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バレットらラグビー界のスターを日本に集結させた環境、食文化、特例制度

2021 2/26 11:00田村崇仁
ボーデン・バレットⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

世界最優秀選手に2度選出の大物が堂々のTLデビュー

ラグビーの国内最高峰、トップリーグ(TL)は2月20日、新型コロナウイルスの感染拡大で予定より約1カ月遅れてシーズンが幕を開けた。

2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の余韻も冷めやらぬ中、今季はラグビー「王国」ニュージーランド(NZ)から「オールブラックス」経験者ら多士済々の顔触れが参戦。その中でも最大の目玉は、サントリーに入団したオールブラックスの大黒柱で世界最優秀選手2度選出の司令塔、SOボーデン・バレットだろう。

186センチ、92キロの体格で展開を読む力にパス、キックのスキル、俊足と全ての分野に秀でたスーパースター。NZ代表ではフルバック(FB)のプレーが近年多かったが、2月21日のTLデビュー戦では「世界一の司令塔」ならではの冷徹な戦術眼で1トライを含む21得点をマークし、三菱重工相模原に75―7で白星発進に大きく貢献した。

スコットランド代表SHレイドローも加入

スコットランド代表主将としてW杯2大会連続で日本と戦ったSHグレイグ・レイドローは、NTTコミュニケーションズに新加入。日本のファンにもなじみ深い正確なキックの名手でもあり、開幕戦から1トライを含む計12得点で大車輪の活躍を見せた。

2019年W杯で6トライを挙げて南アフリカの優勝に貢献した快足WTBマカゾレ・マピンピはNTTドコモでプレー。NZ代表が試合前に披露する「ハカ」でリーダー役を務めた69キャップのSH、TJ・ペレナラも加わり、キヤノンとの開幕戦から巧妙な技と戦術眼を随所に織り交ぜて劇的勝利に貢献した。

一昨季のTL王者、神戸製鋼にも2019年W杯日本大会に出場したバックスのベン・スミスのほか、SOアーロン・クルーデンの元NZ代表コンビが入り選手層に厚みを加えた。

これまでシーズン日程が重なる欧州の選手は多くなかったが、パナソニックにはW杯準優勝のイングランド代表キャップを持つロックのジョージ・クルーズが入っている。

ラグビートップリーグに加入した主な海外選手

年俸1億円、特例制度で1シーズン限定

新型コロナウイルス禍で国際的な移動もままならない中、世界の一流選手がなぜ日本のTLにここまで集結するのか―。

一つはW杯開催や代表チームの躍進で日本ラグビーの注目度が上がった背景もある。代表88キャップの超大物、29歳のバレットも日本が気に入ったらしい。来日時は大好きなラーメンや寿司、焼き肉に舌鼓を打ったという。

海外メディアによると、年俸は破格の約1億円。フランスに行く選択肢もあった上で「日本の印象が良かった」と入団会見で加入の経緯を明かしている。

さらにバレットの場合、NZ協会やスーパーラグビー(SR)のブルースと4年契約を維持しながら、特例的に海外で過ごせる制度を利用。これはNZ協会がオールブラックスのトップ選手の海外流出を止めるため、リフレッシュも兼ねて違う環境でプレーできる特例を設けている制度で、サントリーには1シーズンだけ所属し、ブルースに復帰する予定だ。

オールブラックスは通常海外でプレーしている選手を代表に選ばないルールがあるが、トップ選手のみに許された待遇として引き続き代表でプレーもできるという。

安全な生活環境、移動時間も人気の理由

海外のトップ選手にとって、日本は家族が快適で安全に暮らせる点も重視する背景にあるようだ。昨年結婚したバレットも「安全な暮らし」を選んだ理由に挙げている。

TLの試合数はそこまで過密でなく、スーパーラグビーと違って移動時間や距離も短い。日本のラグビーはどちらかといえばフィジカルよりもフィットネスやスピードを重視する傾向にあることも踏まえ、外国人選手にとっては肉体的負担が少ないのも人気の要因だ。

最後の栄冠はどこに?

2003年に始まったTLはこれまでも多くの一流外国人選手が来日してきたが、元NZ代表で2015年のW杯で2連覇に貢献し、2月20日に引退を表明した「王国」のレジェンドSOダン・カーターもその一人。正確な左足キックを武器に年間最優秀選手に3度輝いた名手はTLの神戸製鋼でも活躍し、チームをTL優勝と日本選手権制覇に導いた。

カーターの後継者と期待されるバレットは、チームを3季ぶり6度目の優勝に導けるのか。今季のTLは来年始まる新リーグ移行前最後の王座を懸けた争いでもある。最後の栄冠をつかむのは―。ラグビーファンにはたまらない、見どころ満載のシーズンとなりそうだ。

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