スウィープとスカルの違い
ボート競技の種目は、「スウィープ」と「スカル」の2つに大きく分類されます。
スウィープでは、大きいオールを1人1本両手で持ちます。1人が左右どちらかを漕ぐので、ボート上では交互になるように選手が配置されます。一方、スカルでは、小さいオールを1人2本持ちます。そして、2本のオールで左右対称に漕いでいきます。
オリンピックや世界選手権などの競技大会では、ボートに乗る選手(クルー)の人数と「+(-)」または「×」で種目が表示されます。これは前者がスウィープ、後者がスカルという意味です。ちなみに、スウィープではオールを持たずにクルーに指示を出す舵手(COX)が付く種目を「+」、付かない種目を「-」で表します。
ボート競技唯一の個人種目・シングルスカル(1×)
趣味としてのボートをイメージすると、カヌーのような一人乗りを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、競技としてのボートでは、チームで争う団体戦が主となっています。そのようなボート競技の中でも唯一の個人種目が「シングルスカル(1×)」です。
シングルスカルは1人乗りのため、1回オールを漕ぐだけで動きが大きく変化します。また、風など天候の影響を受けることでバランスを失い、転覆しやすいという点も特徴です。
そのため、複数で競技する他の種目よりも、選手個人の能力が反映されやすく、ハイレベルな試合が繰り広げられます。
2人の相性が重要・ダブルスカル(2×)・ペア(2+・2-)
2人で漕ぐ種目には、スカルの「ダブルスカル(2×)」とスウィープの「ペア(2+・2-)」があります。
ダブルスカルは、男女ともにオリンピックで「軽量級」という体重制限のある種目もあります。この場合、男子が2人の平均体重70kg以下、個人の体重が72.5kg以下、女子が平均体重57kg以下、個人の体重が59kg以下という制限が設けられています。
ペアは、舵手付きのペア(2+)と舵手なしのペア(2-)に分かれます。世界選手権ではペア(2+)の種目が設けられていますが、オリンピックではペア(2-)のみとなっています。
どちらもシングルスカルよりはスピードの速い試合になりますが、2人クルーということで、クルーのオールさばきがボートの進行に与える影響は大きい状態です。そのため、他の大人数種目よりも息をピッタリと合わせることが求められます。また、ペア(2-)ではクルー自身が足で舵を操作する必要も生じるなど、ボート競技の中でも高い技術が求められる種目です。
チーム力が重要・クォドルプルスカル(4×)・フォア(4+・4-)
さらに人数が増えて4人乗りとなるのが、「クォドルプルスカル(4×)」と「フォア(4+・4-)」です。
オリンピックでのクォドルプルスカルは、ダブルスカルのように軽量級は設けられていません。クォドルプルスカルでは、4人が同じ方向にオールさばきをします。そのため、クルー側からすると全員が息を合わせる必要があり難しいのですが、観戦側からすると全員の動きが揃ったときの美しさは必見です。また、舵付きの「4×+」という種目もあります。主に高校の大会で見られる種目ですが、日本独自の種目のため国際大会ではあまり見られません。
一方、フォアに関しては、軽量級も設けられています。また、オリンピックでは男子のみですが、大学の競技大会では最も多くのチームが参加するなど人気のある種目となっています。
ボート競技の花形・エイト(8+)
「エイト(8+)」は、8人のクルーに舵手が付く種目。ボート競技の中で最大の人数で最も速いため、ボート競技の花形と呼ばれる種目です。
大人数のためスピードが速いのは当然のように思われますが、2人乗り、4人乗りよりもさらに息を合わせることが難しく、日々のチーム練習が欠かせません。また、他の種目よりもボート上でのクルーの配置も重要になってきます。
船首に近い「バウ」と呼ばれるポジションは、クルー全員を見ながらオールさばきを合わせたり指示を出すなど、舵手と同様のリーダーシップが求められます。反対に、船尾に近い「ストローク」は、全員から見られる位置にあるため、オールさばきのピッチの基準となる存在です。また、バウとストロークに挟まれた「ミドルクルー」は、チーム内で最もパワーのあるクルーが担当します。
まとめ
細かく分類されているボート競技の種目を見てきました。
2020年に日本の東京湾で、新しく整備される予定の競技場で、これらの熱いレースが観られると思うと楽しみですね。
注目されることがあまり多くない競技ですが、この機会に一度ボート競技の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。