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長友佑都や大迫勇也らJリーグ復帰組は輝けるのか?先輩レジェンドの足跡から検証

2021 9/28 11:00小林智明
長友佑都,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

中村俊輔は復帰後、Jリーグ史上最年長MVPを獲得

今夏に長友佑都(FC東京)、酒井宏樹(浦和レッズ)、大迫勇也(ヴィッセル神戸)の現役日本代表をはじめ、大物たちがJリーグに戻ってきた。日本を離れ、欧州でのプレー歴が長い彼ら“出戻り組”は、再びJ1の舞台で活躍できるのだろうか。

2021年夏にJリーグ復帰したW杯経験者


そこで、過去のワールドカップ経験者で、欧州クラブに長期間在籍したのち、J復帰を果たしたレジェンドたちのキャリアを読み解き、長友らの2021年出戻り組の中で誰が活躍できそうなのかを検証したい。

「活躍」といってもサッカーの場合、記録に残らないチームへの貢献度などもあるため一概には言えないが、一つの目安となるのは「タイトル」だろう。しかしながら、過去の出戻り組でJ1リーグ制覇を成し遂げた選手は、06年にレッズで初優勝した小野伸二(現北海道コンサドーレ札幌)しかいない。

一方、天皇杯王者になった選手は4人いる。直近では神戸の酒井高徳が日本復帰1年目の19年度決勝で、鹿島アントラーズを破って優勝。自身初のタイトルを手にした。その後、現在まで不動のサイドバックとして躍動中だ。

17年度では、清武弘嗣が酒井高と同じくセレッソ大阪復帰1年目に優勝。帰国後は4度の負傷に見舞われ苦しんだが、それでも横浜F・マリノスとの決勝では延長を含め120分ピッチで走り続け、激闘を制した。

13年度の元日には、中村俊輔(現横浜FC)がF・マリノスのキャプテンとして、サンフレッチェ広島を下して頂点へ。また、同シーズンのリーグ戦ではサンフレッチェに最終節で逆転され2位となり、中村自身は35歳にして2度目のMVPに輝いた。

小野は06年度にリーグ戦との2冠を達成。天皇杯では4試合3得点の活躍で、戴冠に貢献した。ただ、小野は当時27歳とまだ若く、08年にボーフム(ドイツ)に移籍し、再び欧州へ羽ばたいている。

欧州で長期間プレーしJリーグに復帰した主なW杯経験者

古巣に戻った選手、サイドバックの選手が有利?

彼ら4人の共通点を探すのは難しいが、中村、小野、清武の3人は、古巣に帰還した事実がある。体が覚えている環境で、自分のことを知るスタッフ、選手が残っていれば、多少なりともチームに順応しやすくなるのではないか。

この夏、古巣に電撃復帰した長友と乾貴士(セレッソ)は、10年以上も籍を外していたわけで、サッカー・環境ともに昔と異なる“浦島太郎状態”の部分があるのは仕方ない。ただ、他の出戻り組よりも懐かしの“ホーム”の力で、Jの感覚を取り戻すのは早いかもしれない。

ポジション的にも長友は、酒井高と同じサイドバック職人。当然、チーム状況にもよるが、タイトル獲得という「活躍」を見せられる下地を持っている。

酒井宏は新天地に古巣・柏レイソルではなくレッズを選んだものの、右サイドバックが本職。同ポジションのA代表の先輩、内田篤人はケガに泣き、アントラーズ復帰後は満足にプレーできなかったが、酒井にはその心配がない。酒井高以上のJでの再躍動を見せてもおかしくない。

大迫勇也らには欧州での激闘で目に見えない疲弊が…

誤解を恐れずに言えば、不安要素を抱えている選手もいる。ヴィッセルの大迫と武藤嘉紀だ。頑強なDFがひしめき、守備は組織よりも個の勝負を重視する欧州では、激しいボディーコンタクトが日常茶飯事。特にFWの選手は、ボールハンターたちの“餌食”となり、重量感あるチャージを受け続け、知らぬ間に肉体が疲弊していくのである。

そのためだろうか、大迫を除くW杯戦士のFWで長期間、欧州でプレーした選手は、高原直泰(現沖縄SV)しかいない。その高原も日本復帰後、08年よりレッズで3年間プレーしたが、本来の姿を取り戻せず、リーグ戦で計10得点しか奪えなかった…。

FWのサンプルが高原だけと少なく、同ポジションの大迫、武藤にそのまま当てはまるとは言い難い。また、大迫と武藤は中盤でプレーする機会もあったため、高原ほど消耗が激しくない可能性もある。

とはいえ、武藤はマインツ時代には大ケガを負いながら約6年間、欧州を渡り歩き、大迫は約8年間もドイツの激しい戦場に立ち続けた。高原の事例に鑑みて、不安がないとは言い切れない。

同様に長友は、21年出戻り組最長の11年欧州でプレーし、現在35歳。自他ともに認めるタフガイではあるが、今後、衰えの足音が忍び寄る。前述とは矛盾するが、ネームバリュー通りの活躍をできる保証はない。

話はJリーグ誕生前に遡るが、ブンデスリーガで9年間プレー後に帰国し、日本リーグで古巣・古河電工(現・ジェフユナイテッド千葉)を優勝させた名選手がいた。ドイツでのプロ生活の後半に左サイドバックをこなした奥寺康彦氏(現・横浜FC会長兼スポーツダイレクター)である。今のJリーグとレベルの差こそあるが、金字塔を打ち立てた功績は計り知れない。

その奥寺氏が日本に戻ったのが34歳の時。それを考慮すれば、年齢は関係ない。J1リーグで出戻り組の中から、小野伸二以来のリーグ王者に導く真のレジェンドが現れるだろうか。

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