決定率ではディエゴ・オリヴェイラが優勢
いよいよ大詰めを迎えるJ1リーグ。順位争いと共に気になるのが得点王争いだ。
現在の得点ランク1位は、15点の前田大然(横浜F・マリノス)と古橋亨梧(前ヴィッセル神戸)が並ぶ。3位は14点のレアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)、4位に12点のアンデルソン・ロペス(前・北海道コンサドーレ札幌)、ディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)、オナイウ阿道(前F・マリノス)が続く。
ご存じのとおり、古橋、アンデルソン・ロペス、オナイウの3人は海外へ移籍したので、残る上位3人は前田とレアンドロ・ダミアン、ディエゴ・オリヴェイラ。その下は7位の小林悠(フロンターレ)、チアゴ・サンタナ(清水エスパルス)の各10点とやや開きがある。順当なら現状のトップ3から得点王が生まれると見られる。
そこでデッドヒートを繰り広げる3選手のデータを比較し、今後の行方を占いたい。
表のシュート数を見てみると、出場時間が3人の中で一番短いにも関わらず、レアンドロ・ダミアンが67本と他の2人をリード。その分、シュート決定率は20.9%と少し落ちるが、サッカーはある意味、シュートを打ってなんぼ。点取り屋としてシュートが多いに越したことはないので、良い傾向にある。
反対にディエゴ・オリヴェイラは、出場時間が一番多いのにシュート数は他の2人より約20本少ない。これは4月から5月にかけて5連敗を喫するなど、チーム事情に起因する。
また、F・マリノス、フロンターレと違い、FC東京は主体的にボールを握るチームではないため、攻撃の手数が少なく、シュート数ではどうしても見劣りしてしまう。だが、その分シュート決定率は3人の中でトップの26.7%。決定力の高さで3番手からの逆転を狙う。
前田はウイングながら、64本の数字は立派。昨年F・マリノスへ移籍し、CFから左ウイングにコンバートされたが、今季はプレーが整理され、左から中へ入るシャドーストライカー的な動きがすっかり板に付いた。それが昨季通算3点だった得点力が、一気に開花した要因だろう。
前田は頭、レアンドロ・ダミアンは右足で稼ぐ
続いて、部位別得点では、前田がヘディングで5得点、レアンドロ・ダミアンが右足で10得点と各々リーグ1位の数字を記録中。前田は身長173㎝と上背こそないが、猛烈なスピードで飛び込むダイビングヘッドが得意。特にクロッサー水沼宏太と相性が良く、右クロスに合わせる低空ヘッド弾を4月16日のコンサドーレ戦などで挙げている。また利き足の右で7点、左足で3点と、両足をしっかり使えるのも強みだ。
ディエゴ・オリヴェイラも左足3点、右足5点、頭4点と、どこでも遜色なく点が取れる万能型ストライカーらしい。それぞれ前田に近い数字を積み上げている。
レアンドロ・ダミアンは、利き足の右足ゴールが10点と大半を占める。キック精度の高さはさすが元ブラジル代表FWで、特筆すべきはボレーの上手さ。5月度のJ1月間ベストゴールに選ばれた5月26日の湘南ベルマーレ戦での芸術的バイシクルシュートをはじめ、3月3日のセレッソ大阪戦での弾丸ボレーなど、いずれも右足で叩き込んだ。左足の得点が1点と極端に少ないのが気がかりだが、それでもすでに昨季の通算13得点を上回っている。
チーム内に競争相手がいるほうがプラス材料?
チーム内得点割合は、前田とレアンドロ・ダミアンがともに22、23%台なのに対し、ディエゴ・オリヴェイラは29.3%。FC東京はレアンドロ、アダイウトンが各7得点を挙げており、ブラジル勢が全41得点中26点を稼いでいるが、真のゴールハンターと呼べるのはディエゴ・オリヴェイラ、ただ一人。相手DFにとってはターゲットを絞って守ることができる。
一方、前田のF・マリノスはトゥールーズ(フランス)へ7月に移籍したCFのオナイウに代わって、レオ・セアラが好調。8月はハットトリックを含む7試合6ゴールの爆発で、J1月間MVPを受賞。これまで9ゴールを記録しており、前田とともに相手DFは両者に注意を払わなければいけない。
同様のことがフロンターレにも言える。現在10得点を挙げ、6年連続で二桁得点を達成した小林悠という高性能ストライカーがいるからだ。昨季に続きレアンドロ・ダミアンと上手く共存しており、相手DFが2人を90分間、止め続けるのは困難である。
有能な点取り屋が2人いれば、チャンスというパイを分け合ってゴールが稼ぎづらいかもしれない。ただ、敵のマークが両エースに分散するメリットのほうが、より有益ではないだろうか。
最終戦が優勝&得点王を決める天王山に?
今後の日程では、F・マリノスとフロンターレが残り9戦、FC東京は残り8戦になる。内訳を見るとフロンターレは残り6戦をホームで戦える。しかも、9月26日のベルマーレ戦から5戦連続でホーム等々力競技場でのゲームが続くのがポイント。レアンドロ・ダミアンには追い風になるだろう。
F・マリノスとFC東京はともに残りホームゲームは5試合。残りカードの相手との前回の対戦結果を振り返ると、前田が有利かもしれない。F・マリノスは、横浜FCに5-0(4月24日)で大勝したのをはじめ、コンサドーレ、ガンバ大阪、FC東京、浦和レッズにそれぞれ3点を奪って勝利した。前田自身もレッズ戦(3月14日)では2点を沈め、横浜FC戦、コンサドーレ戦で各1点を入れたので期待できる。
フロンターレは、セレッソに3-2(3月3日)、FC東京に4-2(4月11日)、YBCルヴァンカップ準々決勝でレッズに3-3(9月5日)だったため、再び点の奪い合いを演じる可能性がある。レアンドロ・ダミアンは、そのセレッソ戦で2ゴールをマーク。FC東京、レッズとの両ゲームでも各1点を決めており、相性は悪くない。
片やFC東京は、残りカードにあまり恵まれていない。これまで3点を奪った相手との再戦はなく、下位との対戦も17位・徳島ヴォルティス戦を残すのみだ。
これらのデータを総合すると、得点王争いは前田とレアンドロ・ダミアンとの一騎打ちとなるのではなかろうか。なお、リーグ戦暫定1位フロンターレと2位マリノスが対峙する神奈川ダービーは、最終節に用意されている。クライマックスの一戦で、優勝&得点王が決まるかもしれない。
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