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冬季五輪の花形アルペンスキーの種目解説、トップ選手は年収数億円

2021 9/26 11:00田村崇仁
アルペンスキーの皆川賢太郎,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

高額賞金がアルペン人気証明

冬季五輪の花形競技といえば、日本では伝統のスキージャンプやスピードスケート、フィギュアスケートになるが、世界的に見れば北米中心のアイスホッケーや欧米で人気を誇るアルペンスキーだろう。

アイスホッケーの最高峰、北米プロアイスホッケーNHLの平均年俸約3億円ともいわれており、歴史と伝統を持つアルペンスキーもスポンサー収入とワールドカップ(W杯)など各大会の賞金を合わせれば1億円を軽く超えるトップ選手も少なくない。

欧米各地を転戦するW杯の年間賞金額はトップクラスになると5000万円を超え、テレビCMなどに出演する選手も多く、その億単位の高額収入が競技の人気を物語る。

日本は技術系で岡部哲也や皆川賢太郎ら好選手輩出

アルペンスキーは旗門を通過しながら斜面をいかに速く滑り降りるかを競う競技。「スピード系」と呼ばれる滑降とスーパー大回転は滑走距離が長く、コブを飛ぶなど迫力が最大の魅力だ。滑降は男子なら最高時速が140キロにも達する。

一方で「技術系」と呼ばれる回転と大回転は急斜面での高度なターン技術が求められ、日本勢は主に技術系で過去に岡部哲也や木村公宣、皆川賢太郎、佐々木明、湯浅直樹といった好選手を輩出している。

スキー板の長さは滑降が最も長く、高い操作性が必要な回転が最も短い。スピード系種目と回転を1回ずつ滑って合計タイムで競うアルペン複合と、2018年平昌冬季五輪から新たに採用された男女計4人による混合団体もある。

猪谷千春が1956年冬季五輪で初メダル

欧州のアルプス地方で20世紀に発展したスキー技術であるアルペンは、ドイツ語で「アルプスの」という意味。冬季五輪では1936年ガルミッシュ・パルテンキルヘン大会で初めて男女複合が実施され、1948年サンモリッツ冬季五輪で男女の滑降と回転の2種目が追加された。

日本勢は猪谷千春が米ダートマス大留学中に出場した1956年コルティナダンペッツォ五輪のアルペンスキー男子回転で、当時最強を誇ったオーストリアのトニー・ザイラーに次ぐ2位に入り、冬季五輪で日本勢初のメダリストとなった。

アルペンでは五輪、世界選手権を通じてメダルを獲得した唯一の日本選手。幼少期からスキーの英才教育を受け、高校生で初出場した1952年オスロ五輪の回転は11位だった。1958年にオーストリアで開かれた世界選手権でも回転で銅メダルを手にした。

滑降(ダウンヒル)

アルペンのスピード系で花形種目。最もコースが長く、設定されるターン弧が大きい。時には時速140キロを超え、男子は標高差800メートル以上、女子は500メートル以上のコースを一気に滑り降りる。

20〜30mを超えるジャンプを飛ぶこともあり、一つのクラッシュが生命の危機につながる可能性がある。1992年アルベールビル五輪では時速200キロを超える「スピードスキー」が公開競技になったが、正式競技入りは危険すぎるため見送られた。

滑降は安全を期すために、原則としてコースの下見と3日間の公式練習が義務付けられ、選手たちは少しでも空気抵抗を減らしてタイムを縮めようと、ウエア、ブーツにも工夫を凝らしている。

スーパー大回転(スーパーG)

五輪では1988年カルガリー大会から採用された比較的新しい種目。回転、大回転の技術系に対し、滑降と合わせてスピード系に分類される。

スピードと大回転のターン技術の両方が求められるタフな種目で、最高時速は100キロを超え、高速ターンの技術が要求される。ターン中にレーサーにかかる遠心力は大回転以上とされる。

国際スキー連盟(FIS)の競技規則ではコースの標高差は男子で500―650メートル、女子は400―600メートル。

大回転(ジャイアントスラローム)

五輪では1952年オスロ大会で初めて登場。アルペンスキーの中で回転とともに技術系種目に分けられる。旗門セッティングが異なるコースを2本滑り、その合計タイムで順位が決まる。

ワールドカップ(W杯)の場合、コースは標高差300メートル以上とされ、回転より長い。旗門間の距離は10メートル以上、旗門の幅は4―8メートルと決められている。旗門数は標高差の12―15%。斜面の変化に対応した適切なラインを定めるための戦略性と、ロスの少ないターン技術が要求される。

回転(スラローム)

アルペンスキーで最も細かいターン技術が要求される種目。日本勢では2006年トリノ冬季五輪で皆川賢太郎が3位と0秒03差の4位に入り、アルペン種目の日本勢で猪谷千春以来50年ぶりの入賞を果たした。

男子の場合、コースの標高差は約200メートルで、旗門数は60―70が標準となっている。選手は少しでもタイムを縮めようとコースの内側を通過し、ポールをなぎ倒しながら直線的に滑るため、顔面保護用のヘルメットやフェースガード、前腕、すねなどにプロテクターを着けている。

アルペンスキー混合団体

2018年平昌冬季五輪から採用された種目の一つ。各国で男女混合のチームを編成し、16チームがトーナメント方式で戦う国別対抗戦。対戦する2チームの選手が1対1で滑るパラレル回転方式で、男女各2レースを行う。

先着した選手のチームが1点を得て、同タイムの場合は両チームに1点ずつが与えられる。全レースの合計点で勝敗を決する。平昌五輪はスイスがオーストリアを3―1で破り、初代王者となった。日本勢は出場しなかった。

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