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誰もがここから始まった。新日本プロレスの未来支える 「ヤングライオン」とは?

2019 2/9 07:00鈴木 善勝
プロレスラー,Shutterstock.com
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現在はヤングライオン黄金期

どんなベテラン選手でも、初めは何も知らない新人だった。新人たちは厳しいトレーニングを積み、試合の中で成長し、そして立派なレスラーとして輝けるようになる。新日本プロレスでは、まだデビューしたての新人レスラーのことを「ヤングライオン」と呼ぶ。

現在、ヤングライオンはまさに黄金期である。伸び代のある若き獅子たちが勇敢にリングの上で闘いを繰り広げている。ここでは、その「ヤングライオン」たちを紹介し、彼らの魅力を伝えたい。

際立つセンスと素早さが持ち味!甘いマスクのトリックスター 成田連

成田連は、2017年にデビューしたヤングライオンの一人だ。一見、優しそうでプロレスというスポーツとはかけ離れた印象のある爽やかな青年。リングの上でも黒パンツ一丁なのに、どこか爽やかで穏やかな”優男”感がにじみ出ているヤングライオンだ。

しかし、新日本プロレスの厳しい訓練に耐えてきた若者である。決して見た目だけで判断してはいけない。デビューして2年目の彼は、数々の先輩と戦いを繰り広げながら技術を学び、着々と力を身に付けている。彼の持ち味は素早さにある。決して大きいとは言えない身体だが、そこから生み出される素早い攻撃は、今後のジュニア戦線に新たな風を吹き込む可能性がある。

昨年の5月18日に行われた、「BEST OF THE SUPER Jr.25」シリーズの第1試合では、ジュニア選手の最前にいるKUSHIDA、そして海外で数々の名勝負を繰り広げてきたジュニアのベテラン、クリス・セイビンに引けを取らない試合を繰り広げた。 今年、KUSHIDAが新日本プロレスを退団し、ジュニア層が手薄になった新日本に、新たな風を吹き込む新星になり得るだろう。

父は名レフリー!闘志むき出しのニューカマー・海野翔太

新日本プロレスのヤングライオンといえば、闘志溢れる戦い方で先輩レスラーたちにかみついていくイメージがある。海野は、そのイメージにふさわしいヤングライオンと言える。

彼は新日本プロレスの名レフリー、レッドシューズ海野の実の息子で、幼い頃からプロレスに近しい少年だった。 スマートな戦い方は苦手だが、みなぎる闘志で真っ向勝負を挑む様は、まさに「若獅子」そのものだ。 団体からの期待も高く、これからを背負う逸材として今後を期待される。

そのことを象徴するマッチカードが昨年12月14日に後楽園ホールで行われた「Road to TOKYO DOME」第2試合のシングルマッチだ。相手は、人気ユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」の6人目のパレハ(仲間)鷹木慎吾だ。入団してから4か月あまりで、IWGPジュニアヘビー級タッグベルトを取り、飛ぶ鳥を落とす勢いの鷹木。その新日本プロレスでの初シングルの相手が海野だった。

試合は鷹木が一方的に攻めるかと思いきや、実力者相手に一歩も引かずに立ち向かう海野。「これといった技はない。けど『気持ち』が技」と言う海野の言葉通り、気持ちでは決して負けない好勝負を見せつけた。試合は負けてしまったが、最後は鷹木が握手を求め、海野の力を認めた。このような称賛を送られるヤングライオンはなかなかいない。

父がレフリー、息子がレスラー。現在はコーチとして活躍する柴田勝頼も、父は名レフリーとして活躍した。これからの新日本プロレスで、第二の柴田として活躍する姿をファンたちは待ち望んでいる。

海外遠征は出世の始まり!海外で活躍するヤングライオンたち

海外遠征は、ヤングライオンが若手としての殻を破るために必要なものだ。かつての名レスラーたちも、海外遠征から帰国後、ヤングライオンとしてのベールを脱ぎ捨ててきた。近年だとロッポンギ3KのYOHとSHO、1.4東京ドームでオカダカズチカに勝利を収めたジェイ・ホワイトも、海外遠征から帰ってきて花を咲かせたレスラーだ。

現在、海外遠征中のヤングライオンは岡倫之、川人拓来の2名である。

岡倫之はアマチュアレスリングの猛者であり、異種格闘技団体「巌流島」でもファイターとして活躍した実力者だ。アマレスの経験と、類まれなる体格から生み出すパワーファイトが持ち味。 現在はイギリスに活躍の場を移し、リングネームも「グレート-O-カーン」と改名し、怪奇派レスラーとして猛威を振るっている。

川人拓来は2016年に19歳の若さでプロデビューを果たしたヤングライオンであり、現在はメキシコに無期限遠征中だ。彼の持ち味は身軽なフットワーク。難易度の高いスワンダイブ式のテェヘラ(ロープに飛び乗り、足で相手の頭をつかんで投げるメキシコ特有の技)をヤングライオンにもかかわらず、すでに身に付けている。 メキシコでは、そういった飛び技を駆使した戦い方(ルチャ・リブレ)を学び、より一層飛び技に磨きをかけてくるに違いない。

両者が日本に戻ってくるのは、いつになるかはわからない。けれど、帰国後は先輩レスラーたちを脅かす精鋭になっていることは間違いない。

ヤングライオン黄金期 これからの新日本プロレスの未来

また、千葉県を中心に活動するプロレス団体「KAIENTAI DOJO」の吉田綾斗も若手の有望株である。新日本プロレスが主催する若手選手による興行、LION'S GATE(ライオンズ・ゲート)に定期的に参戦している。

昨年はGⅠCLIMAX28最終戦の第1試合に海野翔太、永田裕志とともに出場。最後は真壁刀義のキングコング・ニードロップにより敗れはしたものの、存在感を示した。以前に永田から「日本マット界を背負って立つ人材」とお墨付きを得たレスラーである。今後に期待したい逸材だ。

過去にこれほど人材が豊富で、闘志をみなぎらせる若者が揃ったことは少ないのではないか。まさに、今はヤングライオン黄金期なのだ。どのレスラーも必ず通る道がヤングライオン。彼らがそのベールを脱ぎ、次世代を担うレスラーとして輝く日が来る時、親が子の成長を見るような感動を味わうことができる。

今を輝く選手たちを応援するのはもちろんだが、これからを担う若獅子たちの活躍を今から待ち望み、未来の新たなニュースターに思いをはせるのも、プロレスの楽しみ方のひとつである。