長友選手がケトン食を始めた理由
サッカーのワールドカップロシア大会で日本代表W杯出場記録を更新した長友佑都選手。長友選手の活躍を支えていたものの一つに、「ケトン食」がある。ダイエット経験者なら一度は耳にしたことがあるかもしれない。ダイエット以外にも運動パフォーマンスを高める効果があると言われている「ケトン食」について、長友選手が注目した理由や実践方法を例に紹介していく。
ロシアワールドカップの最終予選を控えていた時期。若手の選手が活躍する中「自分はこのまま選手生命を終えてしまうかもしれないという危機感を覚えた29歳の長友選手。「このまま何もせずに終える訳にはいかない」と考えた長友選手は、食事を根本的に見直すことにした。
まずは外食をひかえ、体に良いと言われるオーガニック食品を取り入れた。同時に、食事に関する勉強を始めた長友選手の目に止まったのが「ケトン食」だっだ。
人は糖質と脂質をエネルギー源として使うが、糖質は体内に蓄えられる量が約400gと限られている。通常の人であれば12時間はもつと言われている糖質エネルギーも、サッカー選手となれば90分の試合後半で枯渇してしまう。これでは、選手として最高のパフォーマンスを発揮することができない。
だが、脂質は数kg単位で体内に蓄えることができるのだ。それなら、沢山ある脂質を活用できる体にすればいいのではないかと考えた長友選手は、脂質を最大限に活かすことができる「ケトン食」に注目したのだ。
脂肪をエネルギーとして使う食事がケトン食
「ケトン食」を言い換えれば「糖質を極限に抑えた食事」だ。では、長友選手が実践したケトン食とは一体どのような食事なのだろう。
先述の通り、体のエネルギー源は糖質と脂質だ。体内に糖質が蓄えられている場合、脂質がクエン酸回路という経路を通りエネルギー源となる。そして、糖質が枯渇すると体内脂肪が分解され、作り出されたケトン体がエネルギー源となる。
つまりケトン食とは、糖質の摂取量を抑えることで多くの脂肪を分解し、ケトン体を作り出す能力を高めエネルギー源に変えるための食事なのだ。
実際、通常食を摂取しているアスリートに比べ、ケトン食を摂取しているアスリートは脂肪消費量が上昇し、長時間運動のパフォーマンスも向上したという実験結果が得られている。
体内の脂肪が消費されやすくなるケトン食。最近ではダイエットにも有効的だと言われている。
しかし「糖質を極限に抑えた食事」と言われても、摂取エネルギーの60%を糖質から摂取している私たちには、ピンと来ないのが正直なところだ。そこで、実際のケトン食はどのようなものなのか具体例を示すことにしよう。
ケトン食によい食材とは?
長友選手の著書では、糖質制限中に摂取した食事が紹介されている。下記はある1日の食事例だ。
朝食 : スムージー
昼食 : サラダ、野菜のスープ、鶏胸肉のソテー
夕食 : サラダ、スープ、白身魚 & 青魚のソテー
昨今、ダイエット中によく利用されるスムージー。長友選手は様々な野菜や果物を混ぜて飲んでいるようだ。糖質を少なくし、主に野菜や果物を入れることでビタミンやミネラルが補給できる。
野菜をメインとした昼食は鶏胸肉を食べ、体を構成する筋肉の元となるタンパク質をしっかり補給している。
夕食時も野菜を欠かさず食べ、タンパク質を豊富に含む魚類を摂取している。青魚にはEPAやDHAといった、体に良いとされているオメガ3系脂肪酸も豊富に含まれており、糖質制限中にはオススメの食材だ。
この食事例を見ると、体の調子を整えるために必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなど大事な栄養素をしっかり摂取していることが分かる。
他にも卵やチーズ、大豆製品に加え、肉類も体に良い食材とされている。肉類は、タンパク質や脂質を多く含んでいるものの糖質はあまり含まれていない。そのため、積極的にケトン食に取り入れたい食材だ。
これらの食材を使った料理例として、オムレツや卵焼き、ステーキ、豚肉の生姜焼き、すき焼き、焼き魚などが挙げられる。また、ビタミンやミネラルを補うため、毎回サラダを食べるのが理想的だ。
「ケトン食」を実践した長友選手は90分間走り続けられる体を手に入れた。残念ながら敗退してしまったがロシアW杯でW杯通算出場時間が1000分を突破。GK川島選手とともに日本人歴代最長記録を塗り替え、最多出場記録も更新した。
この記録の裏には、選手としての高いパフォーマンスだけでなく、それを90分維持する体質を作り上げた「ケトン食」があったのだ。
プロスポーツ選手と一般の人では目的はもとより運動量、一日の消費カロリーに差があり過ぎるため必要性は少ないが、ダイエットに取り組みながらなかなか効果が出ない方や、これからダイエットを始めようと思っている方、普段の運動量が豊富な方はケトン食を検討してみてはどうだろうか。