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サンウルブズへのトップリーグ選手参戦から考えるプロ化の必要性

2019 12/8 17:00藤井一
Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

サンウルブズ第1次スコッドが発表

ラグビーワールドカップ(以下RWC)が終わり「ラグビーロス」が叫ばれて久しい。国内の大学ラグビーシーズンはこれから佳境を迎えるが、例年なら8月の終わりに開幕するトップリーグが今季は年明けの1月12日からだ。その日程は、2月1日に開幕するスーパーラグビーの日程とほぼ重なる。そんな中、スーパーラグビーに参戦するサンウルブズの第1次スコッド15人が11月26日に発表されたが、当然のごとくトップリーグに所属する日本人選手は一人も含まれていなかった。

1次スコッド発表時、唯一の日本人は早稲田大学の4年生の齋藤直人だった。今後、スコッドは増え、おそらく70人程度でサンウルブズは5年目のシーズンに突入するのだが、すでに除外が決まっていてこれがラストシーズン。大久保直弥HCはサンウルブズのスーパーラグビーでの存続をアピールする意味でも「プレーオフ進出を目指す」と高い目標を掲げている。

12月9日、ジャパンエスアールからサンウルブズの新たなメンバーとして、パナソニックワイルドナイツの布巻峻介(FL)、谷田部洸太郎(LO)、ツポウテビタ(FL)が加入すると発表した。しかし、トップリーグ開催期間中にもかかわらず3選手の参加が可能だったのはパナソニックの選手層があってこそ。ここから更に追加メンバーが発表されるとしても、トップリーグとの両立を考えると、各チームの主力クラスの参戦は難しいのではないか。

RWCのためではあったが…

日本代表はRWCに向けて年間240日もの合宿を積み重ね、自国でRWC開催期間中にトップリーグというわけにもいかないと大幅に開幕を遅らせたのはごく自然な考え方のように思える。だがこれは、見方を変えるとトップリーグが長年日本のスポーツを支えてきた企業アマスポーツ的なリーグ、つまりアマチュアのリーグだからでもある。

日本協会の清宮克幸副会長が「2021年秋にはプロリーグを」と主張しているのは、このような状況からの脱却なのだ。

プロのリーグとは

これはどういうことかというと、例えば、北半球のプロリーグは今年も例年通りに開幕している。無論、RWCということが考慮され、多少の日程の変更はあっても試合数自体は変わらない。

イングランドの「プレミアシップ」、フランスの「トップ14」、アイルランド、スコットランド、ウエールズ、イタリア、南アフリカから複数のチームが参戦する「PRO14」という北半球の代表的な3つのプロリーグはそれぞれ優勝を決めるだけでなく上位チームと下位チームが欧州チャンピオンズカップ、欧州チャレンジカップにもすべて出場。選手たちが全試合に出場することはまず無理なほど、過密日程の中で戦い、プロラグビー選手として活動し続けている。

日本はサンウルブズだけが参戦しているので、勘違いしている人もいるかもしれないがスーパーラグビーもニュージーランド、オーストラリア、南アフリカは複数のチームが参戦、この3国のプロ選手にとっては生活していく上でも大事なリーグで、サンウルブズとアルゼンチン代表に準ずる形で参戦しているジャガーズは、スーパーラグビーの中では特異な存在といってもいいのである。

だから、RWCが開催された今年もスーパーラグビーは例年どおりに行われたのだ。RWCに出場するのは世界中すべてのラグビー選手にとっての目標だが、それ以前に、プロ選手は戦う場所が常になければ生活できない。だからRWCイヤーだからといって“プロのリーグ”は日程の大幅な変更などしないのだ。

プロリーグでないからできたことではあるが…

だがトップリーグはそうではない。日本人選手の大半は社員であるため、極端にいえば試合がなくても生活できる。すべてのチームが日程変更に同意したわけではないとも聞くが、日本代表RWC8強という大目標のため、昨年度は大幅に試合数を減らし、今年度は開幕をRWC終了から2か月以上も経過した来年1月12日と決めたのだ。その結果、見事、悲願を成就したが、前述したような理由から240日もの代表合宿など日本以外、できはしない。

ひるがえって、サンウルブズが何のためにできたのか?といえば、本来、日本代表強化以外の目的はない。だが、毎年、ほぼ決まっているスーパーラグビーの日程と重なる時期にあえてトップリーグを開催し、日本人トップリーガーをメンバーの対象外とするなら、代表強化のためのチームにはなっていない。

大久保HCの意気込み通りすばらしい成績を収めたとしても、なじみの薄い日本代表資格もない外国人中心で戦ったのではほとんど代表強化には役立たないし、過去4季のように負け続けたら、もはや存在意義は全くと言っていいほどない。

トップリーグをこのような本末転倒の日程にしたのは、日本協会が森重隆会長の現体制になる以前の旧メンバーの時代である。だが、旧メンバーのせいばかりでもない。大きな理由の一つはトップリーグがプロリーグでないからでもあるのだ。

世界のトップと真っ向勝負できるようになった今こそ

2019RWCは日本が8強に進出したことも含め、イベントとして間違いなく大成功であった。だが、日本ラグビーのスタンダードを今後さらに高めるためには清宮副会長の言葉を借りるまでもなくプロリーグ創設が必要だ。過去、日本には成功を収めたJリーグ、成功しつつあるBリーグがあるが、サッカーやバスケットボールほどの試合数はラグビーでは体力的に無理である。それを踏まえた上で、どのような形が望ましいのか?今後とも注視していきたい。