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三浦知良と葛西紀明、50代でも現役を続けるアスリートの共通点

2022 6/20 06:00田村崇仁
三浦知良と葛西紀明,ⒸSPAIA,Ⓒゲッティイメージズ
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ⒸSPAIA,Ⓒゲッティイメージズ

レジェンドは競技者として「限界」つくらず

スポーツ医科学の進歩で競技寿命が昔より圧倒的に伸びたとはいえ、サッカー元日本代表で日本フットボールリーグ(JFL)、鈴鹿ポイントゲッターズに所属する55歳のFW三浦知良と、6月6日に50歳の大台に乗ったノルディックスキー・ジャンプのレジェンド、葛西紀明(土屋ホーム)は突出した存在だ。

一般的に人間の筋肉量は40代から50代にかけて低下し、アスリートに必須の瞬発力が衰えるといわれるが、2人のレジェンドは互いに刺激し合う存在でありながら、共通するのは競技者としての「限界をつくらない」という点だろう。

プロ37年目の55歳、今季は「フーテンのカズです」

「カズ」こと三浦知良は白髪交じりで見た目こそ年齢を感じさせるようになったが、その生き生きとした表情やサッカーへの情熱は健在だ。

今季はJ2横浜FCから国内4部相当のJFLに移籍。2月26日の誕生日ではお気に入りの映画「男はつらいよ」の寅さんを完璧にコピーした格好で登場し、プロフェッショナルなサービス精神も相変わらずだった。ロケ地が三重県内であることを明かし「『フーテンのカズ』です」と屈託ない笑顔を見せた。親交が深く、キャンプで臨時コーチを務めた武田修宏さんからは年齢にちなんで55本のバラも手渡された。

昨季のリーグ戦出場は1分のみ。実戦不足が懸念されたが、3月のJFL開幕戦では背番号11で先発デビューし「試合に出れば出るほど、体も反応してうれしい。忘れかけていたものをよみがえらせてくれる。まだまだ成長できる。うまくなれると信じている」とサッカー少年のように目を輝かせてコメントした。

リーグ最年長記録を大幅に更新し、今季は永井秀樹(FC琉球)が2013年にマークした42歳50日の最年長得点記録更新にも期待が懸かる。鈴鹿は昨季4位で三重県初のJリーグ入りを目指すクラブ。プロ37年目の新天地でも人気は高く、5月1日には79分間プレーした。

5月中旬に右脚付け根を痛めてから試合には欠場しているが、6月19日に花園ラグビー場で行われたFC大阪戦にも駆けつけ、控室で選手を激励。「ラグビーの聖地」で23年ぶりのサッカー公式戦ということあって1万2152人が詰めかけたスタンドの声援に応えるなど存在感はピカイチだった。

「アウェーにもかかわらずグラウンドで挨拶させていただいて感謝してます」と語ったキング。ファンもカズが再びピッチに立つ日を楽しみにしている。

50歳葛西は1月の国内大会で優勝、4年後へ再出発

スキー界の大ベテラン葛西は4年後のミラノ・コルティナ冬季五輪出場を目指して再スタートを切った。5月の宮古島合宿では北京冬季五輪金メダリストの後輩、小林陵侑ら20歳以上若い選手と一緒に汗を流し、現役の意欲をたぎらせている。

近年不振だったジャンプでも復活への一歩を刻んでいる。1月30日の雪印メグミルク杯ジャンプ大会(札幌市・大倉山ジャンプ競技場)では138メートル、137メートルの合計260.5点で若手を抑えて優勝し、ワールドカップ(W杯)メンバーが不在だったとはいえ、関係者を驚かせた。

2014年ソチ五輪銀メダリストの大ベテランは2月の北京五輪代表を逃し、連続出場は8大会でストップした。それでも挫折を経験しても前を向ける「再起力」と「継続力」が並外れている。数々の最年長記録を更新してきただけに、世界に再挑戦する意欲がますます燃え上がっているようだ。

課題の助走速度が上がるなど、加齢を気にするそぶりもなく、むしろ楽しんでいる様子さえある。札幌市が招致に乗り出している2030年五輪も見据えており、今後のテーマは「筋肉の質を高める」。ウエートトレーニングを増やし、海外から新コーチも招く方針だ。

レジェンドの挑戦は4年先どころか、その先も見据えて続いていく。

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