歴史が可能にさせたものだ。

そのほかには、スプリント回数13位の浦和レッズが順位表で8位にいるが、こちらは昨年就任したリカルド・ロドリゲス監督が新たなスタイル確立を目指す真っ只中。クラブとして辛抱強く待つことができれば、フロンターレのようにJリーグで少数派のスタイルを会得できるかもしれない。

そのほかの1試合あたりのスプリント回数で下位に位置するクラブは、順位表でも軒並み下位に位置している。時間をかけて独自のスタイルを獲得したクラブを除き、順位を上げるためにはスプリント回数が重要な指標の1つと言えるだろう。

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