「一軍半」のメンバーで勝ち方が問われた一戦
6月25日に行われたラグビー日本代表(以下ジャパン)対ウルグアイ代表(以下ウルグアイ)のテストマッチ第2戦は43-7でジャパンが勝利し、第1戦に続き2連勝を収めた。
この試合、ウルグアイ代表は第1戦から4人入れ替えたものの、チーム全体の実力としてはさほど変わらない状態だった。対するジャパンはガラリとメンバーを入れ替えた。
稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ 以下埼玉WK)、リーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)といった2015、2019年のW杯でのジャパンの躍進を支えたベテランFWを配した上で、SH齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス 以下東京SG)、SO山沢拓也(埼玉WK)、CTB梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)といった若手を数多く起用した、いわば一軍半的なチーム編成で臨んだのだ。
ウルグアイは2019年のW杯で格上のフィジー代表を破るという「釜石の奇跡」を起こした実績はあるものの、第1戦で「二軍」のジャパンに完敗したことを考え併せても実力差は歴然としており、ジャパンにとっては勝利は当然として、勝ち方が問われる一戦だった。どうやって勝つかではなく、どれだけ圧倒できるのかが焦点の試合だったのである。そういう意味では、スコアはともかく課題の方が目立った試合だった。
安定したスクラムと不安が残るラインアウト
経験豊富な稲垣、坂手淳史(埼玉WK)とキャップ数は少ないものの、安定したスクラムを買われての先発起用だった木津悠輔(トヨタヴェルブリッツ)がフロントを組んだスクラムは強力で、何度か押し勝って相手の球出しを乱すことに成功していた。
後半は微妙な判定でアーリーエンゲージ(レフエリーの掛け声よりも早く組み合ってしまう反則)を2度ほど取られたが、これはレフェリーとしっかりコミュニケーションを取り、タイミングを調整すれば修正は可能だ。事実2度目の反則以降は問題なく組めていた。
一方で依然として不安が残るのがラインアウトだ。
開始早々、敵陣深く攻め入ったジャパンはゴール前でマイボールラインアウトの機会を得る。スロワーを務める坂手は、前2試合のスロワーだった堀越康介(東京SG)よりも国際試合の経験は豊富な選手だが、いきなり第一投をミスした。幸い、ウルグアイにもミスが出て痛手にはならず、その後のムーブメントで改めてラインアウトを得てトライを取り切りはしたものの、逆モメンタムになってしまってもおかしくなかった場面だった。
前半には、やはり敵ゴール前のラインアウトでもう一度スローミスし、相手にボールを渡してしまう場面があった。再三指摘していることだが、世界のトップレベルのチームはこうしたミスを見逃さずに突き、試合全体の流れを我が物としてしまうことに長けている。
またこの日奪った6本のトライのうち3本がラインアウトを起点としたものであったことを鑑みても、ジャパンにとってラインアウトがいかに重要なセットプレーであるかがわかる。個々のスロワーのスローの精度を上げることと、ジャンパーの位置やジャンプのタイミングなど修正が急務だろう。
お家芸のデイフェンスは健在だが、物足りなかった攻撃力
前半、前述のラインアウトからのトライを奪って、さらに8分に山沢が50m近い距離のPGを決めて勢いづくかと思われたのだが、ここから約20分ほどジャパンの応援団はイラつくことになった。ダブルタックルと素早いリサイクルを徹底するデイフェンスシステムが威力を発揮して、力任せに突進するだけのウルグアイにゲインラインを切らすには至らないのだが、ボールの支配権がなかなか奪えないままの時間が続いたのだ。
時折キックも交えてハイボールを競り合いにきたウルグアイに対し、この日FBに入った野口竜司(埼玉WK)が安定したフィールディングを見せ、逆に蹴り返して競り合いに勝ってボールを奪うなどの場面もあったのは収穫だった。また山沢が安定したキック力でPGを二本決めていたことも、変な焦りとその焦りに起因したミスを生まず、つまらない失点にはつながらなかった。
しかしながら、前半終了間際に、こぼれ球を足にかけ、転がったボールを3人のBKがチェイスし、リーグワンの初代得点王CTBディラン・ライリー(埼玉WK)がインゴールを陥れるまでチャンスらしいチャンスが創出できなかったことは大きな反省点として残る。前2戦同様、もっとBK陣の「意図した結果」としての得点シーンを見たかったという感想を持たざるを得なかった。
一つの光明はこの試合が初キャップとなるゲラード・ファンデンヒーファー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が後半14分に奪ったトライだ。このトライは、その直前、相手ゴール前のラインアウトからできたモールを一気に押し込んだトライが伏線となったものだ。
同じような展開でラインアウトを獲得し、そこからできたモールにおいて、押し込まれることを警戒したモールサイドの相手選手がモールに入ったところで素早く展開し、デイフェンスが手薄になったゴール右隅にボールを押さえた。
それまでの試合展開をフルに「ダシ」に使って、その場の状況に対応しようとする相手選手たちの読みを見事に外して挙げた見事なトライ。このトライのような鮮やかな仕掛けを数多く持ち、成功率を高めて行くことこそがジャパンの進撃につながるのだ。
いよいよ7月2日からは、世界第2位のフランスを迎え撃つ戦いが始まる。ウルグアイよりも数段強力で狡猾なフランス相手にどこまでの戦いを見せることができるのか。どんな選手が名を連ねるのかも含め、注目すべき2試合となるだろう。
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