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【スポーツ×メディア】第4回 プロ野球×メディアの改革案②

2018 9/7 15:26藤本倫史
バド・セリグ,Ⓒゲッティイメージズ
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リーダーが見えないプロ野球

前回は、スタジアムビジネスだけでは限界があり、メジャーリーグとの収入格差が広がる一方のメジャーリーグの小会社について述べた。結論は、日本版のリーグビジネスを創出していくことが必要ということだ。

それでは、日本のプロ野球のリーグビジネスを推進する上で、まず何をしなければならないのか。

「リーグの顔=リーダーをはっきりさせるべきである」これは昔から言われてきたことだが、皆さんは現在のプロ野球機構のコミッショナーの顔と名前が一致するだろうか?ほぼいないのではないだろうか。私はコミッショナーの人事を適切に行い、権限を強化するべきだと考えている。

メジャーリーグも1990年代前半に人気低迷やストライキの影響があり、収入が減少していた。そこに一人の男が登場する。ミルウォーキー・ブリュワーズのオーナーだったバド・セリグである。彼は1998年にコミッショナーへ就任すると、大胆に改革を行う。

競技面ではエクスパンションを行い、リーグを3地区制にし、ポストシーズンやインターリーグ、ワールドベースボールクラシックを始め、新たなファンを開拓した。

そして経営面に大きく影響したのが、大都市の人気球団と地方都市の弱小球団の格差を少なくするためのレベニューシェアリングの導入だ。このシステムを上手く稼働させるためには、リーグビジネスを行い、収入を上げることが必要だった。その核となったのが、前回説明した4つの小会社である。放映権料を中心としたリーグビジネスで各球団の経営を安定させ、2015年に退任した。

各球団の経営努力とリーグの経営努力の両輪を稼働させるシステムを創ったのが、まさにコミッショナーのバド・セリグである。(このセリグに関しては賛否両論あるが、リーグを変革し成果を出した人物として評価され、2016年に野球殿堂へ入っている)

日本プロスポーツのリーダーと言えば?

日本で同じくプロスポーツ産業に革命を起こしたのが、川淵三郎である。元サッカー日本代表でもある川淵氏は、Jリーグを誕生させ、地域密着型の理念を掲げ、日本全国にプロスポーツクラブを設立させた。メジャーリーグに比べるとリーグビジネスとしては脆弱なものがあるが、サッカー日本代表は間違いなく放映権料やスポンサー収入をビックビジネスに変えている。また、下部組織のシステムも画期的で、部活動などの日本独特の体育文化に一石を投じた。

そして2016年には、分断されていたプロバスケットボールリーグを統一させ、Bリーグが誕生。新たなプロスポーツリーグ文化を創ろうとしている。

こう見ると、プロ野球を発展させるためには、まずリーダーの力を発揮させるようなシステムが必要というとこが分かる。権限を上げ、責任の所在と透明性を確保することでリーグの安心と安定にもつながる。これができると、リーグで放映権料を交渉し、収入を各球団に分配ができ、更に球団が安定する。川淵は、このシステムをJリーグとBリーグに確立させた。

日本はリーグビジネスをどうするべきなのか?

私は、リーグビジネスを確立させていくためには、パ・リーグが行っているパシフィックリーグマーケティングをリーグビジネスの柱とし、NPB直轄の子会社とすることが一番の近道ではないかと考える。放映権料やリーグスポンサーの管理ができると、収入の増加にもつながる。

また、メジャーリーグでも行っている海外戦略も考えなければならない。韓国や台湾、中国を中心にしたアジア国際リーグを目指し、アジア選手の外国人選手枠撤廃をさせ、海外公式戦の興行を増やすのだ。独立リーグとも連携し、東南アジアを中心とした発展途上国から選手を引っ張り、スター選手を2軍や3軍に所属させ、下部組織もビジネス化させ、アジアの放映権料拡大も狙う。

このような巨額な放映権料をプロ野球は得るチャンスはあるのに、それを見逃しているのが現状だ。実現するためには、12球団がまとまりリーグビジネスを行う必要がある。そうするとアジアのマーケットにも食い込むことができ、球界が発展する確率が高くなる。

スポーツとメディアは、歴史的に切っても切れない関係にある。だが、今のビジネスモデルでは、プロ野球中継というコンテンツが限界に来ているのも現実だ。

そこを真剣にどうするのかを考えないといけない時が来ているのではないか。

《ライタープロフィール》 藤本 倫史(ふじもと・のりふみ) 福山大学 経済学部 経済学科 講師。広島国際学院大学大学院現代社会学研究科博士前期課程修了。大学院修了後、スポーツマネジメント会社を経て、プランナーとして独立。2013年にNPO法人スポーツコミュニティ広島を設立。現在はプロスポーツクラブの経営やスポーツとまちづくりについて研究を行う。著書として『我らがカープは優勝できる!?』(南々社)など。