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Jリーグ“神ってる”GKランキング、日本代表の守護神・権田修一は9位

2022 4/28 06:00小林智明
権田修一,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

J1の最旬GKは苦労人GK上福元直人

普段はフィールドプレーヤーと同列で評価される機会が少ない因果なポジション、GKに焦点を当てたい。今季J1リーグで俗に言う“当たっている”GKは誰なのか。データを活用してランキング形式で紹介しよう。

メインで扱うデータは、Jリーグ公式HP内の「セーブ率(ペナルティエリア内)」。同HPのスタッツには「1試合平均セーブ数」もあるが、それは「セーブ率(PA外)」も含まれたもの。GKにとってより守るのが難しいのは、至近距離から打たれる機会の多いPA内シュートであり、「セーブ率(PA内)」の記録には好セーブが多く含まれていると推測できる。気になるランキングの結果は下記の通り。

J1主力GKのPA内シュートセーブ率ランキング


現在ランキングのトップに立つのは、意外にも京都サンガF.C.の32歳・上福元直人。大分トリニータ、東京ヴェルディなどで10季を過ごし、昨季は徳島ヴォルティス所属で念願のJ1デビューを飾り34戦に出場したものの、17位でチームは再びJ2へ。上福元自身は劣勢の展開が多かった中、シュートストップを連発したゲームも多々あり、即戦力として“個人昇格”を果たした。

今季J1開幕の浦和レッズ戦で完封勝利(1-0)、2節のセレッソ大阪戦(1-1)では終了間際に相手アタッカーと1対1になる絶体絶命の場面で動じず、シュートを打たれた刹那、右足を伸ばして防ぐスーパーセーブで窮地を救う。

3節のジュビロ磐田戦(1-4)で果敢な飛び出し後のファウルで一発退場となった影響から他のGKに比べ出場数が減ったのは、ランキング1位の遠因とも考えられる。

とはいえ、1試合平均セーブ数も3.6回(リーグ6位)と多く、ここまで複数失点を許した試合は皆無(先の磐田戦も退場前は1失点)。危機察知能力が高く、心理面も含めてシュートを待つ適切な準備ができているのだろう。PA内シュートのキャッチ率も37.5 %とリーグ2位の好成績。ランキング2位のヤクブ・スウォビィク(FC東京)を、セーブ率(PA内)で10%以上も引き離しての1位の勲章は伊達じゃない。

欧州の正統派GKスウォビィクが神セーブ連発

そのスウォビィクも、昨季J2に降格したベガルタ仙台からFC東京へ個人昇格。アルベル新監督の下、チームは未成熟ながら9戦5失点とリーグ最少失点を記録しているのは、このポーランド人守護神の功績が大きい。

1試合平均セーブ数は3.3回(リーグ8位)、3節・C大阪戦(1-0)でチームを救った3つの神セーブなど、驚異的な反応が持ち味。ゴール寸前でボールを弾き出すため、PA内シュートパンチ率も45.5 %(リーグ1位)と高確率だ。

足技も武器、朴一圭ら3人の現代型GK

FC東京と並んでリーグ最少失点中なのがサガン鳥栖、ゴールの門番は朴一圭が務める。身長190㎝のスウォビィクがどっしり構える「静」のGKなら、180㎝の朴は「動」のGK。昨季は、GKの1試合走行距離のJ1新記録、8.186kmを樹立。今季も平均走行距離7.284㎞を記録中で、ディフェンスの背後のケアなど広範囲の守りが光る。1試合平均セーブ数1.9回と少なめなのは、ピンチを未然に防いでいるからだろう。

また、攻撃的GKとして最後尾からのビルドアップに積極的に関与。1試合平均ロングパス数はフィールドプレーヤーも含めて最多の17.3本(成功率43.6%)、1試合平均パス数もGK内2位の46.7本と多い。

パス数に関しては、似たようなスタッツを持つGKが他に2人いる。20年途中に朴とトレードする形で鳥栖から移籍した横浜F・マリノスの高丘陽平は、1試合平均パス本数47.4本でGK内1位、同ロングパス数は10.1本(成功率57.4%)とアベレージが高い。

もう一人は北海道コンサドーレ札幌の37歳、熟練GK菅野孝憲。同パス数はGK内3位の45.8本、同ロングパス数15.1本(成功率54.5%)は、朴に次ぐ2番目の本数になる。

3人が所属するのは、いずれもマイボールの「即時奪回」を標榜するチームで、基本的にハイラインを敷く。そのため高い位置でリベロ(センターバック)的な動きも求められ、彼らのパス本数が増えるのは必然と言える。

権田修一を脅かす?遅咲きGKの急成長

日本代表の正GK権田修一(清水エスパルス)は、今回のランキングでは真ん中の9位に甘んじた。ただし、PA内シュートキャッチ率は38.7%で堂々1位に。シュートを弾いてこぼすようなキャッチミスの少ないことが、数字から読み取れる。また、シュートコースに対する位置取りの上手さが、キャッチ率の高い秘訣なのかもしれない。

今回のランキングに挙げた18人の中で、1試合平均セーブ数が最も多かったのは4.2回の三浦龍輝(磐田)だ。29歳の守護神は、劣勢を強いられる時間が長い分、仕事量が多い。7節の川崎フロンターレ戦では16本のシュートを浴びるもファインセーブを連発し、1-1のドローに持ち込んだ。

柏レイソルのキム・スンギュと同率で、ランキング3位の村上昌謙(アビスパ福岡)も29歳の中堅で、昨年初めてJ1のピッチに立ったばかり。今季はセーブ率の高さとチーム全体のソリッドな守備が相まって、ここまで柏と並ぶリーグ2番目に少ない失点数6をマークする。

GKは経験が物を言うポジション、欧州でもキャリアを積んだ権田の日本代表・正守護神の座は揺るぎない。しなしながら、遅咲きのシュートストッパーたちが今後も好調を継続すれば、さすがの権田もうかうかしていられないはずだ。

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