直近10年間の優勝は日本人8回、外国人2回
29年目のシーズンを迎えるJリーグの歴史をさかのぼり、J1優勝監督にまつわるデータをチェック。日本人と外国人では、どちらの優勝回数が多いのか。最多優勝の監督は誰なのかなど、気になる記録を探ってみた。そして今季J1の優勝監督候補も占ってみたい。
日本人監督17回、外国人監督11回。これは単純にそれぞれの延べ優勝回数。パーセンテージでは、日本人が60.7%を占める。
変遷を辿ってみると、1993~2005年は9回対4回で、日本人が外国人を大きく上回る。06~11年はオズワルド・オリヴェイラ監督(鹿島アントラーズ)の3連覇をはじめ、外国人監督が5年連続で優勝した。しかし12~20年は、19年のアンジェ・ポステコグルー監督(横浜F・マリノス)を除き、日本人監督が8度も栄光を手にしている。
外国人の中では、アントラーズ勢+ネルシーニョ(柏レイソル)のブラジル人が延べ8回で大半を占める。ちなみにアントラーズはJ1最多の8度の戴冠を誇るが、16年の石井正忠以外はすべてブラジル人が指揮を振るった。
松木安太郎は36歳の若さで初代王者へ導く
最多優勝監督はオリヴェイラ 、森保一(サンフレッチェ広島)、鬼木達(川崎フロンターレ)で、唯一3年連続Vを果たしたのがオリヴェイラである。3人の共通点は、就任1年目でリーグチャンピオンに輝いたこと。さらに森保と鬼木は、お互いルーキー監督ながら連覇を果たし、1年置いて3度目のVを遂げたのも一緒だ。
最高齢優勝監督は11年当時61歳だったネルシーニョ、2位は59歳のオリヴェイラ。最年少優勝監督は、Jリーグ元年に36歳だったヴェルディ川崎・松木安太郎(翌94年も優勝)。2位は95年の早野宏史(横浜マリノス)、96年のジョアン・カルロス(アントラーズ)の40歳。こう並べるとJリーグ黎明期は比較的、青年監督が優勝経験したことが分かる。
優勝時のネルシーニョと松木の年齢は25歳差(!)。松木は、93年に参謀役のフランツ・ファン・バルコムヘッドコーチの支えがあったとはいえ、異例の若さで偉業を成し遂げたと言えるだろう。なお、延べで計算した優勝監督の平均年齢は47.5歳だった。
J1史上初の就任5年目のV達成を狙う鬼木達
監督就任年数では、いきなり1年目で優勝したのは先に挙げたオリヴェイラ、森保、鬼木、松木、早野、ジョアン・カルロスに加え、桑原隆(ジュビロ磐田)、ゼ・マリオ 、トニーニョ・セレーゾ(共にアントラーズ)、岡田武史(横浜F・マリノス)の計10人と一番多かった。
2位の2年目も9人で多い。3位の3年目から大幅に減少して5人、4位の4年目は3人のみ。西野朗 (ガンバ大阪)と森保の日本代表監督経験者2人に、昨季Vの鬼木が肩を並べている。
このように就任年数と比例して優勝監督の人数は減り、5年目以降はゼロ。そこで脚光を浴びるのが、鬼木監督である。今季就任5年目の長期政権で、前人未踏の4度目の戴冠を果たせるか。年齢的には今年で47歳を迎え、前記の優勝監督の平均年齢とほぼぴったり。昨季“最強王者”を構築しただけに、偉業達成も現実味を帯びてくる。
外国勢では鹿島ザーゴ、浦和ロドリゲスが期待大
データを総合すると、優勝監督になる可能性が高まるキーワードは「日本人」「平均47.5歳」「就任1、2年目」ではないだろうか。それらをもとに今季のJ1監督の中で探ると、三浦淳寛(ヴィッセル神戸)と長谷部茂利(アビスパ福岡)が、最有力の優勝監督候補に挙げられる。
三浦は昨季途中からの就任だったが、両者は就任2シーズン目。さらに三浦が現在46歳、長谷部が49歳で47.5歳に近いからだ。ヴィッセルは昨季14位、アビスパはJ2からの昇格組ではあるが、ミラクルを起こす可能性があるかもしれない。
続いて、データの間口を広げ、「日本人」だけでなく「外国人」も含めたい。すると、2人の候補者が浮上する。1人目はアントラーズ就任2年目、現在51歳のブラジル人、ザーゴ。昨季は5位と上位に迫っており、戦力的には優勝を飾っても不思議ではない。
2人目はJ1昇格を決めた徳島ヴォルティスを去り、今季は浦和レッズの新監督に就いたリカルド・ロドリゲス、46歳。スペイン出身の戦術家が、昨季10位のレッズを変貌させて、一気に頂点を狙う。
近年では19年当時F・マリノス就任2年目だったポステコグルー監督が、中位クラブを鍛え上げて覇者になった。鹿島と浦和にとっては新シーズンを迎えるにあたり、心強いデータになるはずだ。
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