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高校生年代の真の日本一を決める高円宮U-18サッカーリーグとは?

2017 4/12 20:20芝田カズヤ
サッカー
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高校生年代のチャンピオンを決める大会

高円宮U-18サッカーリーグは高校年代の真の日本一を決める大会だ。 日本のサッカー界では高校生年代を2種と呼ぶが、この2種には2つのタイプのサッカーチームがある。
1つは高校のサッカー部で、もう1つがクラブチームだ。高校サッカー部は学校の部活動という日本独特のシステムによって成り立つチームで、日本サッカーを古くから支えてきた歴史がある。一方のクラブチームは学校という括りではないサッカーチームで、Jリーグ開幕を機にJリーグの下部組織として力のあるクラブチームが出現し存在感を増している。
これまで、部活とクラブチームはどちらも日本サッカー協会に登録されているチームではあるのだが、全国高等学校体育連盟と日本クラブユースサッカー連盟ということなる連盟に所属しているため、基本的に公式戦で対戦することはなかった。
それぞれの連盟に全国大会があって、部活にはインターハイや高校選手権が、クラブにはクラブユース選手権があり、それぞれの日本一を決めていた。 部活とクラブでは試合での交流も少ないということもあり、両カテゴリーのチームが参加できる大会として高円宮U-18サッカーリーグが誕生したのだ。

リーグの概要

リーグの誕生は2011年で、それまで高校とクラブが対戦していた高円宮杯全日本ユースサッカー選手権大会の後継大会としての位置付けでスタートしている。
リーグは1部?3部で構成されていて、1部は東西それぞれ上位10チームずつの計20チームから構成されているプレミアリーグだ。プレミアリーグはチームの所在地によってEASTとWESTに分かれている。EASTとWESTのリーグ1位同士がチャンピオンシップという決勝大会を行い、その試合に勝ったチームがその年の真の日本一となる。またEAST、WESTの各下位2チームの計4チームは後述するプリンスリーグへと降格する。
2部はプリンスリーグと呼ばれ、全国を9つの地域に分けて各地域のチャンピオンを決定する。各地で上位に入ったチームはプレミアリーグ参戦権をかけた参入戦に進出し、次年度のプレミアリーグ参戦チームを決める。またプレミアリーグ同様、プリンスリーグの下位チームは3部となる都道府県リーグへと降格する。
都道府県によってチーム数が異なるため、その中で1部、2部、3部など、複数のディヴィジョンに分かれて構成される。1部の上位チームはプリンスリーグへの参戦権をかけた参入戦へ進出することができる。

レベルの高い戦いが展開されるプレミアリーグ

2015年の日本サッカー協会のデータによると、サッカー協会に登録されている2種のチームは4109チーム。その中の20チームとなるのでプレミアリーグに所属するためには200倍以上の倍率を乗り越えなければならない。必然的にプレミア所属のチームはレベルが非常に高くなる。
実力もさることながら、リーグ戦は東西に分けているとはいえ試合はホームアンドアウェイで行われるため、高校生でありながら、選手たちは頻繁にそのエリア内で遠征を行うことになる点もプレミアである特徴の1つだ。
例えば2016年のEASTの最西端は静岡の清水エスパルスユースで最北端は青森の青森山田高校なので、この2チームはそれぞれ静岡と青森へ遠征をすることになる。レベルの高いチームとはいえ、選手たちは皆高校生であり、授業もあるなかで学校を休んで、プロのように遠征を行うことは容易なことではない。
しかしプレミアを経験した選手の中から、卒業後そのままプロの選手が誕生するということもあり、2016年にはチャンピオンシップを制し、さらに高校選手権も制した、青森山田高校のGK廣末陸(ひろすえりく)選手は高校卒業後、FC東京に入団している。
また同じく青森山田の高橋壱晟(たかはしいっせい)はジェフ千葉に入団している。さらに各Jリーグのユースチームからトップチームへ昇格する選手もいることから、プレミアリーグは、プロ予備軍のリーグ戦と言っても過言ではない。

プリンスリーグ、都道府県リーグもレベルは十分高い

高円宮杯U-18サッカーリーグの2部はプリンスリーグと呼ばれ、全国上位20校を除く各地域によるリーグ、つまり地域の強豪チームが集まったリーグとなる。
全国を9つの地域に区分し行なわれる。プレミアリーグ所属でなくとも、プリンスリーグに属するチームの中には多くの強豪校も存在し、関東の山梨学院高校、北信越の富山第一高校や星稜高校、東海の四日市中央工業高校、静岡学園高校など、枚挙にいとまがないほど全国制覇を経験しているチームが存在する。
また、その下の3部は県リーグとなり、その中にも全国レベルの強豪校は存在する。第95回全国高等学校サッカー選手権大会でベスト4に入った佐野日大は栃木県リーグ1部の所属だ。 この高円宮U-18サッカーリーグでは、1つの高校、クラブから複数のチームを出場させることができる。どのスポーツにおいてもほとんどはその学校、クラブの1軍、1チームしか試合に出場できないが、このリーグでは複数チームを出場させることができるという他競技にはない特徴を持つ。
有名強豪校の2nd、3rdチームがプリンスリーグや県リーグに所属している場合もあり、例えば、プレミアリーグ所属の青森山田高校は2nd?4thチームを2部東北プリンスリーグ3部青森県リーグそれぞれに出場させており、その中で優勝もしくは上位に入るなどしている。県リーグといえども県内1部の上位リーグにおけるそのレベルは決して低くない。
複数チームの出場が可能になることで、多くの選手を抱えるチームであっても全員に公式戦の機会を提供することができる。 同じ試合でも練習試合と公式戦とでは全くの別物なので、選手として成長する上で非常に大きな意味を持つと言える。

高円宮U-18サッカーリーグの高校生年代における役割

高円宮U-18サッカーリーグのメリットは、高校とクラブという、ことなる形態のチームが公式戦で戦うことができること、また、各高校、クラブが複数チーム参加させられるため、いわゆる補欠選手の公式戦出場機会が確保されていることなどが挙げられる。
また、リーグ戦であるであるということもメリットのひとつとして挙げられる。一発勝負のトーナメントにおいては、負けたら終了なので、その試合のみ勝つための作戦を立てることをどうしても強いられてしまう。また、大差がついた段階で試合をその後の展望を諦めてしまう選手も、もしかしたらいるかもしれない。
一方リーグ戦は、長期にわたって行われるため、例えば主力選手であっても調子が悪ければ温存して次戦に備えさせるという選択もできるし、大差がついていても得失点のために1点でも取り返そうとする姿勢が生まれる。
また試合は1週間ごとに定期的に行われるので、試合から試合への間の1週間に何をやればいいのか、チームの監督、コーチ、選手自身にも考える時間を与える。 もちろんトーナメントのように負けたら終わりという大きなプレッシャーのかかる試合を経験することも選手にとっては非常に意味がある。 リーグとトーナメントどちらが良くて、どちらが悪いということではなく、両方を経験することで2種年代の選手の成長を促すことができる。
そういった点において、高円宮U-18サッカーリーグは高校生年代において大きな意味を持ち、ひいては日本サッカーのさらなる発展のための役割を担っていると言える。 2017年も高円宮U-18サッカーリーグが行われる。是非注目してみてほしい。